『ハゴロモ』よしもとばなな
- よしもと ばなな
- ハゴロモ
今日学校で友人に借りた文庫本で読みました。教室の喧騒のなか、一人本の世界に深く閉じこもっていました。湿度が高くて、ページをめくるたび、紙がやけにやわらかく感じたそんな一日でした。
この作品でまず印象深いのは情景の描写についてです。その場所と空気のイメージを、的確に、かつ意外な角度から作り上げられる感じがしました。普段の生活では見過ごしがちな、世界の変化を綺麗な言葉で捉えたなと思いました。ふと動きを止めて、じっと五感をすますと沢山の世界が流れ込んできます。風の匂い、空の色、何かが音を立て、肌が空気を感じます。そうすると急になんだか懐かしくなったり切なくなったり、笑いたくなったりします。まさにその感覚がこの本に閉じ込められていました。
これは一言で表わすと再生の物語です。失恋した女の人がふるさとに帰り、回復をはかります。でも、人が彼女を励ましてそこから自分をとりもどすのではありません。いくらかの、優しい人たちと関わる事で、自分で自分を復活させます。優しさ、というのは痛みを重ね合わせ、同情することではありません。それを口で言うのは簡単なのですが、私たちはついそのお手軽な「優しさ」に逃げてしまいがちな事を感じました。それは突き詰めれば誠実さ、だと思います。自分にも相手にも誠実である人間関係は、とても美しく見えました。反省させられると共に、幸せに近づいた女の人に元気をもらいました。