論愚阿来無の欠伸日誌(ろんぐあらいぶのあくびにっし)

論愚阿来無の欠伸日誌(ろんぐあらいぶのあくびにっし)

「小人閑居して不善を為す」日々大欠伸をしながら、暇を持て余している。どんな「不善」ができるのか、どんな「不善」を思いつくのか、少し楽しみでもある。

 アラコキ(アラウンド古稀)世代が、何に夢中になり、どんなことに違和感を覚えるのかを徒然に綴っていきたい。

勝手に論愚選
【読売俳壇2026.04.06】
[高野 ムツオ 選]
春雨のにおいや地層深きから (宇都宮市 津布久 勇)
菜の花や核弾頭は一万余 (小田原市 北見 鳩彦)
亡き猫が会いに来ました蝶となり (東京都 太田 亜希)
百千鳥五百羅漢に千の耳 (神戸市 岸下 庄二)
路線バス春は暢気(のんき)に待つものよ (東京都 山田 真理子)
竜の玉地球の青にまさるべし (宝塚市 広田 祝世)
夫はもう年を取らない朧月 (大和市 小西 さき江)
シーソーのかたんと鳴って初蝶来 (対馬市 神宮 斉之)

[正木 ゆう子 選]
流し目は馬もするなり春祭 (高槻市 黒田 豊子)
初虹を甘露と舐(な)むる天使たち (吹田市 小森 孝敏)
雪残る棚田縫う名は氷玉川(ひだまがわ) (会津若松市 安藤 和繁)
春潮の弓なりに行く砂州の道 (茅ヶ崎市 原田 博之)
残照の明石大橋さはら東風 (泉佐野市 布野 寿)
星を来て星へ消えゆく帰雁かな (仙台市 佐藤 庄陸)

[小澤 實 選]
小名木川を三月十日の赤き毬(まり) (川越市 益子 さとし)
田打機(たうちき)の峡に機嫌の響きかな (大阪市 今井 文雄)
春愁や金平糖の色の数 (志木市 谷村 康志)
レンタルの姸(けん)を競うて卒業す (名古屋市 可知 豊親)
元禄の瓜実顔の女雛かな (春日部市 中沢 泰三)

[津川 絵理子 選]
春雷やガトーショコラの濃き断面 (福岡市 稲水 順士)
春の水消すのは惜しき落書きぞ (東京都 関 美奈子)
春燈や母に最期の紅をさす (川崎市 西 順子)
末黒野(すぐろの)や不機嫌をまだ持ち歩く (川越市 大野 宥之介)
梅日和雲水の買うチョコポッキー (京都市 根来 滋)
勝手に論愚選
【毎日俳壇2026.04.06】
[井上 康明 選]
金蘭(きんらん)のほのかに甘き香なりけり (町田市 枝澤 聖文)
啓蟄(けいちつ)や幽(かす)かな地鳴りそこここに (仙台市 引地 恵一)
天地(あめつち)の声なき声に桜咲く (唐津市 梶山 守)
割石に仏相うかぶ花吹雪 (東京 望月 清彦)
産土神(うぶすながみ)の産額揺らす春の風 (北杜市 小松 俊隆)
はるかなる阿夫利(あぶり)大山麦をふむ (平塚市 日下 久子)
芽柳の風と遊べる美術館 (豊田市 松本 文)
艶(あで)やかな雨に始まる弥生かな (奈良市 伊東 勝)

[片山 由美子 選]
春の灯を一つ点(とも)して一人なる (平塚市 日下 身著)
桜湯や花びらほどけ笑みこぼれ (長崎市 鶴田 鴻己)
デザートのムースとろりと春来(きた)る (和歌山市 藤池 芳子)
一点を見つめ波間の流し雛 (和歌山市 辻󠄀 健)

[小川 軽舟 選]
西御門東御門と梅匂ふ (鎌倉市 小川 求)
(評)鎌倉幕府には東西南北の四つの門があったが、今は地名や石碑に名を残すのみ。梅の花をめぐり、往時を思う。
新聞を広げ土筆(つくし)の袴(はかま)取り (大阪市 福井 天八)
校正のちびた鉛筆啄木忌 (川崎市 久保田 秀司)
薄墨(うすずみ)の空に向かって木(こ)の芽張る (東京 国島 きみこ)
嘴(くちばし)と尾に雪のせて鴉(からす)鳴く (熊本市 夏風 かをる)
鶯の渡るを聞くや切通(きりどおし) (東村山市 小熊 寿房)

[西村 和子 選]
春愁といふも病(やまい)か保健室 (志木市 谷村 康志)
自転車で走る校庭春休 (出雲市 石原 清司)
撫で肩の若狭の仏花の雨 (武蔵野市 三井 一夫)
草餅の最後の一個はんぶんこ (大阪市 木挽 弘志)
母は子に子は風船に手を引かれ (北本市 萩原 行博)
勝手に論愚選
【産経俳壇2026.04.09】
[宮坂 静生 選]
邯鄲(かんたん)の夢を思へば土匂ふ (浜松市 宮田 久常)
(評)邯鄲の夢は蘆生が見た夢の話。耕しの季節「土匂ふ」が生きている。わずかの間に栄華から凋落に至る生涯の夢を見る。IT産業のもうけ話より親しみがある。
山笑ふ住めば都の左遷かな (志木市 谷村 康志)
蒲団干すついでにわが身日に当てる (土浦市 今泉 準一)
進化論聞く耳持たぬ山椒魚 (神戸市 今井 義和)
卒業の連鎖反応すすり泣き (草津市 あびこたろう)
手土産を二人で選ぶ春の暮 (横浜市 杉本 ありさ)
年子とて長男の顔つくづくし (枚方市 安達 京子)
先生が来てかまくらが狭くなる (名古屋市 可知 豊親)
大試験終はり石ころ蹴つ飛ばし (倉敷市 中路 修平)
かたくりの花や木道乾く音 (鶴ヶ島市 廣島 幹雄)

[対馬 康子 選]
純愛を桜のもとに返すまで (桶川市 戸室 和博)
(評)満開の桜の下に「純愛を返す」という切ない思い。景を簡潔させるならば「返しけり」とするところを、その思いの行方はまだ終わっていない。あるいは永遠に。
みずからを汚して海へ春の川 (名取市 里村 直)
冴え返る猫にも遺言あるやうな (千葉市 笹沼 郁夫)
紙雛(かみびな)の折り目正しき客となり (川越市 髙瀨 チエ子)
巡りきた雪解(ゆきげ)の水か薬のむ (岩沼市 村上 茂)
頬(ほお)ずりす今日満開の紅梅に (寝屋川市 三島 得子)
雛の宴娘に酌する父の影 (小金井市 佐藤 聡)
段畑(だんばた)の下から暮れる梅の花 (河内長野市 滝尻 芳博)

【産経テーマ川柳】テーマ 歌
童謡をうたい寝かせた子も四十路(よそじ) (国分寺市 玉井 仁子)
クラス会皆で校歌お開きに (東京・目黒 杉山 正信)
寝たきりへ今は看取りの子守歌 (泉佐野市 河合 陽子)
幹事からそれは部長の持ち歌と (京都市 寺西 和史)
童謡にいやされつづけ八十路(やそじ)坂 (成田市 柳田 滋子)
字幕なきゃ何と歌っているのやら (角田市 目黒 尚美)
勝手に論愚選
【朝日俳壇2026.04.05】
[小林 貴子 選]
そよぐ草食べ放題の牧開き (千葉市 長谷川 ぺぐ)
冷やかして買わされ帰る苗木市 (市川市 西山 智朗)
越中の夜行便なりほたるいか (横浜市 田中 靖三)
出世など眼中になし新社員 (姶良市 井之川 健児)
初蝶や光の襞(ひだ)に見え隠れ (生駒市 髙橋 裕樹)
のどかさやカント散歩の午後の四時 (川崎市 槿山 由紀子)
これ程の数の幸あれ雛あられ (横浜市 生田 康夫)
雁風呂(がんぶろ)や渚の砂をさらふ潮 (倉吉市 尾崎 槙雄)

[長谷川 櫂 選]
春は曙(あけぼの)ミサイルの飛び交ひぬ (福岡市 釋 蜩硯)
わが俳句花を桜と知りてより (長野市 縣 展子)
蕗(ふき)の薹(とう)まだこの星をよろこびて(東京都杉並区 漆川 夕)
春月の愛の波動や熊野灘 (新宮市 中西 洋)
永らへて五体に重き日永かな (長崎市 下道 信雄)
春愁や猫の機嫌の取りがたく (山形市 さとうみちこ)
あたたかや赤子のしやぶる足の指 (川越市 渡邊 隆)

[大串 章 選]
古稀(こき)の稀に希望の希あり黄水仙 (神戸市 倉本 勉)
峡(かい)深き出で湯の宿に聞く初音 (倉吉市 尾﨑 槙雄)
秘湯への道は渋滞山笑ふ (大阪市 貝田 ひでを)
捨つる物多き陋屋(ろうおく)山笑ふ (長崎市 徳永 桂子)
初蝶が馬の尻尾と遊んでる (厚木市 北村 純一)

[高山 れおな 選]
ふらここや漕(こ)げど翼の戻らざる (東村山市 内海 亨)
食べていて妻にえくぼや桜餅 (前橋市 田村 とむ)
立子忌の伸び放題の土筆(つくし)かな (大阪市 今井 文雄)
(評)星野立子の最初期作に〈まゝごとの飯もおさいも土筆かな〉。
競り合って土筆摘む児(こ)の口尖(とが)る (厚木市 北村 純一)
しやぼん玉一つ一つの天国へ (新潟市 磯貝 英一)
勝手に論愚選
【日経俳壇2026.04.04】
[横澤 放川 選]
燕来る巡洋艦の彼方から (北名古屋 月城 龍二)
保母さんの足離さぬ子土筆坊 (千葉 伊藤 久子)
繰り返す未完の寒さ原発忌 (名古屋 山内 三雑)
杉の花飛ぶ日高野生身供(しょうじんぐ) (東京 朝田 黒冬)
いつまでの備蓄放出薄氷 (山口 吉次 薫)
健啖(けんたん)の白寿の母へ金めばる (国分寺 野々村 澄夫)
亡き夫(つま)へ届かぬメール春告鳥 (日野 広山 弘子)
貴方いなくとも生きたよ三月侭 (横浜 畑中 和子)
春潮や対馬手前に曽良の島 (大野城 荒谷 穎明)
アートシアター新宿文化地下穀雨(こくう) (宇都宮 大渕 久幸)
敵対的株の買収猫の恋 (東京 野上 卓)
合掌し頸根つこ引き雛仕舞ふ (大府 小河 旬文)

[神野 紗希 選]
三毛猫が行く三椏(みつまた)の花の下 (枚方 秋岡 実)
隠沼(こもりぬ)は森の子宮よ蝌蚪(かと)生まる (町田 川崎 真喜子)
ふはと掛けぎゆつと押へて春の土 (久留米 川北 敦子)
残雪や空より摩周湖の青く (東京 山崎 晃)
生と死と雪割草と雪解水 (大野城 野分 のわ)
混迷をあっけらかんと黄水仙 (掛川 小柳津 裕)
連弾に遅れて止まる吊し雛 (尼崎 池田 誠喜)
枝垂(しだ)れ梅万蕾(ばんらい)にあるこころざし (佐賀 糸山 泰子)
勝手に論愚選
【産経俳壇2026.04.02】
[宮坂 静生 選]
しやぼん玉踏む張らねばと思ふとき (山梨市 石田 初江)
(評)互いにしゃぼん玉を吹き合う。春の遊びだが、いつか張り合う気持ちが。美しく大きな玉を作りたい。細心の心遣いをストロ-の先に籠めて。本性が出る。
夢二展出て春光の奈良公園 (草津市 あびこたろう)
鳰鳥(かいつぶり)浮き巣と雖(いえ)ど一戸建 (泉南市 須藤 隻眼)
じんわりと夜は明けてゆく沈丁花 (河内長野市 滝尻 芳博)
やはらかく湯船に沈む夜の梅 (横浜市 近江 満里子)
軍艦の呉如月の坂の町 (長野市 武田 芳子)
いつまでも被災地のまま春寒し (北名古屋市 月城 龍二)
春闘に縁なき職場にぎり飯 (志木市 谷村 康志)
水鳥の大きさに飛び立ちにけり (宇陀市 泉尾 武則)
夜学の灯届く限りに梅の花 (立川市 堀江 孝晴)
句点打ち天仰ぐわが不知火忌 (熊本市 貴田 雄介)
梅が香や白雲に住む人を呼ぶ (松阪市 奥 俊)

(対馬 康子 選)
山焼の匂ひの籠る駅舎かな (野田市 塩野谷 慎吾)
墓見えてより小走りに彼岸径 (姫路市 玉作 奈々緖)
感情が音になるなり山笑ふ (伊勢市 菅山 勇二)
侘助や名残り遺さず落ちにけり (富田林市 新川 尹洋)
熱燗が下北沢を熱くする (東京・太田 吉田 かずや)
少年の少女めきたる春の宵 (東京・世田谷 野上 卓)
妹の遺骨と共に春の旅 (那覇市 上江洌 一石)
囀(さえずり)や大河の橋の明け初むる (東村山市 小熊 寿房)
電線の雀ふくれて冴返る (筑西市 大久保 朝一)
明け暮れたそば屋のバイトも卒業す (鎌倉市 中村 かつら)

【産経テーマ川柳】テーマ マラソン
浪費癖、私伴侶のペースメーカー (和歌山・有田川町 古屋 睦記)
人それぞれコースは自由人生マラソン (白井市 小柳 義雄)
生きた道心臓破りの丘ばかり (京都市 原田 博之)
はい笑顔膝が一番笑っている (明石市 小田 和子)
勝手に論愚選
【朝日俳壇2026.03.29】
[高山 れおな 選]
ロケットに春愁のありまだ翔(と)べず (和歌山県上富田町 森 京子)
くつひもをゆるめるやうに水温む (藤井寺市 横内 正人)
シクラメン全部ぬらして春の雨 (松山市 小谷 正和)
ぴったりのジーンズ買って春を待つ (丸亀市 布戸 道江)
季語といふ光に焼かむ青写真 (市川市 をがはまなぶ)
東京に背中を向けて麦を踏む (香川県琴平町 三宅 久美子)

[小林 貴子 選]
下校児のでたらめの歌春の土手 (袋井市 本多 りつ)
啓蟄(けいちつ)や蟻語のわかる山田君 (船橋市 武藤 みちる)
春休み中州は俺たちの島だ (日光市 土屋 恵子)
十五年こころさまよふ流し雛(びな) (横浜市 三宝 一郎)
恋といふ呪文のありて春めぐる (三重県明和町 西出 泥舟)
風が哭(な)く機嫌悪そな春一番 (さいたま市 田中 彼方)

[長谷川 櫂 選]
春分の光と闇が分かつ星 (豊前市 三原 逸郎)
春の夜の夢とは知らず政(まつりごと) (八王子市 額田 浩文)
大空の総てが春の大気かな (太田市 岡島要二郞)
鶴引いてどぜうの寝息安からむ (福岡市 高山 國光)
もう誰もゐない渚(なぎさ)の桜貝 (那須塩原市 後藤 博美)
海鼠(なまこ)舟海の面にへばりつく (西海市 前田 一草)
龍太忌の土にまみれしことばあり (横浜市 三玉 一郎)

[大串 章 選]
足跡を足跡が追ふ潮干潟 (あきる野市 松宮 明香)
啓蟄(けいちつ)や鍬(くわ)新しき余生かな (広島市 谷脇 篤)
少女には戻れぬ空へ鞦韆(しゅうせん)漕(こ)ぐ (松山市 西本 千尋)
動物園は気配に満ちて黄砂降る (長岡京市 水口 大介)
忘れないあの日あの時春の海 (筑紫野市 二宮 正博)
勝手に論愚選
【毎日俳壇2026.03.30】
[西村 和子 選]
春障子閉めて轆轤(ろくろ)の音の消ゆ (川越市 大野 宥之介)
休日のやうな錯覚春の雨 (小田原市 林 梢)
裏山に獣の匂ひ雪解風 (千葉市 畠山 さとし)
あたたかやいつしか消えし蒙古斑 (秦野市 安藤 泰彦)
御座船(ござぶね)の触れてゆきたる柳の芽 (神戸市 田中 忠士)

[井上 康明 選]
百年を経たる校歌や山桜 (町田市 枝澤 聖文)
解体のビルに舞ひたる春の雪 (相模原市 はやし 央)
息入れて紙風船は虹の色 (葛城市 久保 政子)
亡き人とすれ違いひたり沈丁花 (東京 山野 ゆかり)
白杖のさきに膨らむ桜かな (明石市 鳥谷 喜代孝)

[片山 由美子 選]
鶯や声のあたりに目を凝らす (和歌山 馬谷 富喜子)
せせらぎの音のまばゆき猫柳 (町田市 枝澤 聖文)
降るとなく止むとなく降り春の雨 (高知 渡辺 哲也~
筍を兜のごとく並べ売る (明石市 島谷喜代孝)

[小川 軽舟 選]
鐘声は明暦の世より冴え返る (野邊樫 九鬼 勉)
みづうみに水没林の芽吹きかな (東京 嶋田 恵一)
すれ違ふいづれの顔も春めける (岡山市 仲野 恒彦)
春昼や路地に影置く車椅子 (東京 符金 徹)
宣誓の白きコサージュ卒業歌 (奈良市 荻野 隆子)
勝手に論愚選
【読売俳壇2026.03.30】
[高野 ムツオ 選]
ははそはの母に添ひ寝や春の夢 (尾張旭市 小野 薫)
(評)「ははそはの」は「母」にかかる枕詞。短歌の用法で、俳句ではなかなか難しい。「添ひ寝」から「春の夢」へのイメージの展開と「ハ音」のリズムが功を奏した。
のれそれはさながら春の水の色 (町田市 枝沢 聖文)
母の遺影加えし部屋に雛飾る (北上市 佐々木 清志)
春泥の靴垣越し(かきごし)の立ち話 川越市 大野 宥之介)
四方山(よもやま)の話つなぐや木の芽和 (八尾市 黒川 好郎)
菜の花の上を一列紅白帽 (相模原市 荒井 篤)
噴煙のけふ一伸びし山笑ふ (東京都 望月 清彦)

[正木 ゆう子 選]
桜行く電車菜の花来る電車 (佐野市 村野 則高)
舳(へさき)から艫(とも)まで豆を撒きにけり (大東市 堀 志泉)
浮御堂(うきみどう)むづうみ痩せし雨水かな (大津市 竹村 哲男)
氷室神社の奥の暗がり二月果つ (浜松市 木通 佳子)
春寒の廊下に足踏みミシンかな (奈良市 伊東 勝)
親権の決まらぬ孫や梅一輪 (大阪市 橋溝 佳代子)
耕や衣食ゴテもて足る一畝 (越谷市 小林 ゆきお)

[小澤 實 選]
自転車を押しゆく土手や雉の声 (柏市 小畑 昌司)
闊歩する老犬老爺木の芽明く (青森市 天道 光宏)
給食室へ一礼の子ら卒業す (伊勢市 藤田ゆきまち)
煮えたぎる淡つぼやきの繰り言か (日立市 菊池 二三夫)

[津川 絵理子 選]
読み終へし本も記憶も春の炉に (相模原市 はやし 央)
樹齢百年父の盆梅蕾(つぼみ)持つ (長岡市 林 惣蜂)
春うらら妻子連れ去る観覧車 (横浜市 菅沼 葉二)
水温む丸太三本組めば橋 (神奈川県 中島 やさか)
しばらくは迷子でいようミモザ咲く (堺市 椋本 望生)
春塵や妻の買いくるまがい物 (東久留米市 夏目 あたる)
夕景の尾根蠟梅の花に透く (川崎市 沼田 広美)
勝手に論愚選
【日経俳壇2026.03.28】
[横澤 放川 選]
聴聞(ちょうもん)の帰りはいつも土筆(つくし)摘む (愛西 小川 弘)
(評)この聴聞は親子で出向くようなお坊さんの説話だろう。救誓(きゅうせい)の言葉のありがたさ。母者と過ごした安寧(あんねい)の日々の土筆んぼなのだ。
津波見し亀の看経(かんきん)ありぬべし (大船渡 桃心地)
(評)十五年。このやるせなさは亀よ祈れやの気にもなろう。亀鳴くという想像季題の諧謔(かいぎゃく)と怨嗟(えんさ)。
宥坐(ゆうざ)の器(き)になれぬ国連花は散る (横浜 癸生川 昭)
(評)いつも座右にゆるしている誡(いまし)めの具という意味。暴虐の限りの世界情勢を誡めもならぬ国連。
ブギウギを歌つて母が大根干す (高松 島田 章平)
春めきて生きて会いたき人ばかり (つくば 小林 浦波)
大鯉を鶚(みさご)が掴む相模川 (町田市 枝澤 聖文)

[神野 紗希 選]
鶯餅柩(ひつぎ)に入れていいですか (鹿児島 斎藤 建夫)
空母から飛ぶものが皆たんぽぽに(石川 青い)
戦争の後に永遠春の雪 (さいたま 武智 しのぶ)
病む友へ春を描けと4Bを (y古浜 正谷 民夫)
晩白柚(ばんぺいゆ)眉も描かずジャム作る (東京 根岸 三十四)
腕組みの春や戦争評論家 (松戸 鈴木 羅門)
炬燵から寝た子をそっと引っこ抜く (東京 吉田 かずや)
遺(のこ)されし歩行器桜の下に置き (名古屋 中西 恵子)