盆前の洪水後・・ふとこぼれた述懐 | のすたる爺の電脳お遊戯。

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北国の港町に生息する莫迦親父な生き物が
日々の手遊びを時に駄文で綴り
また戯れ絵で遊ぶ、泡沫の如き代物。

寂れ切った故郷の元繁華街

取り壊した自宅店舗の跡地、更地は

想像以上に狭く周辺も殆ど街が死んでいた。

 

のすじいは此処で祖父母に撫育され

周囲の商売屋の親父やおかみさんに遊ばれ

兄ちゃん姉ちゃんに色々教えられて

本来孤独であった筈の幼少年期をにぎやかに過ごせた。

 

両親、いや母親の殆ど育児放棄のような状況下

其れでも何とか此処まで道外さず生きて来られたのは

此の捻くれてはいるが好奇心だけは旺盛な性格を

祖父母が育んでくれたからに他ならない・・

 

あ、父親は婿養子の癖に外におんな作って

単身赴任と称し別居、自宅戻るときは常に泥酔の酒乱で

のすじいの記憶の中の両親の姿の殆どは

包丁持ち出して殺し合いさながらの喧嘩を繰り返し

其の鬱憤をすべて餓鬼になすりつけて苛める

陰湿で理不尽で薄汚い生き物以外の何物でも無かった。

 

祖父母の下から連れ戻されあの二人の見栄と体面のために

同居と称し転校させられ其れまで会ったことも無い餓鬼・・

狂母が溺愛の限りを尽くし最低の屑の犯罪者に育て上げた

暴君其の物の腐った男親に酷似した実弟の付録のように

顧みられることなく放置され高校を卒業するまで生きた。

 

今、振り返って想う・・結局は其の狂母と屑実弟

そして49歳で不摂生と乱倫の限りを尽くして死んだ糞実父。

其の3人の後始末をするだけの為に生きてきたかも、と。

 

唯一の救いは祖父母の撫育のお陰で書籍好きになれたのと

銀行員だった糞実父に返済計画の借用書を血判で出すことで

ようよう進学できた東京の二流私立大での青年の日々・・

其処で出会った人びと、初めての自立と拘束の無い時間。

 

糞実父は入学金と学費だけは出したが生活費は出さず

ほぼ毎月今月で幾ら利子が付いたから卒業後は毎月

月収の半分を自分に返済しろと、凄まじく慇懃な達筆で

陰湿を文字にしたような内容の督促と嫌がらせを

封書で、時に内容証明で送りつけてきた・・4年間ずっと。

 

其の間、狂母は祖母の作った呉服店に後継ぎと称して居座り

凡そ商売とは言えぬお嬢様ごっこを続けていたのだが。

 

のすじいが一人の少女の面影だけを永遠に恋うる理由

たぶん其れの真実を知ってるのは此の空間だけになった。

 

 

祖父母も、愛した娘も、糞実父も、屑実弟も・・

既にこの世には居らぬから・・あの狂母以外には誰も。

 

夏草の中に杖で立つと、一瞬にぎやかだったあの頃

昭和40年代の此の商店街のざわめきが聴こえる気がして

・・のすじいはたぶん少年の顔に成ってたと思う。

 

午前10時の寂れ果てた田舎商店街の更地の一角で。