ご無沙汰しております、万年研究員です。
すっかり更新を忘れて毎日過ごしていたら2023年になっていました。あけましておめでとうございました。
さて、仕事関連でのその後をチラッと書いておこうかなと思います。
移住前に運よくジョブハンティングできた件は古い記事に載せました。
[昇進の話とちょっとアレな上司]
仕事を始めて3週間くらいした頃、月例の1 on 1ミーティングでディレクターが「あなたを昇進させたいのでCクラスにrecommendationを出した。まだ来てから1ヶ月も経っていないから難しいかもしれないけど、遅くても半年か一年以内には必ず昇進させる。」と言い出してびっくりしました。
私としてはスキルを買ってもらえてとても嬉しいけど、他のメンバーが不快な思いをしませんか、と訊くと、ディレクターもそこは懸案事項だったようで様子を見ながら行こうということになりました。
案の定、その話をディレクターから聞いたらしい私の直属の上司であるリードが真っ先に「お前にはまだ早い!」と騒ぎ始めて、あーなるほど一番近距離に懸案事項(人間)がまず一人おるな、と察知しました。この上司は私と同じポジションで採用された後に2年近く経ってから昇進しており、さらにちょっと過剰な競争心の持ち主であることがこの頃には分かっていたので、しばらくは黙々と仕事をこなして当たり障りなく着実に業績を上げておきました。
ディレクターもマネージャーもリードも私の仕事ぶりは買ってくれており、1ヶ月が過ぎる頃には他部署の設計やら試薬調整の監督やらいろいろ任されるようになりました。
リードは休暇に行くからという理由で実験を全部私にやれといって秋のよくわからない長期休暇とサンクスギビングとクリスマスを謳歌していました。すごくどうでも良いプライベート画像とか送られてきて、いやいらんし、と眉を顰めておりました。
業績を上げるにつれて直属上司の足の引っ張り方が尋常でなくなったため、他のメンバーからそれとなく情報を集めたのち、ディレクターに、実は上司のリードがこういう状況で業務に支障が出てきてますけど大丈夫ですか、と諸々の問題点を証拠物件を携えて相談に上がりました。
この時点で仕事を始めてから半年くらいでした。
リードはディレクターには常日頃良い子として接しており私も何食わぬ顔でいたので、ディレクターは若干驚いたようでしたが、リードが過去に数々の問題を起こしていたことを認めた上で、「ちょうど良いし昇進を理由にマネージャーのチームに組み込む。」ということになりました。
次なる懸案事項は、昇進前の年次評価(この頃は半年ごと)でした。
私にとっては初の年次評価であり、また直属上司のリードにとっても初の評価作業でした。
ディレクターは今までのリードの行動から評価に変なスコアをつける可能性があると考えたらしく、初回の作業であることを口実に評価作業のうち文章のところはべったりと張り付いていたそうです。しかし、最後の数字で評価をつけるところはリードのみにアサインされていたため、文章の上では素晴らしい評価なのにスコアが全部平均という何とも珍妙な年次評価が出来上がっていました。
最終的にどういうカラクリがあったのかは知らないのですが、結局私は無事に入社9ヶ月で昇進し、マネージャーのほほんとした平和なチームに異動になりました。
おそらく、ディレクターとマネージャーが相当頑張ったのだとは思います。
リードはこの頃にはもう出退社の挨拶以外はコンタクトしないようにしており、ディレクターの計らいでリードと私の1 on 1は繁忙期ということにして全てキャンセルされていたので、内心どう思っていたかは全く知りません。
気に入らないメンバーの試薬をいじったり変な噂を流したり姦計(三国志?)をはかるような人だったので、既存メンバーの情報を総合した上でみっちり対策を組んでシャットアウトしておきました。
ちなみに、このリード以外にも、私と同じポジションで私より前からいた人たちもそれなりに気分を害したようで、一人は退職しました。
その人が退職するときにめっちゃ嫌味を言われましたが、ここぞとばかりに日本人的ヘラヘラ顔をしておきました(私も今まで英語の発音をからかわれたりしたので良くは思っていなかった)。
元気の良い人が多いチームですが、2022年の夏頃までにいた元気の良い人は高確率で競争心が激しかったです。それと、根拠のない自信とヒマラヤみたいな自己評価の高さもなかなかのものでした。平均的な日本人と足して2で割ったらちょうど良いのになーと思いました。
そんなこんなで、最近は普通のラボ生活に加えてかなりの割合がマネジメントやトレーニングに占められるようになってきました。
それでもほぼきっちり8時16時におさめるように効率を上げています。
[景気後退と弊社のレイオフ]
2022年春先くらいからそろそろ景気後退入るかなという予想が方々で出ていました。
同じエリアのツイッターやらメタやらバイオテックやらメガファーマやら、いろんなところでレイオフの発表があったので、私も煽りを食うかなと思いつつCVをこっそりブラッシュアップしていました。
秋のとある月曜日、早朝にHRのVPから社内の全体メールで「朝イチで全社員参加必須のミーティングがありますので、現地かリモートの人はズームに接続してください」と送られてきました。
これは絶対レイオフだ!と若干ワクワクしながら(何故)大ホールに向かいました。
この事件のしばらく前にホロウィッツの『HARD THINGS』を読んでいたせいかもしれません。
それと、この前の週にCEOがいつもとは違う険しい顔で部屋に出入りしていたのを見かけたのも理由です(普段はちょっぴりギークぽくて腰の低い真面目な青年です)。
ホールのプロジェクターにはげっそりした様子のCEOが映し出され、現在の収支予測や会社の状況を説明してくれたあと、「この一年の急激な拡大でバランスを崩してしまい、これから会社を運営していくために20%の人員削減が必要という計算に至りました。あなた方のスキルでも何でもなく、私自身の落ち度です。」と心底すまなさそうな雰囲気で謝っていました。
zoomプレゼンターがHRのVPに切り替わり、こちらもげっそりした様子で、「今から1時間半の間に該当者にはレイオフのメールが送られ、IDがディアクティベートされます。該当しない人には追ってメールします。」と説明していました。
この場所でこの時一番辛かったのは、CEOとHRのVPだったと思います。気の毒。特にCEOはまだ結構若いですしこれが会社作って十何年してから初のレイオフということで、むしろ顔を上げて仕切り直しなさいなと応援したい気持ちでした。
同僚と階下に下りながら、CV書かないとかもねーハハハ、とか笑いながら、万一に備えてサンプルがちゃんと整理されているか確認に入りました。
結局、私の部署は会社の中枢部門の一つで稼働が落ちると致命的な部署だったため、40余人中クビが飛んだのはたった4人でした。
私も普通に残留しました。
他の噂ずきな同僚が、誰がクビになったのか吹聴して回っていました(やめてほしいこういうの不愉快だから)。
いなくなった4人は、半年前に着任したけど全然マネジメントしてなかった新しいマネージャー・半年前に着任して7割方の実験作業でミスするか試薬ボトルごと床にぶちまけてたアシスタント・1ヶ月前に着任したけどラボに一回も来なかったアソシエイト・2年間仕事する時間よりもオフィスで雑談する時間と休暇の時間が長かった同僚サイエンティスト、でした。
何で今まで放って置いたのかそっちの方が謎でした。
特に同僚の方は遅刻して全社ミーティングにすら出ていなかったため、ID動かないの何で、などと言っていて、この人はもういろいろ自省すべきでないかと思いました。
他の部門の方がレイオフの数は多かったのですが、既存のサービスや製品に必須ではない研究開発部門のスタッフや、福利厚生や人事の余剰だったらしいスタッフ、その他うちの部署と同じようにそもそも問題があったらしい人々がまとめてレイオフされていきました。
逆に、生産に直結する部門やサイエンスの根幹部門、販売に必須なマーケティング部門やカスタマーサービス部門はほぼ温存となりました。
企業運営については私はど素人ですが、ロジックとしては通っているなと思いました。
翌日と金曜日にもう一度全社員向けのミーティングが設けられ、今後の立て直し計画とレイオフされた人々へのサポートについての説明がありました。残留する人たちの心理面もきちんと考慮しているのだなと感心しながら聞いていました。
CEOが「最悪の場合でもM&Aだから、みんなは心配しないでくださいね」というので、いつも以上に健気すぎて余計にみんなの同情を買って人気ポイントは爆上がりしていました。
あれから数ヶ月が経ったのですが、衝撃的なことに人員が減ったにもかかわらず生産量と売上げが一気に上がりました。
みんなお尻に火がついたんでしょうか、レイオフは大変でしたが逆に良い発破になったようです。
レイオフされて行った人たちも、スキル面で問題の無かった人達は大体次の行き先を1ヶ月以内には決めていました。
今も無職のままの人もいるにはいます。
これからまた第二波第三波が来ないとも限りませんから、常日頃CVは見直して良さそうなリクルーターからのメールには愛想よくしておき、レイオフより前に他社にポジションアップで転職して行った優秀な元同僚たちとはいつも情報交換を続けています。
持つべきはスキルだけでなく情報と人脈であることは、多分どこに行っても一緒なんでしょうね。スキル比重はだいぶ日本より高いですけど。
[ごく最近]
経費削減でランチ上限がちょっと安くなったり(元々大盛りすぎ)、年次評価が年に一回になったり(そもそも半年に一回とかの方がおかしかった)、建て直し計画は着々と実行されて、実務もより生産性の高いスタイルに遷移しつつあります。
去年のレイオフ直前・採用凍結直前に着任した人たちがとても真面目で仕事に責任を持ってくれる人たちだったのも、不幸中の幸いでした。
需要はまだこれから相当伸びる分野だと思うので、景気の波をなんとか乗り越えて育ってほしいものです。
がんばれ、弊社。



















