日本では、ログハウスのホテルである上高地帝国ホテルが1933(昭和8年)に建てられていたが、それよりも早い1930年にカナダで今でも世界で最も大きなホテルが建てられていた。ル・シャトー・モンテベロである。もともとはプライベートクラブであったが、カナダ太平洋鉄道の子会社のカナディアン・パシフィックホテルズ(CPH)が1970年に購入。さらにCPHがアメリカのフェアモントホテルグループを買収し、現在の正式名は、フェアモント・ル・シャトー・モンテベロとなっている。
このホテルは、カナダ東側のケベック州にある。オタワとモントリオールという大都市の間に位置しているリゾートである。敷地がオタワ川に接しているため、ヨットハーバーも完備されており、モントリオールなどから船でやってくる人もいるという。敷地は約6万5,000エーカー(約8,000万坪)というとてつもない広さで、敷地内には70以上の湖がある。
夏は18ホールのゴルフ場、60㎞のハイキングコース、乗馬、釣り、サイクリング、カヤック、テニスなど40以上のアクティビティが用意されており、冬もアイスホッケー、アイススケート、カーリングなどが楽しめ、1年を通して長期滞在しても飽きることはない。
世界最大級の六角形暖炉
ホテルの中心には六角形のロビーがあり、その中央には高さ20mの六角形の巨大な暖炉が鎮座している。これも世界最大級の大きさである。暖炉の焚口も6カ所あり、冬は旅人たちの身体を暖めてくれる。ロビーから4方向に宿泊棟がのびており、部屋数はスイートを含めて211室。1階はRC造で石張り。2階から4階までは太いログが組まれている。建物の総面積は約1万1,000坪にも及んでいる。
4つの宿泊棟が四方にのびる。そのほか、いくつかのレストラン、宴会場、17の会議室、23mの屋内プール、フィットネスセンター、ダンスホール、映画館などを揃えている。
これだけの大規模な建物をわずか4カ月で建てたことに驚かされる。建築に携わったのは、800人のログビルダー(ログハウスを建てる技術者)をはじめとする最大時3,500人もの職人。これらの職人が交替制で24時間休みなく働き、短期間で完成させることができたのだ。ログビルダーはフィンランドなどからやってきたヨーロッパ人が多かったようだ。使用したログは約1万本で、近くに適材がなかったためわざわざ西海岸のブリティシュ・コロンビア州から運んだという。
このホテルが世界的に有名になったのが、1981年に開催されたオタワ・サミットの会場に選ばれたこと。カナダ首相のピエール・トルドーが議長になり、アメリカからはレーガン、イギリスからはサッチャー、フランスからはミッテラン、日本からは鈴木善幸が参加している。各首脳がホテルのロビーに集まり、笑顔で並んでいる姿が記念写真になっている。
1981年にこのホテルで行われたオタワ・サミット
約90年前に建てられたこのログハウスのホテルは、今でも人気が高い。長い歴史を経てもログは少しも朽ちることなく、美しく保たれている。




