先日、三浦和人&永井龍雲のライブを見てきたが、

フォークシンガーが生き残る道は、

いかに女子にウケる音楽を作るかがカギであると分かったな。


件のライブは、「実行委員」なる組織が主催していたが、

出演者と同世代と思しき婦人、

つまり現役で三浦和人や永井龍雲の音楽に触れ、

素敵…と感動した経験を持つ、「元女子」たちだ。

若い頃、彼らの音楽を聴いて涙を流した女子たちは、

その後大人となり結婚して子育てをしてきたが、

子育てが一段落して、あらためて彼らの音楽を思い起こし、

「実行委員会」を勝手に作ってライブを主催しているのだろう。


オッサンたちは永井龍雲と聞いても、

たけしのオールナイトの後の第2部をやってた奴だなぁ…

で、終わってしまうが、

だが、オバちゃんたちはそれでは収まらず、

自分が最も輝いていたであろう青春時代の思い出と重ね合わせ、

私の街に呼んで歌ってもらいたい…とまで思いつめ、

自ら企画してチケットを売りさばくのである。


いや、女子のファンがそういう「見捨てない」傾向にあることは、

昔から薄々分かっていたことなのである。

ましてや女子が子どもを産み育てた後、

その母性を持て余した時に、

昔あこがれたフォークシンガーに母性愛を発揮することはあり得ることだ。


30年以上前、俺が東京で大学生をしていた頃、

渋谷のハチ公前で女性に掴まり、

「NSPのコンサートが近くであるんです。聞きに来ませんか?」と、

宗教のように勧誘されたことがある。


当時のバブリーな音楽シーンにおいてNSPは、

既に地の底に埋もれてしまっていたわけで、

いきなり耳にした「NSP」という懐かしい名前自体にびっくりし、

つい、「NSPって、解散してないんですか?」と聞いてしまった。

で、その女性は

「ええ、まだ頑張ってますけれど、チケットが余っていて…」と項垂れ、

「もし時間があれば来てくれませんか?」と、

本当に憑かれたような顔で俺を見つめながら懇願していたな。


よくやるよなぁ~と半分訝しく思いつつも、

これほど熱心なファンがついているNSPが羨ましく思ったぞ。

なぜこれほどまで熱心になれるのか?

こんなに寂しい夕暮れ時に呼び出したりしてごめんごめん…

と詫びつつも、

結局は無理矢理女子を河原に呼びだしてこそ、

バブルに踊る東京のハチ公前には全く不相応な、

マッチ売りの少女の如くチケットを売るのを厭わん、

女子のファンのその気持を掴めるのか…

と、つくづく思ったな。


で、後年になるが、改めて渋谷でのことを思いだし、

俺は考え込んだのだよ。


そもそも、普通の男子にとって夕暮れ時とは、

部活が終わった夕飯前の思い切り腹が減ってる時であり、

いくら性欲旺盛とはいえ、あくまで食欲が最優先する時間帯だ。

それは女子だって同じだろうことを踏まえ、

その女子に嫌われるのが嫌だから、

普通男子は夕暮れ時なんぞに女子をよう呼び出さんわけだよ。


だがNSPはごめんごめん…と詫びつつ強引に呼び出したわけで、

こんな自己中な男が本当に女をモノにできるのだろうか…と、

大いに疑念が湧き始めたわけである。

俺の経験上、こうした強引な行為で成功した例はないわけさ。


夕暮れ時は寂しそう、とても独りじゃいられない…と、

好きな女子に懇願して無理矢理河原に呼び出し、

笑っておくれよウフフとね、そんなにふくれちゃ嫌だよ…

などと、刺してくる虫に構わずおどけて見せることが、

果たして女子の気持を捉えるもんだろうか?


で、あらためて聴き直してみたわけだが、

実際にその男子は女子を河原に呼び出してはいなかったのである。

つまり実際には、

夕暮れ時の河原で好きな女子といちゃついている妄想…、

男子の哀れだが無垢な妄想を歌っているのであり、

妄想に駆られるほど女子に夢中になっている男子の姿が、

当時の女子たちの心をキュンとさせたのである。

いやNSP、侮れん。実に深い歌詞である。

NSPは俺もそうだったように、

誤解され正当に評価されなかったとも言えるが、

かといって好きな女子に妄想した経験を持つ俺にとっては、

下半身を露わにしているみたいで何とも居心地が悪く、

積極的にNSPを聴く気になれんかったのは事実なんだよな。


いや、現代の女子にとっても、勝手に妄想する男子なんぞ、

キモッ!超ダセ~!で一巻の終わりであろう。

確かに表面的にはそう捉えられても仕方がないが、

恋愛なるものは決して上っ面の綺麗ごとで済まんのであり、

当時の女子はそこらへんを敏感に察知してNSPを支持したのだと思う。

いすれにしても当時の女子たちも、

熟成が進んでいいオバちゃんになっちまったことだろう。

既に天野滋は死んでしまったが、

日本のどこかでそんな元女子たちが、

NSP絡みの企画をしているのではなかろうか?


もし日本のどこかで「ちょっとNSPに寄ってきなよ」などと、

女子のなれの果てに誘われたら、

今度は誘われてみようと思っているぞ。

NSPファンの元女子には絶対に美魔女はおらんことは間違いないがな。


いずれにしてもだ、

日本においては、すべからく芸事で食っていくことは非常に難しい。

理想と現実はあまりに違うのだ。

今どきの男子どもで、

果たしてフォークシンガーを目指している奴がいるかどうか知らんが、

もしそういう奇特、というか変わり者の男子がいるならば、

女子たちの心をつかむ歌を歌うようにアドバイスしたいぞ。

将来自分が落ちぶれても、その女子たちは見捨てないだろう。

男子なんぞオッサンになっちまったら、

何だかんだで言い訳して逃げるから一切相手にしないでいい。

フォークシンガーを生涯の仕事とするならば、

とにかく女子だけを相手に曲を作るのだ。