②旋回する夢・・・

 “今でないと行けないよ”ずっと、誰かにそう囁かれている気がしていた。

当時はアルバイトを辞めたばかりで無職、沢木耕太郎さんの「深夜特急」を何度も読み返していて、使える貯金が15万円程。これだけの条件で当時の僕の旅立つ理由には充分だった。

  2002年3月の終わりの頃だった。
 


タイのドンムアン空港に降り立つ直前の興奮が今でも忘れられません。

 着陸の少し前、飛行機の機体がゆっくりと旋回しながら地上に近づいていくあの瞬間、それ

まで靄なのか雲の流れなのか、はっきりと捉えることの出来なかった景色が一瞬にして色づき

鮮やかなエメラルドグリーンに変わったのです。

“あぁ、これが外国なんだ!”と感慨に浸っていると不謹慎ながら

“このまま飛行機が落ちても構わないかな”とさえ考えている自分がいました。