マクドナルド 残業代と管理職についての判決 | 第6の権力 logic starの逆説

マクドナルド 残業代と管理職についての判決

この判決については、新聞報道しかみていないのですが、その前提で、少し感想など書いておこうとおもいます。

判決は、マクドナルドの店長は経営に関与していないから管理職ではない、管理職ではないから労働基準法にのっとって残業代を払う必要がある、という内容だったようです。

しかし、経営に関与しているかどうかということと、管理職であるかどうか、ということとは別のはずです。実定法の解釈としては、判決は、明らかに誤っています。

たとえば、週の1回会議に出席して経営に対していろいろと意見を述べる機会があり、実際にそれが経営に反映されているとしても、経営に関する意見をいう以外には、ひたすら工場で作業し、その人の勤務時間や、作業内容はすべて上司に管理されていたとします。この人は、経営に関与していることは間違いありません。この人を管理職として、どれだけ残業させても、残業手当を払わなくてもよい、ということになるのでしょうか?

管理職であるかどうかは、その文字が意味するとおり、他の社員を管理する立場か、他の社員に管理される立場か、によって決まるはずです。自分では作業せず、工員を管理する工場長は、経営者の意向を受けて工場を運営して経営に対して意見を述べない者であっても、明らかに管理職です。

こうした人たちを管理職ではないとしてしまうと、こうした人たちは労働者の組合に加入できることになります。労働組合の意思決定に参加できることになります。それで、労働者の権利は守られるのでしょうか?

店長を管理職ではないというのであれば、店長は労働者を管理する立場ではなく、管理される立場だというべきでした。しかし、それが無理なので、経営に関与しているかどうか、という基準を持ち出したのかもしれません。そうだとすれば、裁判官の直感的正義感で結論を先にだして、むりやりそれに合致する理屈をつけたということになります。

日本では、ほかの社員を管理しつつ、自分も上司に管理されるという、中間管理職やプレイングマネージャーが多いと思います。わが国の労働基準法は管理する人と、管理される人が二分されることを前提としており、プレイングマネージャーのような立場の人について、想定していないといえます。したがって、不備は法律にある、といえるでしょう。法律をそのまま適用するのであれば、管理職は管理する立場の人ですから、プレイングマネージャーも管理職です。しかし、管理される人を守るためには、管理される立場をもつプレイングマネージャーは労働者として保護される必要があります。その点でも、不備は法律にあります。

しかし、もともとの問題は、店長が管理職であるかどうかということではなく、店長の給料が安い、という主張なのです。管理職ではないのであれば残業手当はだすが、管理職でないので管理職手当は払わないし基本給を大幅に下げる、ということで、問題は解決したといえるのでしょうか?

そもそも、なぜ店長は不満があるのなら転職しなかったのでしょうか?経営者側は店長に辞められるという不安はなかったのでしょうか。転職しても今よりよい条件の仕事はない、経営者側にとっては辞められる不安はなく辞められても代わりはみつかる、ということであれば、給料など労働条件は、その仕事にみあうものだったといえるのが、本来です。

ここで、本来です、と書いたのは、日本の現状は、本来あるべき状況にないからです。それは、日本では、事実上、解雇は許されないということであり、それは、労働者の入れ替えがないということであり、転職が非常に難しいということだからなのです。労働者がよりよい条件を求めて転職できる環境にないので、労働条件が悪くても、やめられる心配がないのです。

しかし、他方で、日本では、労働者は、解雇されないという特権をもっています。解雇されないかわりに、労働条件については我慢せざるをえない、というのが日本の現状なのです。これが、労働者によってよい状況なのかどうか、考える必要があります。