横浜の沿岸、貿易倉庫で育った自分に
台風が来るたびに思い浮かべる事柄がある。
横浜港に影響するコースと予想される日には
本船が危険を避けるために港外に出るので
荷役予定がくずれる。河岸には艀が係留され
その家族(艀が生活の場)が風波の防衛生活に入る。
倉庫人は浸水や防潮の作業に入る。
それぞれの荷役運送業者が全員荷主の大事な
財産を守るために必死に活動するのである。
倉庫の自分たちは夜寝ることが出来ない。
ゴウゴウ、ビュウビュウの音の中でじっと耐えるのである。
全員が仕事の使命を心得ているので暗い気持ち
にはならない、先輩からいろいろな仕事の話や
世間話を聞く良いチャンスでもあった。
台風一過の翌日は達成感やら、寝不足やらで
あるが気持は晴れ晴れであった、今は昔の思い出。
荷主を大事にする気持は今より強かったような気がする。
人力が通用した時代の人の心は強くて暖かった。
文明の力は人心を少しづつクールしてはいないだろうか。