鳩山総務大臣の辞任と郵政問題について | 第6の権力 logic starの逆説

鳩山総務大臣の辞任と郵政問題について

郵政社長の西川氏の再任問題にからんで、鳩山邦夫総務大臣が辞任しました。


これまで、このブログの趣旨により、鳩山大臣の「発言」を擁護する立場で書いてきましたが、今回は、鳩山大臣(当時)の言動を否定する立場で書くことになります。


まず、総理大臣と総務大臣はじめ各国務大臣との関係について、書いておきます。

実は、総理大臣には総務大臣はじめ各国務大臣への指揮命令権もありませんし、総理大臣は各省庁の国家公務員に対して直接指揮命令することもできません。

だからこそ、国や政府においては、「抵抗勢力」というものがありえるのです。

これに対して、都道府県や市町村においては、すべての職員は、知事や市町村長を補助する立場であり、知事や市町村長は指揮命令をすることができます。(独立性を保つための委員会は例外です)

都道府県知事や市町村長が直接選挙で選ばれることもあわせて、地方自治体は国ほどは縦割りではないのです。


しかし、総理大臣は、いつでも各国務大臣をいつでも罷免することができます。

都道府県知事や市町村長は、部長を任意に罷免することができません。部長は、知事や市町村長の命令を聞くことが前提だからであり、命令を聞かなければ職務命令違反で処分できることになります。


したがって、総理大臣と国務大臣が意見を異にするに至った場合には、最終的には総務大臣はその大臣を罷免するしかないのです。

今回は、罷免の前に辞任に至りましたが、総理大臣と国務大臣が意見を異にし、その結果、国務大臣が辞めるというのは、まさしく制度にそった、あるべき結果なのです。

このこと自体は問題視することではなく、麻生総理大臣や鳩山総務大臣を批判したりすることでははないでしょう。


さて、本題に入り、鳩山大臣の言動について、否定的なスタンスで書いてみたいと思います。


今回の問題は、

(A)郵政が民営化されて株式会社となった

(B)株式会社となった後、「かんぽの宿」を一括売却する契約がなされた

(C)鳩山大臣は、売却価格が不当に安く、また一括売却ではなく施設ごとに売却されるべきであり、売却手続も競争性のないものであったと主張した

(D)郵政会社は、博報堂と包括的な広報業務契約を締結していた

(E)鳩山大臣は、従来は包括的な契約ではなかったことを指摘し、また、博報堂の子会社職員が逮捕された後も契約を継続しようとしたことを「癒着」であると批判した

(F)財務大臣は日本郵政の株主として取締役選任を否決することができ、また、これとは別に総務大臣は郵政会社の社長の認可権があるため、総務大臣単独で郵政の西川社長の再任を阻止できる

(G)民営化後、郵政会社は一定の利益を出しており、経営的には一定評価できる状況にあって、西川社長を再任させるべきという主張が与党内でも出ていた

(H)鳩山総務大臣は、西川氏を再任させないことが「正義」にかなう「正しい」判断であり、妥協はありえず、「総理を信じている」。西川氏が続投するのであれば自分の罷免・辞任もありえると発言した


という経緯から、結局、総務大臣が辞任することになったわけです。


ここで最大の問題は、(H)であると思います。

鳩山氏は、「正義」「正しい」という言葉を繰り返し主張し(辞任後も使っています)、「自分がやめるか、西川氏がやめるか」を総理に迫ったわけです。

しかし、本当であれば、総務大臣は、西川氏の功罪を評価し、西川氏が郵政社長にふさわしくないことを説明すべきでした。また、「かんぽの宿」や「博報堂との広報業務契約」が、社長の辞任に値する問題だということを、しっかりと説明すべきでした。

それを、「正義」「正しい」という感情的な言葉に終始し、「自分と西川氏のどちらをとるのか」という西川氏の業績や資質とは無関係の言動は、まさしく、国民にとって大事な郵政会社をどうするのかということを議論するに、ふさわしいものではなかったといわざるをえません。

特に、「かんぽの宿」を「国民の大切な財産」といっていますが、それなら民営化すべきではなかったのではないでしょうか。

また、「かんぽの宿」は政府で売却してから、民営化することもできたはずであり、売却方法を民営化後に任せたのは政府ではなかったのでしょうか。

不当に安いというのであれば、いまでも「かんぽの宿」を政府で買い取って、正しい価格で転売すればよいのではないでしょうか。それで国民の財産は確保できます。

要するに、自分ではうまくできずに丸投げをしておいて、その処理を批判をするというのは、いかがなものでしょうか。

責めを負うべきは、西川氏ではなく、政府ではないのでしょうか。

東京中央郵便局も国として保存する価値があるのであれば、政府が買い取るのが筋ではないでしょうか。


西川氏にしてみれば、「かんぽの宿」については、多少安くなっても、素早く処分して、違う業務にエネルギーを集約するほうがメリットが大きいと判断したのではないでしょうか。

一括売却や一括契約を鳩山大臣は批判していますが、それこそ、民営化して、民間の知恵と効率的な経営に任せたことではなかったのでしょうか。

そして、仮に「かんぽの宿」ではマイナスだったかもしれませんが、郵政会社の利益拡大により、「国民の大切な財産」を増やしたのも、西川氏の経営下ではなかったのでしょうか。


このように、鳩山氏の言動は、その態度においても、内容においても、支持することができません。


鳩山氏が法務大臣であったさいの「ベルトコンベアー」発言や「冤罪」発言は、その内容には「理」がありましたが、マスコミからバッシングされることになりました。

http://ameblo.jp/logic--star/entry-10072939701.html

そして、「死神」報道のさいには、「情」に訴えて世論を味方につけることができました。

http://ameblo.jp/logic--star/entry-10108872233.html

その体験により、今回も、感情論を前面に出したとすれば、まったく残念なことだと思います。


なお、もともと鳩山邦夫氏は、自民党から離党するつもりであり、その大義名分と、世論の支持を得るためのパフォーマンスとして、このような行動に至ったという可能性もないわけではありません。

そうした可能性に、ほとんどのマスコミが言及あるいは示唆していたと思います。