それだけは伝えてきた。
昨夜、医者は、
「今日、もって明日だから、親族には連絡して欲しい。年齢が年齢だから延命はしない。」
と母は言った。
母は、自分の母親が死ぬとき、じいさんとばあさんに許してもらえず、死に目に逢わせて貰えず、発狂した。
その母と弟が、徹夜でじいさんを見送る。
実子の長女は、長年勤めた会社の勤労祝いをすると、それを聞いても、ひ孫まで集めて温泉に行った。
じいさんが倒れて、土地もお金も取られ、ばあさんはボケた。
「じいさんが危ない」と聞いているのに悲しむそぶりがなく、普通にきてすぐ帰っていった。
この家にいると、頭がいたい。
じいさんは、戦争にいき、戦後ひとりで、せんべい屋を始め、それから不動産、そして店をひとりで建てた。
人にも自分にも、厳しいじいさんだった。
母は、
「みんなが来てくれて良かったね。治る事を祈っているんだよ。」
と嘘を言った。
自分が恨んでいる人でも、、
実子は本当は温泉でも、、
見送る為の嘘を言う母を見ていられなかった。
俺は仕事柄、色んな人に出会う。
色んな世代の考えを知る。
でも、うちの家系以上に、笑顔でいるのに歪んだ家系を、俺は今までみたことがない。
でも、それでも、今は少しだけ 感謝してる。
この世界に生まれたのは、じいさんが居たからで、俺が病気でも、巡り逢えた人達が居て、愛せたから。
歌うこと、ダンス。
楽しむ事の全てを知れたから。
それでも、俺は普通じゃない。
どうか、子供達は、あの女性のもと、そんな気持ちを知らずに幸せになって欲しいと心から願う。
