・空の彼方
・過去へ未来へ
・花咲く丘
・ワインディング・ロード
・時を超えて
・湖上の花火
・街の灯り
・旅路の果て
8編の物語。
素晴らしい作品でした。
一つの物語が一人一人の物語とリンクしてゆく。
自分だけが持つ悩みが、人の心と紡ぎ出された物語に触れ、一つ一つ光のある方に向かってゆく様には心が震えます。
誰にでもある悩み。
けれど、自分の悩みは他人の悩みではない。
だから、それをどの様に自身で納得し昇華させるか又は解決させるかが問題で。
でも、殆どの人間は模索して小さな別の解決策を見つけて、それが納得がいかなくても自分を騙して生きてしまう。
違うかも…これでいいのかな…という気持ちを無理に心に押し込め隠して。
それが、紙の束の中に存在する一編の物語で自分を見つめて歩んでゆき、それが次々に連鎖してゆく。
とても素晴らしい話だと思いましたし、ラストもとても良かったです。
イヤミスの女王と言われている作者先生なので、選ぶ言葉が時に脳に突き刺さり、心の中の小さなかさぶたを剥がし、そこから私の闇を抉ってくるので油断なりませんが…。
読んでいてムカついたり、殴ってやりたくなったり、感情を逆撫でされたり。
登場人物と似た様な状態が私に起こったなら、自分も同じく自身の保身に走るのではないか…と自問したり。
逆に、似たような状況になった事はないのに痛いくらいに気持ちが解り、一緒に泣いてしまったり。
文章で人間の揺れ動く心理を表現するのは、とても難しい事です。
でも、この作品は一人の作者が書いているとは思えないほど年齢も性別もバラバラの人間心理を品のある文章でとても丁寧に描いている。
この心理を描く上で、どれだけの人間と関わって生きてきたか、どれだけの人間を観察してきたのか。
それを考えると眩暈がしそうになる。
そのくらい沢山の人間の視点から描かれている。
本当に凄い事だと思う。
余談ではあるが、ツイッターをフォローしていた有名な方がいたのですが。
フォローを外しました。
「夢を叶えられないのは、自分が努力しないから」
「努力し続けた人だけが夢を叶えられる」
「若い内から夢に向かって行かないと叶えられない」
そのような事をおっしゃっていました。
夢を追いかけている人を応援したい!と、とても熱くて素晴らしい人なのですが。
私は、その意見に納得が出来ませんでした。
生きていれば色々あるんだよな…って。
私は捻くれた見方をしてしまったのでしょうか…?
色々と考えてモヤモヤしてしまいました。
進学や就職があったり、親の介護があったり、結婚したり、子供が生まれたり、家業を継がなければならなかったり、病気になったり、仕事で大きなプロジェクトを任されたり、上の役職に就いたり…人は様々に生きてる。
生きる事・生活する事と追いかけたい夢は天秤にかけてはいけないと思うのです。
自分が出来たから他人も出来るとは限らない。
夢を叶える為に努力するのは当たり前です。
そうやって夢を掴んだ人は沢山います。
でも、それを押し付けてはいけないと思うのです。
もし、あの方がこの「物語のおわり」を読んだら。
どの様に感じるのだろうか…そればかり考えてしまいました。
人間を知り、他人と関わりながら生きてゆく上で、その価値観はとても大切だと思うのです。
人の心をおもんばかり、知ろうとする大切さ。
それを改めて感じさせてくれた一冊でした。
