2024年10月2日付の毎日新聞が、
『慶応大、労基法違反で是正勧告 准教授の労働条件、書面で示さず』
という見出しの記事を報じていました。
「天下の慶應大学」で、そのようなずさんな労務管理がされていること自体が驚きですが、以下に、この記事を要約し、考察しました。
《記事の要約》
慶応義塾大学が労働基準法に違反していた問題について、詳細が明らかになりました。
問題は、2020年に湘南藤沢キャンパスの40代の女性准教授を採用する際、労働条件を書面で明示しなかったことや、労働時間の適切な管理を怠ったことが発端です。
この件について、2023年3月に藤沢労働基準監督署から慶応義塾大に是正勧告が出されました。
慶応義塾大は、労働基準法で求められている就業時間、休日、賃金支払い方法などの基本的な労働条件を、労働契約書に記載せず、タイムカードなどを用いた客観的な労働時間の記録も行っていなかったことが指摘されています。
大学側は、これらの問題を受け入れ、「是正勧告を真摯に受け止め、指導内容に沿って是正した」と回答しています。
この問題は、非正規で働く教員の待遇が不安定であることを浮き彫りにしています。
特に有期契約の教員は立場が弱く、長時間労働に陥りやすいとされています。当該女性教員は、長期のプロジェクトに向けて採用されたにも関わらず、3年で契約を更新せず、雇い止めに遭ったと訴えています。
彼女は現在、横浜地裁で労働契約上の地位の確認と未払い残業代の支払いを求める訴訟を行っており、この問題は法的な解決を見ている段階です。
この事件は、教育機関における労働管理の適正化と、非正規雇用者の権利保護の重要性を改めて問うものです。
(以上、記事の要約)
《筆者の考察》
〈想定される問題の背景〉
慶應義塾大学での労働基準法違反問題は、高等教育機関における労務管理の甘さと制度の不備が露呈した事例です。
労働条件の非明示と労働時間管理の怠慢は、非正規雇用に対する体系的な配慮の欠如を示しています。
特に高学歴で専門性が要求される職種である准教授が対象となり、個人の裁量に任せがちな労務管理が問題を引き起こしました。
教職員の場合、公式な労働時間と実際の労働時間が一致しないことが多く、特に研究職では長時間労働が常態化しているところに、法的な義務である労働条件の明示が欠けていたことが大きな問題です。
〈慶應大学に必要な対策〉
慶應義塾大学が直面している労務管理問題への対策は、多面的なアプローチが求められます。
まず、全ての教職員、特に非正規職員に対して、労働条件を明確に示した文書の交付を徹底することが必要です。
これには、就業時間、休日、給与の支払い方法などが含まれ、これらは入職時だけでなく、条件が変更されるたびに更新して再交付することが求められます。
次に、労働時間の適切な管理を確立するため、タイムカードシステムの導入やデジタルトラッキングツールを用いることが考えられます。
特に裁量労働制を適用する場合でも、実労働時間の把握は重要であり、過重労働を防ぐための措置として機能させる必要があります。
また、非正規職員の待遇改善と雇用の安定化を図るために、長期的な雇用戦略を検討すべきです。
例えば、一定期間勤務した非正規職員に対して正規職への転換機会を提供することや、職務の内容と雇用形態のミスマッチを解消するための見直しが必要です。
さらに、労使間のコミュニケーションの向上を図り、教職員が直面する問題や不安について、開かれた環境で議論できる体制を整えることが重要です。
労働組合や代表者を通じて定期的なミーティングを設け、職場の問題に対する意見交換を活発に行うことが望ましいです。
最後に、これらの取り組みを支えるために、大学全体のガバナンス構造の見直しも必要です。
労務管理だけでなく、組織全体の倫理観を高め、コンプライアンス意識を根付かせる教育と訓練を定期的に実施することが不可欠です。
これにより、法令遵守だけでなく、教職員が安心して働ける環境を構築することができるでしょう。
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