派遣法改正と同一賃金同一労働推進法について | 第6の権力 logic starの逆説

派遣法改正と同一賃金同一労働推進法について

国会で、派遣法の改正と、いわゆる同一労働同一賃金促進法の制定が可決されました。


派遣法の改正については、以前にも書いたように、派遣が問題ではなく、派遣元のいわゆる派遣業者において、労働者が、いわゆる正社員ではなく、派遣期間に限って雇用される非正規雇用であることが問題です。派遣先の問題ではありません。今回の改正は、本来の問題により焦点をあてることになっており、前進と考えますが、いまだ、派遣先の問題ととらえているところがあります。


それよりも、いわゆる同一労働同一賃金促進法のほうが問題です。この法律は、国の方針を定めるだけの実効性のない法律ですが、今後、この法律にもとづいて、具体的な措置がなされた場合には、現在のわが国の労働慣行を大きく変えることになります。この法律は、同一の労働をするものは、同一の賃金を払うべきとして、職務給を実現することを、趣旨としています。これは、平社員ならみな同じ給料、主任ならみな同じ給料、係長ならみな同じ給料になる、ということです。すなわち、毎年の昇給がない、ということになるのです。係長などに昇格しない限り、昇給はない。こうした賃金体系をとっている企業も、わが国でも、すでにあります。また、国際的には、それがスタンダードだといってよいでしょう。しかし、わが国の多くの企業では、1年在籍することで、能力向上が見られると考え、少しずつ給料があがっていくのが普通です。また、長期雇用を前提として、企業が社員の能力開発をするという、わが国の雇用慣行とも整合しません。さらに、将来、幹部職員を期待される社員も現場も知っておくべきだということで店頭での販売をさせた場合でも、あるいは、外国語が堪能な職員について海外派遣を予定しつつ商品について知ってもらうために店頭での商品の販売をさせた場合でも、そのほかの業務を担うことができないとして商品の販売をさせた場合でも、同じ給料を支払うべきだということになるわけです。


ざっくりといえば、同一労働同一賃金は、いわゆる正社員の、とりわけ役職についていない正社員の給料を削減し、いわゆる非正規職員の給料をあげることになります。


そうしたことを理解して、この法律が制定されたのが、疑問に思います。


なお、私は、個人的には、職務給に賛成です。しかし、多くの国民・労働者は、そうではないのではないか、と感じています。