2025年5月12日付の日刊スポーツが、
『暴力動画の「確認がとれました」札幌市が「花井組」の事業認証取り消し 辞退申し出受け5制度で』
と題した見出し記事を報じていました。
以下に、この記事を要約し、札幌市の事業認証制度のあるべき姿について、考察しました。
《以下、記事の要約》
北海道の建設会社「花井組」で、社長とみられる人物が社員を暴行する動画がSNS上で拡散された問題を受け、札幌市は2025年5月12日、同社が認証を受けていた5つの制度すべてを取り消したと発表しました。
札幌市によれば、映像が花井組のものであると確認できたことから、同社から辞退の申し出を受け、以下の制度で認証取り消しが行われました。
・札幌SDGs企業登録制度
・札幌市ワーク・ライフ・バランスplus企業認証制度
・さっぽろまちづくりスマイル企業認定制度
・さっぽろエコメンバー登録制度
・札幌市消防団協力事業所表示制度
花井組は市の公共工事も請け負っていたほか、レバンガ北海道のパートナー企業でもありましたが、暴力行為の発覚により、同チームも5月8日に契約解除を発表。
現在、花井組の公式サイトは閲覧不能となっています。
(記事の要約、ここまで)
《筆者の考察》
<認証取り消しだけでは済まされない札幌市の責任と制度の再設計>
今回の花井組による暴行事件は、個別の企業不祥事にとどまらず、札幌市が認定・登録する制度の信頼性そのものを揺るがす重大な問題です。
暴行動画の内容は常軌を逸し、市が5つの制度でこの企業を「模範的存在」として推奨していた事実との乖離は、市民にとって到底納得のいくものではありません。
◆札幌市が認証する5制度の問題点
札幌市が取り消した5制度はいずれも「環境配慮」「働き方改革」「地域貢献」などの理念に基づいて企業を評価するものですが、実態としては「企業の自己申告と書類審査が中心で、実地確認や継続的評価の仕組みが極めて乏しい」という課題が浮き彫りとなりました。
たとえば、「さっぽろエコメンバー登録制度」は、市が「企業の環境取組を評価するものではない」と明言する“自己申告型”の制度でありながら、登録企業には金融機関による金利優遇措置があるなど、実質的な経済的便益が付与されている点は看過できません。
これにより、悪質な企業であっても認証を盾に信用を獲得できてしまう構造ができていたといえます。
◆「認証取消し」だけで良いのか?
取り消しは当然としても、「辞退を受けて取消す」だけの姿勢では行政の責任放棄に近いものがあります。
制度は公的な信頼を基礎にして成り立つものですから、その認証によって市民・消費者・他企業が誤った評価を行い、損害を被った場合、市には一定の説明責任と再発防止責任があります。
さらに、「認証制度の形骸化」や「チェック体制の甘さ」が指摘されている今、制度自体を放置するならば、札幌市として公的評価機能を担う資格が問われることになるでしょう。
◆制度のあるべき姿と市の責任
1)認証制度の再設計と三段階審査制
制度は書類+インタビュー+現場視察の三段階で構成し、第三者評価機関を介在させる必要があります。
現在のように、市が表面的な申請内容だけで安易に認証を与える方式は、市の名を貸した“自己申告制度”に過ぎません。
2)コンプライアンス項目の強化と継続チェック
認証後も年次更新時に社内コンプライアンス体制、労務管理、パワハラ・セクハラ防止体制などの再点検を義務化し、違反時には即時の認証停止、重大事案では入札資格停止を明文化すべきです。
3)行政と企業の癒着防止、利益の遮断
認証企業に対する便宜供与(金融優遇、公的補助申請の優遇、イメージ向上)には一定の透明性確保が不可欠です。
行政は利害関係者となる企業から独立した立場を保つべきであり、「仲良し企業」の温床とならないための監査制度の構築が求められます。
4)緊急時の対応フローと公表責任の明文化
不祥事発覚時には、市が調査を主導し、認証の有無にかかわらず公的見解を示すガイドラインを設けるべきです。
事件発生から数日後の曖昧な対応は、行政の姿勢が問われかねません。
5)市民・メディア・オンブズマンによるチェック制度の導入
外部監視の視点がない限り、制度は独善的・形式的になりがちです。
市民が匿名で疑義を通報できる仕組みや、定期的に第三者が制度運用を検証する機能が不可欠です。
事件は花井組一社の問題ではなく、札幌市がどのような理念と責任感をもって企業認証制度を運用してきたかが問われる事案です。
信頼を回復するためには、制度の見直しと市側の説明責任、そして、再発防止の具体策を市民の目に見える形で早急に示すことが不可欠です。市が与えた“公的なお墨付き”の重みを、札幌市自身が真摯に受け止めることが今、強く求められています。
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