ネコソギラジカル〈下〉青色サヴァンと戯言遣い (講談社文庫)/西尾 維新
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 遂に最終巻『ネコソギラジカル(下)』を読み終わりました

 帯に「僕たちは幸せになった」というフレーズが踊っていたので、ハッピーエンドだろうとは思っていました

 うん、満足、満足(笑)

 なかなか丸く収まったと思います

 しかし、当初ミステリということで読み始めたシリーズだったのに、今となってはミステリはどこへ?という感じです(苦笑)

 しかも、仄めかされていた幾つかの謎や過去の出来事は最後まで詳らかにはされず…

 いーちゃんの本名さえも伏字で…

 いーちゃんの言いたいことだけが語られて終わった感じです

 結局、何がどうして今こうなわけだ?と頭を捻らずにはいられません

 行間は想像力で補うしかないんでしょうねぇ

 ある意味、徹頭徹尾いーちゃんの独白形式で話を進めたことには賞賛、ですけどね

 いーちゃんの完全なる独り言である限り、読者への説明義務はないということですから(苦笑)

 いーちゃんが読者を想定していなければ、説明なんてする必要ないわけです

 全ての事柄はいーちゃんの中で咀嚼され、消化され、いーちゃんなりの解釈で言葉として口から出てくるのですから、エピソードが主観的であり、事実と思われる客観的材料が断片的でも仕方ない、と思うことにしました(笑)

 さて、肝心の本編ですが、もう既にミステリという体裁を取っていない以上、何を言ってもネタばれという気がします

 肝は、話に伝わる西東天vs哀川潤の壮大なる親子喧嘩の再演というところでしょうか

 もっとも潤さんの相手は今回は西東天ではありません

 あの潤さんの向こうを張れる相手、とすると選択肢は自ずと限られてくるでしょう

 しかしこれは世界の終わりを賭けた戦いです

 そこに至るまでに、玖渚友のこと、想影真心の失踪、十三階段メンバーの各々の勝手な行動等々を経て、戦いというクライマックスに向かっていきます

 物語は、はっきり言って破天候です

 出てくる登場人物が全員普通ではない上に異能なので、たくさんの番狂わせがあります

 しかしその事象の一つ一つを戯言で編んで繋げたところに文章の面白さがあります

 シリーズ通して読破し断言することは、この作品は本当に新感覚の物語

 そして、物語を愉しむというよりは、文章を愉しむ作品です