ころころろ/畠中 恵
¥1,470
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 今回は文庫本ではありません(笑)

 私が単行本で購入する唯一の本「しゃばけ」シリーズの新刊『ころころろ』のご紹介です


 時は江戸時代

 舞台は、日本橋の大店「長崎屋」

 主人公は長崎屋の一人息子の若だんなこと一太郎です

 一太郎は、実は大妖・おぎんの孫にあたり、妖の血を引くせいで人には見えない妖の姿を見、言葉を交わすことが出来ます

 その上、若だんなの世話をする二人の兄やも力のある妖

 半端じゃなく病弱な一太郎は、家に巣食う妖たちを友として暮らしています


 今回一太郎は、病弱の身に加えて更なる災厄を得ます

 なんと視力を失ってしまったのです

 視力を失った原因は、かつて関わった生目神にまつわる事件に端を発している模様

 兄やである仁吉と佐助を筆頭に長崎屋の妖たちは、大事な若だんなの目の光を取り戻すため奔走します


 一太郎は一見おっとりとした優しい青年です

 しかし芯はしっかりしています

 一年のほとんどを寝たり起きたりしてすごし、薬とは縁が切れないほど、一太郎は病弱です

 一度寝込むと明日をも知れぬほど容態が悪くなってしまいます

 それでも一太郎は我が身を悲観することはありません

 自分の体の弱さに跡取息子として不甲斐無さを感じていても、少しでも皆の役に立とうと自分に出来ることを探しています

 もし自分が一太郎の身の上だったとしたら、世を果敢なんでいるかもしれません

 外出も儘ならず、楽しみといったら妖との碁や読書、加えてつらい療養生活…

 こんな生活では普通自分のことしか考えられないのではないでしょうか

 それにも拘らず一太郎は周囲の皆のことを思いやります

 自分の店に詐欺を仕掛けてくるような人間の意をも汲み取ります

 そんな一太郎の懐の深さが「しゃばけ」シリーズの独特のあたたかみを醸し出しているのでしょう

 そのあたたかみに読者は癒されます

 気持ちがささくれ立ったり、落ち込んだりしたときにおススメのほんわかした作品です