2026年4月11日付の読売新聞が、
『看護専門学校の入学者、定員比で初めて8割下回る…学生離れ進み地方で不足との指摘も』
と題した記事を報じていました。
記事から少し逸れますが、近年は、団塊世代の引退や少子化に伴い、求職者の売り手市場が続いています。
「手に職を付けて就職したい」という考えで人気があった看護系を含む医療系専門学校の4年制大学化や専門職大学の新設が増えたこと、文化系大学の就職が好調なことも、看護専門学校の人気が相対的に落ちた原因ではないかと思います。
以下に、記事を要約し、看護専門学校の入学者減少の背景と影響、今後の予測について、考察しました。
《記事の要約》
全国の看護専門学校(3年制)で入学者数の減少が続いている。
厚生労働省の調査によると、2025年度の入学者は約2万人にとどまり、定員充足率は79.5%と初めて8割を下回った。
入学者数は2017年度の約2万8400人をピークに減少傾向が続き、5年連続で低下している。
看護師になるには、専門学校や大学で教育を受けたうえで国家試験に合格する必要があるが、近年は大学の看護学部への進学が増加している。
2025年度の大学入学者は約2万6800人で、充足率は99.7%とほぼ定員を満たしている。
しかし、専門学校と大学を合わせた看護系全体の入学者数は減少しており、将来的な人材不足が懸念されている。
現場ではすでに変化が見られる。
看護師の年齢構成では40代前半までの若手層が減少しており、特に地方で人手不足が深刻化している。
専門学校の卒業生は地元で就職する割合が高いとされるため、入学者減少は地域医療に直接的な影響を及ぼす可能性がある。
こうした状況を受け、厚生労働省は有識者検討会を設置し、看護師確保策の検討を開始した。
今後、2040年に高齢者人口がピークを迎えることを見据え、看護職の需給見通しをまとめるとともに、養成や確保の具体策を示す方針だ。
看護人材の確保は、日本の医療体制の持続性を左右する重要課題となっている。
(要約、ここまで)
《筆者の考察》
看護専門学校の入学者減少は、単なる少子化だけでは説明できない構造的な問題を含んでいる。
最大の要因は「進学先の選択構造の変化」である。
近年、看護系教育は大学化が進み、学費支援制度の充実もあって、3年制専門学校と4年制大学のコスト差が縮小した。
その結果、高校生にとっては「より将来の選択肢が広い大学」を選ぶ合理性が高まっている。
加えて、労働市場の変化も影響している。
長期的な人手不足を背景に、一般企業への就職環境が改善し、文系でも安定した職を得やすくなった。
かつて「資格=安定」とされた看護職の相対的な魅力は低下している。
さらに深刻なのは、待遇と業務負担のミスマッチである。
看護師は夜勤や重い責任、精神的負担が大きいにもかかわらず、給与水準は他業種と比べて必ずしも高くない。
特に夜勤をしなければ賃金が伸びにくい構造や、医療現場でのハラスメント問題も、志望者減少の一因とされる。
これは「やりがい」と「報酬」のバランスが崩れている典型例である。
このまま入学者減少が続けば、2040年の高齢化ピークに向けて、医療・介護体制は深刻な人材不足に直面する。
特に地方では、専門学校出身者が地元医療を支えてきたため、その縮小は地域医療の崩壊リスクを高める。
今後の予測としては、
1)専門学校の統廃合や大学化の進行
2)都市部と地方の人材格差拡大
3)外国人看護人材の活用拡大
が現実的なシナリオとなるだろう。
対応策としては三つの視点が重要だ。
第一に「処遇改善」である。診療報酬や補助金を通じ、夜勤に依存しない給与水準の引き上げが不可欠だ。
第二に「キャリアの多様化」。看護師資格を活かした企業就職や専門分野への転換を明確にし、職業としての魅力を高める必要がある。
第三に「教育制度の再設計」である。
専門学校と大学の役割を整理し、地域医療を支える人材育成を戦略的に行うべきだ。
ISO思考で言えば、これは「人材という重要資源のリスク管理」である。
需要増が確実な中で供給が減るという構造リスクに対し、早期に仕組みで対応しなければ、医療の質そのものが維持できなくなる。
看護人材問題は、単なる教育の問題ではなく、日本社会の持続性を問う経営課題なのである。
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