パートの休憩時間に、
私はいつものようにスマホを開きました。

 

 

 

あと十分で、
またレジに戻ります。

 

 

 

休憩室の小さなテーブルには、
コンビニで買ったお茶と、
半分だけ残ったおにぎりがありました。

 

 

 

なんとなくInstagramを開くと、
一つの投稿が流れてきました。

 

 

 

「子どもとの時間を大切にしながら、
在宅で自分らしく働いています」

 

 

 

明るい部屋。

 

 

 

白いテーブル。

 

 

 

パソコンの横には、
きれいなカップに入ったコーヒー。

 

 

 

私は、その人が何を売っているのかを見る前に、
フォロワー数を見ました。

 

 

 

2.8万人。

 

 

 

それから、自分のアカウントを開きました。

 

 

 

412人。

 

 

 

朝までは何とも思っていなかった数字なのに、
急に小さく見えました。

 

 

 

あと七分。

 

 

 

私はおにぎりを食べながら、
その人の次の投稿も開きました。

 

 

 

そこには、こんな言葉が書かれていました。

 

 

 

「続けた人だけが変われる」

 

 

 

その言葉を見て、
少しだけ胸が苦しくなりました。

 

 

 

でも同時に、

 

 

 

やっぱり今日も投稿しよう。

 

 

 

まだ私は、足りないんだから。

 

 

 

そう思って、スマホを閉じました。

 

 

 

家に帰ると、子どもは宿題をしていました

 

 

 

夕飯を作って、
洗濯物を取り込んで、
お風呂の準備をしました。

 

 

 

子どもは、
ダイニングテーブルで算数の宿題をしていました。

 

 

 

私は、その向かい側に座りました。

 

 

 

でも、開いたのは連絡帳ではなく、
Canvaでした。

 

 

 

昨日の投稿は、
あまり反応がありませんでした。

 

 

 

今日はもう少し、
目に止まる表紙にしよう。

 

 

 

文字を少し大きくして。

 

 

 

色を変えて。

 

 

 

やっぱり違う気がして、
元に戻しました。

 

 

 

「ママ、これ分からない」

 

 

 

子どもが言いました。

 

 

 

「ちょっと待って」

 

 

 

私は画面を見たまま答えました。

 

 

 

本当に、
少しだけのつもりでした。

 

 

 

表紙を直して、
文章を読み返して、
最後にハッシュタグを選びました。

 

 

 

投稿できたころには、
子どもはもう鉛筆を筆箱にしまっていました。

 

 

 

「終わったの?」

 

 

 

「うん」

 

 

 

それだけでした。

 

 

 

私は、子どもとの時間を増やしたくて、
家でできる副業を探し始めたはずでした。

 

 

 

でもその日も、

 

 

 

子どもの目の前で、
私はスマホを見ていました。

 

 

 

それでも、投稿を休む方が怖かったんです

 

 

 

疲れている日はありました。

 

 

 

今日はもういいかな。

 

 

 

一日くらい、
投稿しなくてもいいかな。

 

 

 

そう思うこともありました。

 

 

 

でも、スマホを置こうとすると、
少し不安になりました。

 

 

 

今日投稿しなかったら、
見てもらえなくなるかもしれない。

 

 

 

フォロワーが増えなくなるかもしれない。

 

 

 

せっかくここまで続けたのに、
また途中で終わってしまうかもしれない。

 

 

 

たぶん私は、

 

 

 

投稿を休むことより、
「また続かなかった自分」になることの方が怖かったんです。

 

 

 

これまでにも、
いくつか副業を探してきました。

 

 

 

ブログ。

 

 

 

ライティング。

 

 

 

SNS。

 

 

 

始めてみたけれど、
思ったようにいかなくて、
途中でやめたものもありました。

 

 

 

だから今度こそ、と思っていました。

 

 

 

今度こそ続けたい。

 

 

 

今度こそ結果を出したい。

 

 

 

今度こそ、

 

 

 

「私は変われる」と思いたかった。

 

 

 

毎日投稿することは、
いつの間にか、

 

 

 

売上のためだけではなくなっていました。

 

 

 

今日もやった。

 

 

 

今日も諦めなかった。

 

 

 

私はまだ、
ちゃんと未来を変えようとしている。

 

 

 

そう思えるものに、
なっていたのだと思います。

 

 

 

そもそも、何のために副業を始めたんだっけ

 

 

 

私は、お金持ちになりたかったわけではありません。

 

 

 

ただ、もう少しだけ、
家計に余裕が欲しかった。

 

 

 

子どもから、

 

 

 

「これ、やってみたい」

 

 

 

そう言われたときに、
最初に値段を見る自分でいたくありませんでした。

 

 

 

習い事でも。

 

 

 

欲しいものでも。

 

 

 

これから先の進路でも。

 

 

 

お金だけを理由に、
子どもの「やりたい」を小さくしたくない。

 

 

 

それが、
副業を始めた理由の一つでした。

 

 

 

だから、早く結果を出したかったんです。

 

 

 

でも私は、
SNSのことをほとんど知りませんでした。

 

 

 

何を書けばいいのか。

 

 

 

どうしたら売れるのか。

 

 

 

何も分からなかったので、
結果を出している人の言葉をそのまま信じました。

 

 

 

「まずは毎日投稿」

 

 

 

「発信を続ければ認知される」

 

 

 

「フォロワーを増やしましょう」

 

 

 

「結果が出るまで継続すること」

 

 

 

疑ったことは、
ほとんどありませんでした。

 

 

 

だって、

 

 

 

私より結果を出している人が
そう言っているんだから。

 

 

 

まずは言われた通りにやることが、
一番の近道だと思っていました。

 

 

 

数字が増えると、少し安心しました

 

 

 

続けているうちに、
フォロワーは少しずつ増えました。

 

 

 

いいねが多い日もありました。

 

 

 

コメントをもらえる日もありました。

 

 

 

「参考になります」

 

 

 

「勉強になりました」

 

 

 

そう言ってもらえると、
うれしかったです。

 

 

 

同時に、
少し安心しました。

 

 

 

これでいいんだ。

 

 

 

ちゃんと進んでいるんだ。

 

 

 

そう思えました。

 

 

 

だから、また投稿しました。

 

 

 

投稿を作って。

 

 

 

いいねを返して。

 

 

 

コメントを書いて。

 

 

 

何度もフォロワー数を見ました。

 

 

 

数字が一人増えると、
少しうれしくなりました。

 

 

 

一人減ると、
何か悪いことを書いたかなと思いました。

 

 

 

子どもとテレビを見ているときも、
通知が来るとスマホを開きました。

 

 

 

お風呂から出たあとも。

 

 

 

寝る前にも。

 

 

 

気づくと私は、
一日の中で何度も数字を確認していました。

 

 

 

子どもとの時間を増やしたくて始めたのに、

 

 

 

目の前の子どもより、
スマホの中を見ている時間が増えていました。

 

 

 

でも、その頃の私は、
そこまで深く考えていませんでした。

 

 

 

今は頑張る時期なんだから。

 

 

 

結果が出れば、
きっとこの生活も変わる。

 

 

 

そう思っていました。

 

 

 

そんなとき、あるレポートを読みました

 

 

 

何か特別な答えを探していたわけではありません。

 

 

 

むしろ、その頃は、
新しいことを覚えるのにも少し疲れていました。

 

 

 

また新しいノウハウかな。

 

 

 

また、やることが増えるのかな。

 

 

 

最初は、
そんな気持ちで読み始めました。

 

 

 

でも、途中で、
少しだけ手が止まりました。

 

 

 

そこに書かれていたことが、

 

 

 

それまで私が見ていたものとは、
少し違っていたからです。

 

 

 

私はずっと、

 

 

 

投稿しなければ見つけてもらえない。

 

 

 

フォロワーが少ないから売れない。

 

 

 

もっと続けなければ結果は出ない。

 

 

 

そう思っていました。

 

 

 

というより、

 

 

 

そういうものだと思っていました。

 

 

 

疑う理由もありませんでした。

 

 

 

でも、そのレポートを読んでいるうちに、

 

 

 

一つだけ、
頭から離れなくなったことがありました。

 

 

 

私がずっと正しいと思っていたことって、
本当にそうなんだろうか。

 

 

 

それだけでした。

 

 

 

何かが全部分かったわけでもありません。

 

 

 

急に不安がなくなったわけでもありません。

 

 

 

ただ、

 

 

 

今まで一度も疑わなかったことを、
初めて少しだけ疑いました。

 

 

 

レポートを閉じたあと、もう一度自分のアカウントを開きました

 

 

 

投稿は、いつも通り並んでいました。

 

 

 

フォロワー数も、
急に変わったわけではありません。

 

 

 

でも、その日は少しだけ、
数字の見え方が違いました。

 

 

 

私は、

 

 

 

この数字を増やすために、
副業を始めたんだっけ。

 

 

 

投稿を毎日続けることが、
やりたかったことだったんだっけ。

 

 

 

子どもとの時間を増やしたかったのか。

 

 

 

家計に少し余裕が欲しかったのか。

 

 

 

それとも、

 

 

 

「今日も投稿できた」

 

 

 

そう思って、
安心したかったのか。

 

 

 

その答えは、
今でもきれいには言えません。

 

 

 

たぶん、
全部少しずつあったのだと思います。

 

 

 

ちゃんと結果を出したかった。

 

 

 

家族の未来を変えたかった。

 

 

 

誰かに見つけてほしかった。

 

 

 

そして、

 

 

 

「私はちゃんと頑張っている」

 

 

 

そう思いたかった。

 

 

 

そんな感じだったのだと思います。

 

 

 

次の日も、私は投稿しました

 

 

 

レポートを読んだからといって、
急に投稿を全部やめたわけではありません。

 

 

 

次の日も、
私はいつものようにスマホを開きました。

 

 

 

Canvaも開きました。

 

 

 

フォロワー数も見ました。

 

 

 

今でも、
誰かの成果報告を見ると焦ることがあります。

 

 

 

反応が少ないと、
気になる日もあります。

 

 

 

だから、何かが全部変わったとは思っていません。

 

 

 

でも、前より少しだけ、

 

 

 

「今日も投稿しなきゃ」

 

 

 

と思ったときに、
一度止まるようになりました。

 

 

 

本当に今やることは、
これなのかな。

 

 

 

今日は投稿を作ることなのか。

 

 

 

それとも、
別のことを考える時間なのか。

 

 

 

まだ、毎回答えられるわけではありません。

 

 

 

でも、

 

 

 

前より少しだけ、
立ち止まれるようになりました。

 

 

 

「ママ、これ分からない」と言われたとき

 

 

 

少し前、

 

 

 

また子どもが、
ダイニングテーブルで宿題をしていました。

 

 

 

私は向かい側で、
スマホを見ていました。

 

 

 

「ママ、これ分からない」

 

 

 

そう言われました。

 

 

 

前と同じでした。

 

 

 

スマホには、
作りかけの投稿がありました。

 

 

 

あと少し直したかった。

 

 

 

そのままなら、
また「ちょっと待って」と言っていたと思います。

 

 

 

でも、その日は、

 

 

 

スマホを伏せました。

 

 

 

本当に、
それだけです。

 

 

 

副業で大きな結果が出たわけでもありません。

 

 

 

フォロワーが急に増えたわけでもありません。

 

 

 

投稿への不安が、
全部なくなったわけでもありません。

 

 

 

ただ、

 

 

 

子どもとの時間を増やしたくて始めたことなのに、
その子どもに「ちょっと待って」と言い続けていた自分を、
前より少しだけ見られるようになりました。

 

 

 

本当に失いたくなかったもの

 

 

 

あの頃の私は、
投稿をやめるのが怖かったんだと思います。

 

 

 

売上がなくなるから。

 

 

 

フォロワーが増えなくなるから。

 

 

 

それもあったと思います。

 

 

 

でも、それだけではありませんでした。

 

 

 

投稿をやめたら、

 

 

 

「今度こそ、私は変われる」

 

 

 

そう思っていた自分まで、
いなくなってしまう気がしていました。

 

 

 

だから、やめられなかった。

 

 

 

今振り返ると、
そんな部分もあったのだと思います。

 

 

 

でも、

 

 

 

私が本当に失いたくなかったものは、
フォロワー数ではありませんでした。

 

 

 

毎日投稿できる自分でもありませんでした。

 

 

 

子どもが何かをやりたいと言ったときに、

 

 

 

「いいよ」

 

 

 

と言える余裕が欲しかったこと。

 

 

 

家族との時間を、
もう少し大切にしたかったこと。

 

 

 

そして、

 

 

 

自分で選んだ働き方を、
ちゃんと自分で選んでいると思えること。

 

 

 

たぶん私は今も、
そこへ戻っている途中なんだと思います。

 

 

 

今も投稿はします。

 

 

 

数字を見ることもあります。

 

 

 

焦る日もあります。

 

 

 

でも、

 

 

 

「続けること」と、
「本当に欲しかった未来へ進むこと」は、
同じなのかな。

 

 

 

そう考えるようにはなりました。

 

 

 

そのきっかけをくれたのが、
あのレポートでした。

 

 

 


 

 

 

もし今、

 

 

 

休むことが怖かったり、

 

 

 

投稿しないと置いていかれる気がしたり、

 

 

 

「もっと頑張らなきゃ」と思いながら、
少し疲れているなら。

 

 

 

私が読んだものを、
ここに置いておきます。

 

 

 

何か新しいことを増やすためというより、

 

 

 

今まで当たり前だと思っていたことを、
一度だけ見直してみるきっかけとして。

 

 

 

➔ 私が「無理に頑張り続けなくてもいいのかもしれない」と思えたレポート