情緒というものが失われてゆく、
シベリアを生き延びた詩人が語る、歌う。
遥な、祖国を夢見て育んだであろう、詩心
彼が、この祖国を見ても嘆く「詩」は書かないだろう
詩と無関係で、書くことに値しない事柄だから
-石原吉郎-
風がながれるのは
輪郭をのぞむからだ
風がとどまるのは輪郭をささえたからだ
ながれつつ水を名づけ
ながれつつ
みどりを名づけ
風はとだえて
名称をおろす
ある日は風に名づけられて
ひとつの海が
空をわたる
この日 風に
すこやかにふせがれて
ユーカリはその
みどりを遂(と)げよ