最後のトリック [ 深水黎一郎 ]

¥734
楽天


かつて講談社の「メフィスト賞」を受賞した「ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ」を大幅改稿し、タイトルも変えたもの。

「ウルチモ・トルッコ」が発表された当時から、読者が犯人という設定だけは知っていたが、読むのは初めて。

ミステリ作家である主人公は謎の人物からトリックを買わないかという手紙を受け取る。そのトリックとは、未だかつて誰も考案したことが無いという「読者が犯人」というものだった。半信半疑ながらも手紙は届き続け…。

最後は確かに俺が犯人・・・なのかぁ?

「読者が犯人」という、ある意味ネタはばれてしまっているのだが、その方法はやっぱりバラシてはいけないだろうなぁ。
そうか、そう持っていくと確かに読者が犯人になっちゃうよなあ。
でも、そりゃ不可抗力であって責任はないと思うのだが…。

ともあれ、

本書はまさに

このトリックを成立させるためだけの本。

そう考えると、むしろ潔い内容。

超能力のエピソードなどは正直必要性をまったく感じなかったが。
日本人の知らない日本語 (メディアファクトリーのコミックエッセイ)/KADOKAWA/メディアファクトリー
¥950
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年末、実家に帰ってみたらあった。


一時期話題になっていたことは記憶にあるが、まさかウチの親がこんな本読むなんて。

(父はミーハー司馬遼太郎ファン)


もしかして母が?


長女が表紙の絵を可愛いと気に入って、持って帰ることに。

長女は今、お絵描きに夢中。

カワイイ女の子の絵が描きたくて仕方が無いらしい。



日本語学校にやってくる外国人たちの日本語に対する研究熱心さと文化のギャップにとまどうさまをコミカルなマンガ仕立てで紹介する。


ほぼマンガなので1時間もかからずさっと読める。

が、なかなかためになる。


当たり前だと思っていた日本語をいざ外国人から質問されたり、矛盾を指摘されると、思わず言葉に詰まる。「冷める」と「冷える」の違いとか。



ほぉわぁぁい じゃぱに~ずぴぃぽぉぉぉぉ~!! 的な。


改めて日本語の難しさ、奥の深さに気付いた。



学んだことのまとめ。


○「~であります」という軍人言葉は山口の方言

 明治維新において、軍の中心となったのが長州閥であったことから。そういえば大村益次郎とか山県有朋は長州出身だよなあ。


○「おい、こら」という上から目線の言葉は薩摩の方言

 もとは「ちょっと、きみ」程度の言葉だったらしいが、明治期に警察官になった士族が薩摩閥が多かったということで。


○「しかと」・・・花札の10点札の鹿がそっぽを向いていることから。

○「ぼんくら」・・・盆に暗い(賭場に疎い)という賭博用語から。


勉強になった。

続編も読んでみたくなったな。




学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話[文庫特別版] (角川文庫)/KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
¥562
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あまり流行に乗るのは好きではないが、学年ビリでどうやって慶応大学に入学するのか本当に知りたかったので。

読みはじめると出るは出るはおバカエピソード満載。
この主人公の女の子は本当に成績が悪いんだな。
「せいとく たこ」さんのくだりも本当らしいし。

しかし、一方で著者も言っているが、挨拶できるし、素直だし、やる気もある。
しかも自分の考えを自分の言葉で伝えることが出来る。
この子は頭が悪いのではない。
ただ、知識が無い。

高性能のF1エンジンを搭載しいてポテンシャルは抜群だが、燃料がまったく無いという状態。

ということはこういう彼女に知識を吸収しようとする意欲を引き出せなかった学校教育に問題があったのか?
その点、著者のやる気の引き出し方というか、乗せ方は上手。
でも、勉強のことだけでいい塾講師と身だしなみやら学校生活まで注意しなければならない学校の先生を比べるのも酷じゃないかと。

ものすごい急角度で成績は伸びていくが、その伸ばし方には納得できる手法が色々あって、longtailも部下の育成に参考にしたくなった。

いわく

○メンタル…成功すると信じること!

○目標…人に言う!

○計画が大事…基礎問題集を2週~1ヶ月くらいで1冊必ず。
     本書では主人公は中学の復習を1カ月かけてやり切っていた。

○自己効力感…できるんだ!と思えること
     →そのために簡単な問題集をやり切る。→できるんだ!

○「やる気 → やる → できる」のではなく、
 「やってみる → できる → やる気」なのだということ。

だから最初に出来る方法を、出来る問題でやることが大事。


など、
英語の学習法や小論文の書き方などもあったが、そのあたりは将来子どもが受験勉強するときにでも偉そうに教えてやろう。

巻末には、著者による教育メソッドが公開されており、利用できそうなテクニック満載。
本書にはいろいろと批判も(はじめから頭良いんだろ? とか)ありそうだが、最終的には本人の努力が必要であると言い切ったり、メンタルが大事と説いたり、そこまで荒唐無稽な話ではないのではないかと思った。
要は、コーチングの方法ってことだろう。

それでも、忘れてはいけない。

ビリギャルの後ろには、慶應にいけなかった普通の生徒もかなりいたかもしれないということを。成功例だけでなく、失敗例も知りたいところ。



最後に。
この塾の高いこと!
やっぱ金か。

「よのなかねかおかおかねかなのよ」




オー!ファーザー (新潮文庫)/新潮社



¥810

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作風を変える以前の作品らしく、「魔王」や「モダンタイムス」とはまた違う、軽いタッチ。

主人公の高校生は頭も良く、バスケも上手く、喧嘩が強い上に、女からも言い寄られる? などとっても普通の高校生。
その漂々とした主人公の家族が変わっている。

主人公

父(ギャンブル好き)
父(大学教授の博識)
父(マッチョで中学教師)
父(バーのマスターで女たらし)
という、タイプの違う4人の父親。

奇妙な家族と、主人公がなし崩し的に巻き込まれてしまうある事件。主人公のピンチに4人の父親がそれぞれの長所を生かして息子のために奮闘する。
いつもの如く、数々の伏線が最後に収束していく様は見事。
あれも伏線、これも伏線、全部伏線という感じ。
こんな話を一発勝負の新聞連載でこなしてしまう。(ある程度は書き進めて連載開始するんだろうが)いったいどんな頭してるんだろ。


でも、読み終わってみるとだからどうなのさ? と思ってしまったことも確か。

明らかに異様な家族関係なのに、主人公は特に悩むこともなく、父親たちも反目することなく一致団結。家族に大きな秘密があるわけでもなく、それが謎解きに関わってくるでもない。

もうちょっと、本当の父親はとか、家族って何なのさとかテーマがあっても良かったんじゃないのか。書けるだけの才能は有り余っているはずなだけに、特異なシチュエーションを生かしきれていないことが残念。

しかし、作者も軽い気持ちでささっと書いたのかも知れない。
それでこのクオリティだとしたら、やはりすごいことだが。
モダンタイムス (Morning NOVELS)/講談社
¥1,836
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「魔王」の続編。

「魔王」「呼吸」からさらに50年後頃の日本が舞台。

だから、日本の未来を描いたSFとも言える。

だが、ここで描かれる未来はユートピアでもない、ディストピアでもない、どっちつかずで曖昧で地味な現在の延長線上にすぎない。


主人公はしがない恐妻家のエンジニア。

冒頭でも浮気を疑われて(事実だが)妻の雇った男に拷問を受けかけてしまう。

あっさり不倫相手を白状してしまう主人公。


なんだそれ。


危機を脱した主人公は仕事先でトラブルに巻き込まれる。先輩が仕事を放棄して失踪してしまい、その仕事を引き継ぐことになったのだ。

奇妙なWebサイトに関するプログラムで、解析によって、ある言葉がキーワードになっていることが分かり、そのキーワードを検索した者は監視され、ひどい目にあってしまい・・・。


「魔王」「呼吸」で登場した人物も次々に登場するし、現実の事件を連想させる過去に起きた小学校での殺人事件なども絡んできて、国家に関わるような大事になっていくのだが・・・。


冒頭から引き込まれるように読み進めるが、最後は、「そうなっている」から! で、強引に収束。

だから、明確な親玉なんかは登場しない。

全ては責任の所在が分散され、オートマチックに物事が処理されていく。

それこそがモダンタイムということ。

かの、チャップリンの映画のように。


著者の国家観というか、歴史観というか、一個の生物としての国家という考え方も分かりやすいけど、そんな浅はかな物なのか? と疑問に思う。



面白かったのは確かだが、最後はすっきりしない。

「そうなっている」。

だからしょうがないでしょ、とは終わらないで欲しかったなあ。

あと、主人公の妻は結局何者なのさ。

それが一番の謎。


それにしても、国家ぐるみの「検索」の「監視」。

もうされていてもおかしくないよね。中国なんかではしっかり活用されているんだし。

ネット上でプライバシーなんか無い。

そのことを再認識させられた。





魔王 (講談社文庫)/講談社
¥価格不明
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伊坂幸太郎にはまって早1ヶ月以上。

まだまだ古本屋には並んでいるので困ることが無い。


「魔王」と「モダンタイムス」は繋がっているらしいので、まずは「魔王」から。

本作は表題作と「呼吸」の中篇二本立てになっている。


読み始めると、あれ?

何か雰囲気が違う。

読みやすさはかわらないのだが、

今までの作風にあった軽妙さやユーモアが薄れ、逆に語り口が妙に熱っぽい。


「魔王」の主人公は物事を常に深刻に考えてしまう癖がある会社員の安藤。

そんな安藤にはある能力がある。

それは、自分が持ったことを任意の相手にしゃべらせる能力。

不思議に思った安藤はその能力を試しながらも自分のものにしていく。

折りしも政界には声高に保守的な言説を掲げる政治家・犬養が登場してくる。どうやら大衆は彼をの登場を歓迎しているようだ。

「考察魔」と揶揄されるほどの安藤は、犬養とその主張に流されていく大衆に言いようのない焦燥感を抱くが・・・。


「呼吸」は安藤が死んで5年後。

弟の潤也とその奥さんが主人公で、2人は結婚し仙台に移り住んでいる。

2人はテレビも見ないし新聞も取らないので世の中で何が起きているのかもよく分からないが、犬養が総理大臣になっていることを知る。

兄と違って、表向きは政治的なことには関わろうとしていない潤也。

しかし、潤也は兄とは違った能力、「賭けに勝つ」という方法で、この犬養を押す世の中の流れに抵抗しようとするのだった。



「魔王」「呼吸」ともムッソリーニやファシズムについての考察を長々と続けたりと、明らかに今までの作風と違う。

シリアスなのだ。

それはそのまま伊坂幸太郎の現代に対する憂慮なのかもしれない。





あと、「冒険野郎マクガイバー」が出てきてニヤニヤしてしまった。


「考えろ、考えろマクガイバー」


longtailは考えているのだろうか。

ただ、流されているだけではないだろうか。

新年早々、生き方を考えさせられた作品だった。



ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する/東洋経済新報社
¥1,944
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面白そうだったので。完全にタイトル買い。古本で。


経済学者スティーヴン・レヴィットとノンフィクション作家J・ダヴナーの共著。



経済学の本という割には経済についての話はほとんど出てこない。

著者も経済学というのは"方法の集まり"に過ぎないので何を扱ってもよいのだと言い切っている。

難しい統計の計算なども出てこない。

そもそもそういうことを主眼にしていないから。


ではどんな話かというと。

カバーを見ると青いリンゴ。

しかし切られた部分を見ると中身はオレンジ。

これがこの本を見事に表現している。


「経済学は世の中が実際にはどうなっているのかを表す」


つまり、我々が見て感じているいるものやことは、実際にはまったく別のものだったりする。

あるいは見た目と中身はまったく違ったものかもしれないということ。

それを経済学の方法を使って明らかにしようと。

それがこの本。

だから難しいデータ処理などは一切出てこないので安心して読める。



「ニューヨークで犯罪が劇的に減少した理由」が何とも衝撃的。

なるほど、生まれてこなかった子どもたちが犯罪を起こさなかったからなんて信じたくないもんね。そして、ブロークンウィンドウ理論を信じたいもんね!

人は真実だから、正しいから信じるのではなく、信じたいことを信じる。

その典型だな。


他にも

相撲の八百長や教師による試験の不正、など、インセンティブ(誘因)によって動く人間社会の実際を生々しく垣間見させてくれる。目からウロコがポロポロ落ちていく話ばかりで知的興奮が味わえること間違いなし。


当たり前だと思っている世の中の通念がいかにいい加減なものなのかを痛烈に風刺した本作。

すっごく面白かった。


追記

著者は膨大なデータを集めて解析して我々が気付かなかった相関関係などを導き出しているが、このことには怖さも感じた。

ある相関関係を見つけた人物なり、企業なりがその相関関係を悪用して我々を知らない間にコントロールする可能性も無いではない。「こういう行動をする人間はこれを買う可能性が高い」というマーケティングは実際に行われているわけだし。

しかも、実はもうビッグデータを活用して広まっているんじゃないのか?


自由意志で買った「物」が実は巧妙に誘導されていたなんて・・・。怖いな。

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) [Blu-ray]/20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
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話題だったので。


主演はマスター・キートン。若手俳優にエドワード・ノートン。

監督はアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ・・・ややこしいお名前・・・。


演劇界の裏側を描いたものだけに、映画関係者うけするのはわかるとして、そんなに面白いものかねえと眉につばをつけながら鑑賞。


かつてヒーロー物"バードマン"(パート3まで制作という設定)で一斉を風靡した俳優リーガン。その後は鳴かず飛ばずの状態で20年が過ぎ、すでに60代。家庭生活も崩壊し、過去の栄光を忘れようにも忘れられず、時折バードマンの幻聴が聞こえてきたり、超能力が使えたり?、と惨めの一言。


そんなリーガンがアーティストとして一発逆転を狙うのがブロードウェーでの舞台。

脚本はレイモンド・カーヴァーの短編から。

こりゃ上手くいきそう。

上手くいくはずだ。

と思いながらもことは簡単に運ばない。


初めて舞台に立つ女優に、リーガンと関係を持つベテラン女優、舞台中に勃起までする新進気鋭の若手俳優。そんな訳ありの俳優陣に加えて、元ヤク中の娘や、資金不足、そして酷評を予告してくる批評家。

次々と降りかかってくる問題に、まさに四面楚歌のリーガン。

はたして彼は無事に舞台に立てるのか?

ようやくこぎつけたプレビューでは若手俳優にかき回されてさんざんな批評をうけるが、果たして本公演は・・・。


どの登場人物も一筋縄でいかない個性派揃い。

でも、演劇界ってこんなものなのかもしれない。


カメラワークが絶賛されていて、長回し(ワンカット)に見えるように工夫されていて観客が本当にその場にいて、登場人物たちを眺めているような出来。

だからリーガンが部屋から出て舞台に登場するまでずっと視点が変わらない。

不規則なドラム音をバックに階段を上っていくリーガン

不吉で、かつ滑稽なその後姿が妙に印象に残る。


最後の本舞台に突入すると、やっぱり不吉で、ものすごく滑稽だった。

それが"無知がもたらす予期せぬ奇跡"。


シニカルで、深刻そうだけどその全てが舞台上の出来事ではないかと思ってしまうくらいに軽やか。


いいんじゃない。


鼻も復元されて。


吹っ切れたら次は「バードマン4」だ!

007/スカイフォール [Blu-ray]/20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
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テレビで録画していたものを。

007の最新作公開に合わせて前作を、ということだな。


今回はMについてのエピソード。

MとMI6を狙った男の復讐の物語。

ハビエル・バルデムの狂気じみた表情が怖すぎる。

ただでさえ怖い顔してるのに。

ボンドがダニエル・クレイグになってからシリアス&リアル志向が強まっているので今回もボンドは撃たれるなど怪我しまくり。


でもそんなリアル志向になっている雰囲気の中で、笑えるほど浮いちゃっているのが、お約束の女とのシーン。

相変わらずのもてっぷりだが、今回はなんと敵ボスの愛人に「君のボスを紹介してくれないか」だと。

ちょっと仲良くなって、女はすぐメロメロ。大事な情報もぺらぺらしゃべってくれる。

おいおい。


ま、「ハニートラップ」があるんだったら、逆があっても一向に差し支えは無いんだが、ボンドに言いたいね。あんたそれでよくスパイやっていけてるなと。


もしくは脚本の手抜き・・・。


女を利用して敵に近づき、目的を達成しようとする。


まさに


スパイ界の島耕作。


これだけもてたら人生楽しいだろう。

longtailだったら何してもらおうかなあ。



さて、Mは亡くなったし、新しい上司の下でボンドはどう働くのかね。

最新作の敵も手ごわそう。



LUCY/ルーシー [Blu-ray]/NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
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一ヶ月前に見た。

主演はもちろんパッケージにでかでかと登場しているスカーレット・ヨハンソン。

あとはモーガン・フリーマンなど。


人間の脳はその能力を発揮し切れていないという、いまさらながらの「ナイトヘッド」的お話。

その使われていない脳の本当の能力を引き出す薬を中国だか韓国だかのマフィアに大量投与された平凡な女子大生ルーシー。


知能・体力ともに急激に進化した彼女はなんと壁も歩く。触れないで人を吹っ飛ばす。

ドラゴンボールかよ! と突っ込みを入れながらほほえましく鑑賞。

最終的には自分の体さえ自由に変えられるようになり、ついには・・・。

何かと融合したの?


超絶能力を身につけた割にはストーリー展開がこじんまりしすぎていて映画全体を地味にしてしまっている。もっと地球規模ぐらいまで風呂敷広げてよと。


スカーレット・ヨハンソンの美しさだけで引っ張り続けた映画だな。


最後の研究室のシーンでのビデオカメラがサムスンだったことが妙に印象に残る。

それだけ。