ウインチェスターミステリーハウス

          ~狂気と執念がもたらした創造物その1~

 

 世の中には、実に驚くべきと言うか、異様で奇怪な建築物があるものです。まったくそれは、人間の妄想と狂気が形になったとしか思えぬものかもしれません。

 

 アメリカのカリフォルニア州サンホゼには、大富豪ウインチェスター家のサラ夫人が建設したとされる怪奇な屋敷があります。 ウインチェスター家とは、かつて、発明したライフル銃で、たちまち巨万の富を築いて大富豪となった一族です。 しかし、一族を次々と不幸が襲うことになります。最愛なる娘が生後まもなく死亡し、14年後には、夫が原因不明の死を遂げてしまったのです。

 

 こうしたことから、未亡人となったサラは、夫と娘が死んだのは、悪霊の仕業だと信じ込むようになったのです。今度は自分にも悪霊の災いが降りかかって呪い殺されるのではないかと恐れたのです。そこでサラは、ある日、ボストンにいる著名な霊媒師を訪ねることにしました。

 すると、その霊媒師が言うには、娘と夫の死は、ウインチェスター家がつくったライフル銃で殺された何百万人の人間の呪いが原因していると言ったのでした。そして、その呪いを解くには、この先ずっと朝から晩まで、金づちの音が絶えぬように家を増築するしかない。そうすれば、悪霊から身を守り、長生き出来るであろうとサラに忠告したのでした。この言葉を心から信じ込んだ彼女は、それからは、すべてを家の増築に投げ打ったのでした。そうして、その作業は38年もの間、一時も休まず行われました。

 

 その結果、出来上がった屋敷は実に、巨大で奇妙なものになりました。屋敷には、なんと160室もの部屋があったそうです。窓は、1万カ所もあり、ドアは950カ所、暖炉は47カ所、煙突は17本、キッチンは6カ所もありました。一度も使われなかった部屋も多数あったといいますから、どれほど巨大な屋敷であるか想像がつくことでしょう。サラ本人でさえ、地図がないと目的の部屋にたどり着くことは、不可能に近いといいましたから屋敷がどれほど迷路のようになっていたか想像できるというものです。

 例えば、行き着くところは天井というおかしな階段、開けると壁になっているドア、上下がさかさまになっている柱、曲がりくねって全長3キロもある廊下など、どうすれば中に入れるのか分からない部屋など、こうした奇妙なものがたくさんあったと言います。

 

 こうした環境下で、サラは誰も部屋に入れることなく、真夜中になると一人で交霊術をさかんに行ったそうです。 悪霊におびえ切っていたサラは、交霊術で祖先の霊を呼び出し、自らの魂を守ってもらおうと必死だったのでしょうか。そして一方、霊媒師に忠告されるがままに盲目的に増築をくりかえしたと考えられるのです。

 

 しかし、とにもかくにも、38年間の間、金づちの音を絶やさぬようにした結果、サラは1922年に83歳で亡くなるまで、天寿を無事に全うしたのですから結果的にはこれでよかったのかもしれません。

 

 

風狂者の建物 ~不気味で神秘的な話~

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