2025年9月18日付で帝国データバンクが、
『首都圏への本社移転、過去10年で最多 5年ぶり「転入超過」へ』
と題した記事を報じていました。
以下にこの記事を要約し、首都圏への本社移転のメリット・デメリットや今後の傾向について考察しました。
《記事の要約》
<首都圏回帰が鮮明に 半期で「転入超過」最多ペース>
2025年上半期(1~6月)、地方から首都圏へ本社機能を移した企業は200社で、過去10年で最多。
前年同期比30.7%増と高水準で、この勢いが続けば通年400社台に達する見通しだ。
一方、首都圏から地方への転出は150社(同10.2%減)。転入が転出を50社上回る「転入超過」となり、半期としては2011年以降で最大級の差となった。
業種別では、首都圏入りがサービス業(80社)で最多。なかでも受託開発ソフトウェアが目立つ。
卸売(32社)、小売(29社)も増加した。転出側もサービス業が最多だが、コロナ禍以降では最少規模。
規模感では、首都圏に入った企業は売上1~10億円未満が最多(84社)、1億円未満(79社)も大きく増え、10億円以上の比率は18.5%と3年ぶりに2割を下回った。
出ていく側は1~10億円未満(71社)が中心で、中堅以上の移転が増える。
転入元は33道府県に及び大阪(40社)、福岡(22社)が多い。
転出先は大阪(17社)、静岡(15社)など近隣・大都市圏に集中。
対面営業の復活、人材確保、首都圏本社のブランド優位が追い風となる一方、災害リスクや分散の必要性も意識される。
2025年は5年ぶりの通年転入超過が見込まれ、一極集中に再加速の兆しが濃い。
(要約、ここまで)
《筆者の考察》
<本社の首都圏移転:メリット・デメリットと今後の傾向>
メリットは第一に商機への近さ。
取引先・新規顧客・メディア・金融が密集し、対面営業の効率と情報アクセスが飛躍的に高まる。
次に採用力。
若年層の就業・生活志向が首都圏に向く中、新卒・中途の母集団が厚く、車を前提としない通勤環境も追い風だ。
さらに信用・ブランド。
首都圏本社の表示は対外的な安心感を与え、資金調達や共同事業の場面で優位に働く。
加えて広域アクセスの良さは、出張頻度が高いサービス・IT・卸で効果が大きい。
実データでもサービス業の転入が突出している。
デメリットはコスト上昇。
賃料、人件費、オフィスの狭小化が収益を圧迫し、中小には重くのしかかる。
災害リスクも大きい。
首都直下地震・富士山噴火で機能停止時の代替策がなければ企業継続に直結する。
また、地方の人材空洞化を招き、悪循環(本社移転→人材流出→更なる移転)を助長する。
結果として地方市場の縮小、供給網の脆弱化、地域イノベーションの芽の減耗につながる。
今後の傾向は「二極」になる。
本社登記・対外窓口は首都圏に置きつつ、開発・バックオフィス・コールセンター等は地方分散――“ハブ&スポーク型”が主流だ。コロナ期に進んだリモート/分散の知見を、BCPと人材確保の両立に活かす動きである。
転出先が近隣県や大都市圏に集中している現状も、「一極一点」から広域首都圏+準拠点への段階的シフトを示す。
中堅以上で地方移転が増えているのは、人材獲得競争の消耗を避け、コスト最適化と地域連携を狙う合理的選択だ。
政策面では、税制インセンティブの差(首都圏本社への付加税、地方本社・分散拠点への減税)や、広域交通・デジタル基盤の整備が鍵となる。
地方に“東京と同等に働ける条件”――高速回線、DX支援、人材育成、子育て・住宅支援――を揃えれば、企業も人も自律分散を選びやすい。
加えて、官民でのバックアップ首都機能を大阪・名古屋・福岡などに平時から構築し、危機時に即時切替可能な体制を常態化すべきだ。
<結論>
短期には首都圏回帰が続く。
だが持続可能性の観点からは、首都圏ハブ+地域分散の最適配置が企業価値を高める。
国・自治体は税制・インフラ・人材の三位一体で“どこでも本社機能が回る国”を設計し、企業はBCPと採用優位の両立を図る。
これが「一極集中の利」を活かしつつ、「集中のリスク」を下げる現実解だ。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ977号より)
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