忘れな草。
男はつらいよシリーズに登場したマドンナの中で、寅さんと最も相性がよいと言われたリリーが初登場。「ドサ廻りの歌手」という、フーテンの境遇にあった彼女の気持ちが、同じ旅稼業の寅さんにはよく理解できたのでしょう。流れ流れの渡り鳥同士、初めて会った女性にもかかわらず、寅さんは実に穏やかな口調で言葉を交わすことができました。
周囲の目を気にすることなく腕を組み、男同士の友だちのような言葉で接するリリーは、数ある寅さんの恋愛の中でも特別な存在でした。そんなリリーがキャバレーで客にからまれ、深酒をあおって寅さんに旅に出ようと絡むのですが、それをたしなめられ、夜も遅い時間にリリーはとらやを飛び出してしまいます。そんなすれ違いがあっても、彼女の寅さんへの想いが冷めることはありませんでした。これから20年以上続いていくリリーとの恋物語を見届けるためには、必ずおさえておきたい1本です。
とらやを飛び出したリリーを心配して、寅さんが人に道を聞きながら彼女の家を探して歩くシーンでは、錦糸町の街並みが映ります。ほんの2週間前、あのすぐ先にある「つばめグリル」で、ホイル包みのハンバーグを食べたことを思い出したのでした。

にほんブログ村