2025年10月3日付の共同通信社が、
『貨幣持ち出しの造幣局職員死亡 174枚、処分などを公表』
と題した記事を報じていました。
以下に、この記事を要約し、造幣局が実施すべき再発防止策について、考察しました。
《記事の要約》
造幣局(大阪市北区)は、2025年10月3日、広島支局の職員による硬貨不正持ち出し問題で関係者の処分と再発防止策を発表した。
500円硬貨174枚、計8万7千円が不正に持ち出された可能性が高いと認定。職員は再任用の60代男性で、発覚後に死亡した。
同局は7月に問題を公表し、広島県警に窃盗容疑で被害届を提出していた。
広島支局では回収された貨幣を溶かして新たな硬貨を製造している。
男性職員は貨幣をコンテナへ移す作業を担当。
6月26日のカメラ映像に、貨幣を外部へ持ち出す様子が映り、調査で不足分が確認された。
男性は「買い物に使った」と不正を認め、その後死亡した。
この問題を受け、溶解課の課長や主事3人を減給、課長補佐と支局長、局次長らを戒告処分とした。
内部規定で義務づけられていた金属探知機の使用が徹底されておらず、監視体制の甘さが露呈した。
造幣局は「通貨制度を支える独立行政法人としてあってはならない事態であり、深くおわび申し上げる」とコメント。
硬貨の不正流出は国の信用を揺るがしかねず、徹底的な調査と再発防止が急務となっている。
(記事の要約、ここまで)
《筆者の考察》
<造幣局が実施すべき再発防止策>
今回の造幣局広島支局における硬貨不正持ち出し事件は、単なる個人の不正行為にとどまらず、組織的な管理体制の不備を示した重大事案である。
額面は8万7千円と少額だが、造幣局の職員が貨幣を持ち出せたという事実は国民や国際社会の信頼を損ない、金融制度の根幹を揺るがしかねない。再発防止の観点からは以下のような対策が必要である。
1)入退室管理と金属探知機の徹底運用
最大の問題は、内部規定で義務化されていた金属探知機の運用が徹底されていなかった点である。
単なる「設置」にとどまらず、運用状況を定期的に監査し、チェックリスト方式で記録を残す必要がある。
また、職員による恣意的な運用停止を防ぐため、第三者による抜き打ち検査を導入すべきである。
2)重量・数量管理の強化
貨幣の回収から溶解、再生産に至る一連の工程において、数量や重量を逐一記録し、前後のデータを突き合わせる仕組みが必要である。
電子データ化と監査証跡の確保により、改ざんやごまかしを不可能にする。
また、現場責任者が定期的に照合作業を行い、異常があれば即時報告する仕組みを整備すべきである。
3)防犯カメラと監視体制の強化
今回の発覚はカメラ映像によるものであり、映像監視の有効性が証明された。
監視範囲の拡充と録画データの長期保存、AIを活用した不審動作検知の導入が有効である。
これにより、人的監視の限界を補い、不正を未然に防ぐ。
4)職員への倫理教育と組織風土改革
「造幣局職員は不正をしない」という性善説的な前提は極めて危険である。銀行や証券業界のように、職員に対し定期的に倫理研修や不正防止教育を行い、リスクを自覚させる必要がある。
また、内部通報制度を匿名でも安心して利用できる環境に整備することが重要だ。
5)外部監査と情報公開
不正を組織内だけで防ぎ切ることは困難である。会計監査に準じた外部監査を導入し、貨幣管理のプロセスを第三者が定期的にチェックする必要がある。
さらに、国民への説明責任として、監査結果や再発防止の進捗を公開し、透明性を高めることが信頼回復に不可欠である。
<結論>
造幣局における硬貨不正持ち出しは、単なる規律違反ではなく、国家の信用に直結する問題である。
金属探知機の徹底運用、数量管理の厳格化、監視体制の強化、倫理教育、外部監査の導入と情報公開が再発防止の柱となる。
性善説ではなく「人は不正をする可能性がある」という前提に立った制度設計と運用こそが、今後の信頼回復と国際的信用維持に不可欠である。
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