三毛猫ホームズの四捨五入 (角川文庫)/赤川 次郎
¥500
Amazon.co.jp


 6月25日に発売の『三毛猫ホームズの四捨五入』のご紹介です

 この作品の初出は1997年

 ですが、10年以上も前の作品だとは思えないです

 古臭さは全くなく、新刊だといってもわからないくらいです


 毎度お馴染み片山刑事は、以前とある事件で知り合った棚原弥生と再会します

 弥生の父は狙撃事件に巻き込まれて亡くなり、彼女は現在弓削春夫という政治家の世話になっているのです

 弥生と再会してすぐ、弓削は毒物によると思われる変死を遂げます

 しかも、片山の妹・晴美の友人であり、弓削の愛人であった清川昌子の部屋で…

 その後昌子は自殺

 晴美に「気をつけて」というメッセージを残して――

 一方事件を捜査する片山刑事にも圧力や脅迫紛いの出来事が襲い掛かります

 義憤に駆られた片山兄妹と、晴美にベタ惚れの大食漢・石津刑事、そして三毛猫のホームズが事件解明に取り組みます


 さて、表題の『四捨五入』ですが、事件とどう関係あるのだろうと首を捻る方も多いと思います

 この四捨五入というフレーズ、よく年齢に関して使われますね

 例えば、「四捨五入すればもう30歳じゃん」とか、「四捨五入すればまだ20歳だし…」とか(笑)

 この考え方を10代の子ども(特に高校生)に適応するとどうなるか?

 「もう大人」なのか、「まだ子ども」なのか

 大人たちはこの言葉を使い分けて子どもたちに接します

 子どもたちは、都合のいいように自分たちを言いくるめようとする大人たちに、「じゃあ、私たち、子どもなの?大人なの?」と反抗したくなる

 まぁ、そういったお話なのです

 『四捨五入』という題名は、事件を追う片山刑事サイドの裏で語られるもう一つのストーリーの題名だといえると思います

 相手を大人・子どもの別ではなく、一人の人間として扱う片山兄妹たちの姿勢に、自らを省みる機会を貰いました