法科大学院と弁護士の数と新司法試験について
最近、法科大学院に関する新聞記事をしばしば見るようになりました。
法科大学院修了者がほとんど合格するというのが新司法試験の考え方であったのに、合格率は30%ほどになっている。(受験者数と合格者数の比率による合格率ではなく、出願者数からみた合格者数の割合はもっとはるかに低い)
新司法試験の合格率の高い法科大学院と、合格率の低い法科大学院とに二分されている。
新司法試験の合格率の低い法科大学院を中心に、法科大学院の定員割れがおきている。
こうした状況を受けて、法科大学院の入学定員を減らすよう国ははたらきかけており、さらには、新司法試験の合格率の低い法科大学院を廃止すべきという主張がなされている。
新司法試験に合格者数が増えているため、新司法試験に合格しても、弁護士事務所に就職できないものが増えている。
こうした状況を受けたうえで、弁護士会は、弁護士という職業の魅力を向上しなければ、よい人材が集まらないため、質が低下するとして、新司法試験の合格者数を減らすように主張している。
こうした状況にあるようです。
しかし、新司法試験の合格率が低くなる、というのは、わかっていたことでした。
合格者数は決まっており、それよりも大幅に法科大学院の定員が多いわけですから、当然、合格率は低くなります。
合格率を高くしようとするならば、合格者数を増やすか、法科大学院の定数を減らすか、どちからしかありません。
国は、合格者数を増やすのではなく、法科大学院の定数を減らす方向で調整をしているわけです。
そして、弁護士会も、合格者数を増やすことには反対しています。
これらの主張とはまったく逆の考え方を、提示してみたいと思います。(逆説ですので)
すなわち、合格者数を増やすということです。
まず、新司法試験は、合格者数を決めた競争試験にするのではなく、一定のレベルがあると認められれば合格する能力試験にします。
法科大学院で一定レベルの教育がなされ、修了が認定された人であれば、ほとんど合格するはずです。
司法修習制度は廃止して、実務は実際に仕事をしながら習得します。
多数の弁護士が競争することにより、弁護士の質は高まり、能力が低いレベルの弁護士は淘汰されます。
それでは、せっかく新司法試験に合格しても、たいへんではないか、という声が聞こえてきそうですが、公認会計士も税理士も司法書士も、みな、こうした条件です。弁護士だけ違うシステムにする理由はありません。
経済界は、一般の企業が「高い質のサービスを維持するために参入を減らして競争のない状況にすべきだ」といっても支持されないのであり、それは法曹も同じだ、と主張しています。
この経済界の主張はもっともであり、質を維持するために競争を減らせという弁護士会の主張のほうが、分が悪いのではないでしょうか。