ネコソギラジカル〈中〉赤き征裁vs.橙なる種 (講談社文庫)/西尾 維新
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  終わりの始まりの続き(笑)

 前作『ネコソギラジカル(上)』の記事では、主人公・いーちゃんが敵・狐さんに対する武力行使にこだわっているように思える、と書きましたが、本作品は一転して無血解決に向けた裏工作が展開されます

 前回は宣戦布告から開戦予定日まで間がなく戦いを回避できなかったいーちゃんですが、今回は戦いにならないように策を弄します

 考える時間のできたいーちゃんは、狐さん対策として攻撃と防御の作戦を練るのです


 まず、攻撃の作戦は2つ

 1つは、狐さんの手足である組織〈十三階段〉の解体です

 具体的には、離間策です

 〈十三階段〉のメンバーに個別に接触して説得し、狐さんから離反させる

 戦力の切り崩しにかかったのです

 これぞ戯言遣いの真骨頂ですね

 やっと‘らしさ’が出てきたような気がします

 それでも狐さんの理論を否定はせず、世界は物語であるとか、ジェイルオルタナティブ、バックノズルを前提として作戦を練っているようですが…

 いーちゃんにとって、そこを前提とするということは、アウェイで戦うようなものだという気がしますが、ある意味真っ向勝負です

 確かに、〈十三階段〉なしには物語と関わりを持てないと信じる狐さんにとって、手足をもがれることは行動を制限されることになります

 ただ、私としては、その作戦は〈十三階段〉という存在が唯一無二であった場合にのみ有効なことではないかと思います

 狐さんはジェイルオルタナティブの信奉者です

 つまり〈十三階段〉のメンバーにも代替品が存在する可能性がある

 実際に、匂宮兄妹が離脱した後、澪標姉妹が加入していますし、今までにも入れ替わりがあったとの記述があります

 だからたとえ〈十三階段〉を切り崩したにしても、補充可能なのです

 精々が計画の進行を遅らせることにしかならない

 進行を抑制している間に何らかの根本的解決が必要な気がします

 それに対して狐さんの決断や切り替えの速さは芸術的です

 内容は作品を読んで頂くことにして…


 もう1つの攻撃は、いーちゃん自信のオルタナティブ(代用品)、零崎人識を探し出すこと

 零崎は、狐さんから“敵”候補に挙げられていた存在です

 今の敵と敵候補

 それが目の前に現れたとき狐さんはどうするのか

 予測がつかないだけに切り札というか、ジョーカーのようですが…

 狐さんの理論を前提に考えれば、自分のオルタナティブを自分の手の内に置くことは有効かと思います


 次に、防御策です

 いーちゃんが一番嫌うのは、周りの人間をいざこざに巻き込むことです

 それを防ぐため、ようやく玖渚友の力を借りる決心をするのです

 玖渚友の実家は、強大な力を持った玖渚機関

 いーちゃんの関係者の護衛を任せるにはこれ以上ない存在です

 そして、玖渚友こそがいーちゃんのアキレス腱

 彼女を安全圏に置いておく必要がありました

 さんざぐずぐずしていたいーちゃんですが、遂に決断です


 さてこれで戦時体制が整いました

 いーちゃんの反撃開始!

 …と思いきや

 まさかの展開です

 ここからはネタばれになるので、作品を読んで頂くことにして(笑)

 最終章に向けて気分が高まること請け合いです