読了。

絲山秋子氏の最新作である。

博多の精神科の病院に入院中の花ちゃんとなごやんが病院を脱走し、鹿児島に逃亡する旅を描いた『逃亡くそたわけ』。

その2人がなんと富山県で暮らしており、再会するのである。

 

まっとうな人生  (著)絲山秋子

 

物語は、2019年4月から始まり、2021年10月に終わっている。

『逃亡くそたわけ』では、21歳と24歳だった主人公たちも結婚をして子どもおり、花ちゃんは主婦として、なごやんも仕事をして一家の大黒柱となっていた。

 

新型コロナウィルス感染の蔓延前から、そして爆発的な感染、そしてちょうど「第5波」が落ち着いた頃に物語が終わっている。(現実では「第6波」が起こり、現在のような状況に・・・いつ終結するのか)

 

様々な出来事があり、それでも病気を抱えつつ花ちゃんはしっかりと足を大地につけて生活を送っているように思えた。

 

花ちゃんを通して語られている事に頷きつつ、私自身もいろいろと考えた。

まあ、いろいろあるが、やるべきことはやって(!)、楽しみを見つけて、過ごしていきたいものである。

 

物語は富山県が舞台。

私は、もしかすると富山県は、学生時代に合掌造り集落の「五箇山」を訪れたのが最初で最後かも。

作中、花ちゃんは家族で、一人でいろいろな所を訪れる。

富山も観光に行きたいなあと思った私である。

 

北陸最大の大伽藍だという「瑞泉寺」を花ちゃん一家は訪れる。

ここの太子堂の入り口に小ぶりの鐘があり、主人公の娘が撞くシーンがある。

とてもすてきな描写なので、引用させていただく。

 

あたしたち三人は分厚くてあたたかい和音に包まれた。(中略)鐘の音はスピーカーが置いてあるみたいに左右に分かれ、振り子のように交互に鳴りだした。それから少しずつボリュームを下げながら頭の上で渦を巻いて、円錐を描くように回り始めた。そして最後は円錐の頂点へと、音はのぼっていった。(中略)耳で聞けなくなっても響きは続いていた。

 

この後も鐘の音の描写は続く。いやあ、聞いてみたい。

どんな気分がするだろう。

 

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私にとっての和菓子の図鑑『一日一菓』に、「「夏越の祓い」の6月30日だけの菓子」として紹介されている「水無月」。

 

6月に入り「デパ地下」でもよく見かけるようになったので、気が早いようだが週末に求めた。

 

 

ういろう生地に小豆がのっていて、この三角形は氷の形。

小豆の赤は邪気払いの意味があり、三角形は昔は庶民は氷が手に入らなかったので「形」で、ということらしい。いつも思うが和菓子は深い。

 

 

 

同じお店で求めた「本わらび餅」。

 

 

暑くなると、こういう「ツルッ」としたものが食べたくなる。