2025年3月27日付の毎日新聞が、
『異動きっかけに退職検討 強まる「転勤NG」のワケ』
と題した見出し記事を報じていました。
以下に、この記事を要約し、全国展開する日本企業の今後の転勤制度について、考察しました。

《記事の要約》
リクルートワークス研究所が実施した調査によると、「望まない勤務地への異動(転勤)」が、退職を考える最も大きなきっかけになっていることが明らかになりました。
全国の正社員約1万人を対象に調査した結果、「退職を考える」と回答した人は「望まない勤務地」では30.4%と最も多く、「どちらかといえば退職を考える」も合わせると62.6%に上りました。

他の理由としては、「望まない職種への異動」(21.3%)、「望まない上司のもとへの異動」(21.0%)、「望まない部署への異動」(18.9%)、「役職の降格」(15.9%)が挙げられましたが、いずれも転勤ほど大きな影響を与える要因ではないようです。

研究所の古屋星斗主任研究員は、「共働き世帯の増加や、育児・介護といった家庭の事情を抱える人が増える中で、居住地を離れることが難しくなっている」と分析。
転勤がもはや「自己犠牲」の象徴ではなくなりつつある現代の働き方の変化が背景にあると指摘しています。
(記事の要約、ここまで)

《筆者の考察》
<転勤制度の今後の変化と影響>

かつて「転勤」は、終身雇用制度を支える日本型雇用の象徴でした。
特に高度経済成長期には、全国転勤を厭わず働くことが出世や昇給につながり、「転勤は男の勲章」とさえ考えられていました。しかし現在、その価値観は急速に変わりつつあります。

背景にあるのは、第一に共働き世帯の増加です。
1990年代までは専業主婦世帯が主流でしたが、今では共働き世帯が過半数を占め、どちらか一方の転勤が家庭全体に及ぼす影響が大きくなっています。
パートナーのキャリア、子どもの学校、親の介護など、生活全体を巻き込む形になるため、「転勤=家族崩壊のリスク」と認識されるケースが増えてきました。

また、近年の若年層の間では「出世へのこだわりが希薄化」しており、かつてのように転勤を受け入れても報われるとは限らない現実があります。
加えて、「働き方の選択肢」が多様化し、リモートワークや勤務地限定の職種が広がっていることで、「転勤を断る」という選択も以前より現実的になりました。

このような状況を受けて、企業側も転勤制度の見直しを進めています。
一部大手企業では「転勤の有無を選べるコース制」を導入し、総合職・エリア総合職・地域限定職といった選択肢を提示するケースが増えています。
また、転勤を希望しない社員への不利益取り扱いを禁じるガイドラインを整備する動きも見られます。

一方で、企業にとって転勤は人員配置の柔軟性を保つ手段であり、全国展開する大企業にとって完全な撤廃は難しい現実もあります。
そのため、今後は以下のような「選択可能で柔軟な転勤制度」が主流になると予想されます。

・事前の同意型転勤制度(本人の同意なく転勤を命じない)
・転勤手当や住宅補助の充実
・単身赴任回避制度の拡充
・リモート併用による転勤負担軽減
・短期赴任や週単位の出張モデルへの移行

このような制度改革によって、企業は人材流出を防ぎつつ、多様な働き方を支える仕組みを整えることが求められます。

<まとめ>
転勤制度は「一律で受け入れるもの」から「個別対応と選択制へ」と移行していくのが今後の流れです。
その過程で企業の人事部門は、家族やライフスタイルに配慮した配置設計が求められ、人材確保と組織運営の両立という新たなバランス感覚が必要になるでしょう。
転勤制度の改革は、今後の人材戦略の重要な分岐点となるはずです。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ952号より)

 

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