若者がモノを買わなくなった――。最近、時折耳にするフレーズである。ファッションも食も極力節約し、自動車も買わず、旅行にも行かず、せっせと貯金に励む……そんな若い世代が、消費市場の新しい主役となりつつある。
そんな現象を裏付けるような書籍が、2009年11月に発表されている。「クルマ買うなんて バカじゃないの?」――帯文のそんな刺激的な惹句が話題となった『「嫌消費」世代の研究』(東洋経済新報社)がそれだ。発売以来、順調に版を重ねている。
著者は、ジェイ・エム・アール生活総合研究所の代表である松田久一氏。長年、情報家電産業や食品などの業界で、リサーチやマーケティング、経営戦略などに携わってきた人物だ。
本書によれば、「嫌消費」現象とは、「収入があっても、何らかの嗜好によって消費しない傾向」のこと。80年前後生まれ、現在20代後半の「バブル後世代」が「嫌消費」世代に該当するとされる。興味深いのは、彼らの中には低収入層の非正規雇用者だけではなく、しっかりした収入もあり、正規雇用者が多く含まれることが特色であるという。
その普通の若者たちの「嫌消費」ぶりは、我々の想像をはるかに上回る。たとえば、インポートブランドよりも服はインターネット通販で買う、クーポンがないとカラオケやレストランには行かない、外食よりは1人でも家で鍋がいい、身体に悪いアルコールはいらない、といった具合だ。
彼らはいかにして、このような消費性向を育んできたのか? それは彼らが成育した時代背景に密接な関係があるという、松田氏の指摘が興味深い。
精神の自立の時期として重要な10代で、「阪神・淡路大震災」「地下鉄サリン事件」「いじめ自殺」「金融ビッグバン」などを経験。とりわけ「いじめ問題」は彼らに深刻な影を落とし、「目立たず、空気を読んで、できるだけ深く関わらず」暮らしていくことを余儀なくされた。彼らは、何より仲間からバカにされることを恐れ、周囲から「スマート」と思われたい願望が強いという。
そんな意識が「上昇志向」や「競争志向」「劣等感」を醸成し、「他人の顔色を見て行動する」「無理をしても他人からよく思われたい」という意識に繋がる。こういった時代体験から、共通の世代心理が生まれ、未来や将来への漠然とした不安が広がり、消費マインドが抑制されるというのだ。