耐震偽装の控訴審判決について
2月24日に、姉歯元建築士による耐震偽装事件について、強度不足が判明してホテルを建て替えたホテル経営者が、建築確認をした愛知県を相手取って提起した訴訟で、愛知県の損害賠償を認める判決が名古屋地方裁判所でありました。
その控訴審判決が、10月29日に名古屋高等裁判所であり、名古屋地方裁判所の一審判決を覆し、県の責任を否定しました。
新聞報道によると、県の過失を認めなかったようです。
この件については、過去のエントリーで名古屋地方裁判所の一審判決について書いたことがあります。
http://ameblo.jp/logic--star/entry-10214278911.html
その要点を繰り返します(がぜひ全文をご覧ください)。
「愛知県が建築確認をしているのは、誰のためでしょうか。
建築主であるホテル経営者のためにおこなっているのでしょうか。
そうではありません。
愛知県が「義務」を負っているのは、県民、国民に対してです。
この建物が地震により倒壊し、通行人に被害が出ないようにするために、建築確認をおこなっているのです。
もし、本当に建物が地震によって倒壊し、通行人に被害が出た場合に、その被害者が愛知県に対して損害賠償を求めるというのであれば、理解できます。
しかし、建築主が愛知県に損害賠償を求めるというのは、理解できません。
建築主こそが、本来、安全な建物を建てる義務があるのです。
他人を危険にさらすような、危険な建物をつくってはならないのです。
その義務に違反した建築主が、愛知県に、税金から、損害の補てんを求めるというのは、なにかおかしくないでしょうか。
安全な建築物をつくるということでは主体が建築主で、そのチェック・サポートをするのが県です。
整備不良の車で事故をおこしたり、スピード違反で事故をおこしたドライバーが、ちゃんと事前に取り締まってくれれば、事故はおこさなかった、と言って、警察を相手に損害賠償を求めたら、その請求は認められるでしょうか?
それとよく似た状況だと思っています。」
したがって、名古屋地方裁判所の一審判決には問題があると考えており、名古屋高等裁判所の二審判決の結果を支持するのですが、しかし、問題は県に過失があったかどうかではないと考えています。
実は、10月28日に、京都地方裁判所で同じように京都府を相手取っておこなわれた裁判の判決がなされています。
その判決の内容は、新聞報道によると、次のとおりとのことです。
「建築基準法は、居住者らの生命、財産を保護している。所有者は直接の保護対象外なので、府が建築確認の判断を誤っても違法と評価できない」
この京都地方裁判所の判決は、私の先のエントリーと同じ趣旨のもので、基本的には、私は、この京都地裁の分析を評価します。
ただ、違法という基準で判断すべきかどうか、という疑問はあります。
不法行為であれば「権利侵害」か「因果関係」でみるべきではないかと思います。
過失があっても、違法でも、損害賠償責任を負うとは限らないのです。
判決に肯定的なことは、このブログの趣旨からは、あえて書く必要がないのですが、新聞では、原告であるホテル経営者のインタビューがあり、同情的な論調にも感じられましたので、繰り返しになりますが、書いておくこととしました。
参考とした記事
http://blog.goo.ne.jp/sumaino1/e/f26be56edbdf0c679acea3fa5e2bb5fd
http://hondamasazumi-js.blogdehp.ne.jp/archives/20101029.html
http://j-burogu123.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/post-592c.html