ロシア紅茶の謎 (講談社文庫)/有栖川 有栖
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 講談社文庫で行われている『完全無敵のベストセレクションミステリーズ』 にラインナップされていた有栖川有栖さんの『ロシア紅茶の謎』のご紹介です

 ご紹介が前後してしまいましたが、『スウェーデン館の謎』 の前の作品に当たります

 「国名」シリーズの第1作目です


 先述の通り「国名」シリーズの1作目である『ロシア紅茶の謎』は、表題作を含め6篇から成る短編小説集です

 しかし短編と侮るなかれ

 どれも凝ったトリックが用いられており、読み応え、解き応え充分の珠玉の作品です

 むしろ短編にしておくのが勿体無いくらいです

 こんなすごいトリックを思いついておきながら惜しげもなく短編で書くなんて、なんて非凡な作者なんでしょう

 作者の有栖川さんはたくさんの作品を物されていることからもわかるように、きっと湯水のようにトリックのアイディアが湧いてくるのでしょうね

 そしてそのどれもが論理的で緻密

 すごいの一言です

 また、トリックの妙のみならず、その魅せ方にも優れています

 トリックをただ羅列しているだけでは推理小説としては成立しませんし、魅せ方に失敗するとどんなに素晴らしいトリックを用いていても駄作になってしまうものです

 『ロシア紅茶の謎』は物語だけをとっても大変面白いと思います

 ミステリなんてただのパズル、と思っている方にこそ読んでいただきたい

 物語に引き込まれて、悩んだり、ひらめいたり、血沸き肉踊ること間違いなしです

 私はしばしば短編の推理小説には尻切れトンボのような物足りなさを覚えることがあるのですが、この作品には充実感を覚えました

 これだけの作品を1冊で6篇も味わえるなんて、なんて贅沢!

 読了後の満足感が大きい作品集です

 ミステリファンには、先達の作品へのオマージュ要素を愉しむこともできますね

 大体この「国名」シリーズ自体、エラリー・クイーンを踏襲したものですものね


 さて、『ロシア紅茶の謎』の次に食指を伸ばすべき作品ですが、江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』は必読でしょう(笑)

 『ロシア紅茶の謎』に同名の作品が出てきますが、作中でも触れられているようにはっきり乱歩の作品が前提です

 読まなくても面白く読めますが、読んだほうがより面白いと思います

 有栖川版『屋根裏の散歩者』には可笑し味が含まれていますが、乱歩のはえぐいです(苦笑)

 でもそのえぐさに病み付きになります(爆)

 それから、これは自分への課題になりますが、やはりエラリー・クイーンの作品にはチャレンジしておかないとなぁと思います

 私、翻訳ものが苦手なんですよ(涙)

 どなたか素敵な翻訳のエラリー・クイーンをご存知の方、教えてくださいませ