英国庭園の謎 (講談社文庫)/有栖川 有栖
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 本日ご紹介するのは、このブログでも何度も取り上げております有栖川有栖さんの国名シリーズより『英国庭園の謎』です
 『英国庭園の謎』は、シリーズ第4作にあたります
 珠玉の6篇の作品が収められた短編集です
 おなじみの臨床犯罪学者・火村を探偵役、作家の有栖川有栖をワトソン役にして、快刀乱麻を断つごとく事件を解決していきます


 さて、今回は特に表題作「英国庭園の謎」について書こうと思います
 資産家・緑川が開いた宝探しゲームの最中に、緑川本人が何者かに殺害されます
 殺害時、緑川邸にいた人間はゲームに参加していて、庭園にいたと証言します
 庭園は広大なので、別々に行動している彼らには、お互いのアリバイを証明することが出来ません
 犯行の目撃証言はなく、犯人を示唆するような物的証拠も見つかりません
 現場に乗り込んだ火村と有栖は、どのように事件を解決するのでしょうか


 火村が目をつけたのは、宝探しゲーム
 広い庭園に宝が隠されているのですが、その場所を指し示す詩が参加者全員に配られていました
 つまり、暗号です
 火村は、“宝”が鍵を握っていると考え、暗号解読に乗り出します


 暗号モノは好みなので、途中までかなりワクワクして読みました
 しかし、犯人の動機が明らかにされたとき、激しい憤りを覚えました
 被害者は、自分の蒔いた種で死んだようなものだったからです
 被害者が非道を働かなければ、死ぬことはなかったし、可哀想な殺人犯を生むこともなかったのです
 被害者の悪巧みのせいで罪を犯してしまった犯人
 それなのに、被害者は裁かれることも償うこともしないのです
 一方、犯人は将来を棒に振り、罪の償いに時間を取られ、服役を終えた後でも社会的な制裁を受け続けることになるのです
 犯人の心が弱かったから、ということは簡単ですが、全てを犯人の責任にするのは酷です
 被害者が鬼畜な行いをしなければ、こんな悲劇を招くことはなかったのですから…


 この作品に興味を持った方に、他にもおススメの作品があります
 暗号を扱った推理小説で有名な江戸川乱歩作『二銭銅貨』です
 ご存知の方も多いと思いますが、南無阿弥陀仏の暗号です
 それから同じく江戸川乱歩で、少年探偵団のシリーズより『大金塊』
 この作品を読んで暗号の虜になったと言ってもいいくらい、子供心に血湧き肉踊る冒険譚です
 コナン・ドイル作『踊る人形』も有名
 これは『シャーロック・ホームズの帰還』に収録されています
 また、和歌に秘められた裏の意味を解明していく歴史ミステリ、高田嵩史さんの『QED 百人一首の呪』 『QED 六歌仙の暗号』も壮大な謎解きが楽しめます
 本選びの参考にしていただけたら幸いです