坂崎、高見沢、桜井3氏によるアルフィー。

俺にとって直系の先輩にあたるバンドだ。


大学の軽音楽部で結成したバンドのギターも、

アルフィーがその大学と部に在籍していたから受験したような、

筋金入りのアルフィーフリークであるのだが、

俺は別にアルフィーなんて全く関係なくて、

その大学しか合格しなかったから入学しただけであり、

軽音楽部に入ったのも英国や米国のロックがやりたかったからに過ぎん。


で、結成したバンドは、

そのアルフィーフリークがリーダーとなったわけだが、

当然の如くメンバーへの「洗脳」が始まったわけだよ。


で、無理矢理連れていかれましたよ、アルフィーのライブに。

行きたくなかったよ!

でも当時付き合っていた彼女もアルフィーファンだったから、

俺も行かんわけにいかんだろうが!

わざわざ静岡まで新幹線に乗せられて、

寒い日本平で、雨の中、一昼夜聴かせられましたよ。

辛かった…。


でも実は物凄く面白かったことがある。

アルフィーファンの生態観察である。


ファンはバンドメンバーと同じような姿になりたがるもんだ。

例えばThe Whoのライブならば、

ダーツの的みたいなTシャツを着て行きたいもんだし、

Queenならば、上半身裸のフレディが大勢客席にいるわけだよ。

アルフィーのライブとて例外ではないのだが、

問題はアルフィーのメンバーは全て男であり、

そのファンの大多数は女子であることである。

つまり、ファンの女子たちは好みのアルフィーメンバーに仮装しているのだ。


まず高見沢に扮する分には全く問題ない。

高見沢自身が女みたいだから、何ら違和感はない。


チリチリパーマでメガネの坂崎も、

まぁ、街では絶対に声はかけたくない女子になってしまうが、

女子が扮するのは許容範囲だろう。


問題は桜井である。

桜井はオールバックで口髭、スーツ姿のおっさんである。

普通ならば絶対に女子は真似しない格好であり、

宝塚の男役以外の女子には社会的に容認されない扮装である。

だが桜井が好きでたまらん女子もいるわけであり、

そんな女子は当然の如くオールバックで髪を撫でつけた挙句、

鼻の下にマジックで髭を書き加え、

スーツを着て客席で声援を送っているのである。


高見沢や坂崎ファンはともかく、

桜井ファンの姿を初めて見た俺は、

来てはいけない所に来てしまった…と思った。

マジックで髭を書いてオールバックにしているスーツ姿の女子を、

現実に目の当たりにした時は、

本当にたじろぎ、立ちすくみ、唖然としてしまった。

初めて六本木のディスコ(当時の言い方)に入った時と、

歌舞伎町の風俗に入った時と同じレベルの、

居心地の悪さを内包するショックを感じたな。


桜井本人は、花も実もある齢の女子が、

マジックで髭を書いていることに対してどう思っているのか?

分別ある大人として注意すべきではないかと思った。

だが、桜井にしてみれば、

確かに顔に髭を書くほど夢中になってくれたら、

それはミュージシャン冥利に尽きるってもんだろうが、

当時は、いくらなんても…と正直思ったぜ。


で、年月は河の流れの如く流れ、

当時のバンドリーダーであるアルフィーフリークの男も、

すっかりオッサンとなって個人経営の社長何ぞしておる。

時々上京し、一緒にバンドをやっているが、

「今度久し振りにアルフィーでも聴きに行かねえか?」などと、

奴に振ってみたりするのである。


で、案の定奴は「もういい歳だがや」みたいな顔をして、

とりあえず格好つけるが、本心では行きたくてウズウズしているのが、

俺には手に取るように分かるのである。

社長となると普段付き合う相手のステータスが違ってきてしまい、

アルフィーのライブに付き合ってくれるのは、

俺の如き昔馴染みのちゃらんぽらんな人間しかおらんのである。


坂崎フリークである奴は、

最近買った軽自動車並みの価格であるギターは、

元YAMAHAの職人と坂崎の共同開発なる職人仕事のギターであり、

今月末に一緒に行く予定の原田真二のライブも司会が坂崎であるなど、

いくら「俺は社長だがや」などと格好つけていても、

奴の周囲には常にアルフィー・坂崎が、

社会の窓から出ちゃっているみたいに、どこかで顔を出しているのだ。

もうひと押しで、奴はアルフィーのチケットを予約するだろう。


なぜ俺がアルフィーのライブに行きたいかって?

桜井フリークの元女子のなれの果てに逢いたいからだよ。

オールバックで髭のあるオバちゃんに逢いたいからだよ。

もし今でも髭のオバちゃんが会場にうろうろしてたら、

恐らくアルフィーというバンドは80歳を過ぎてもライブをやっているだろうよ。