2024年7月5日付の読売新聞オンラインが、
『日立造船子会社、船舶用エンジンの燃費性能データを改ざん…国交省が立ち入り調査へ』
という見出しの記事を報じていました。
以下に、この記事を要約し、この問題の原因と再発防止策を考察しました。
《記事の要約》
2024年7月5日、日立造船は同社の子会社二社が製造した船舶用エンジンにおいて、燃費性能のデータを改ざんしていたことを発表しました。
この不正は1999年9月以降に出荷された1,364台のエンジンに関連し、実際の性能よりも高く見せるためのデータ改ざんが行われていました。
不正の詳細について、日立造船によると、子会社二社は顧客に提供する試運転の成績書において、一定の出力を達成するための燃料消費量(燃料消費率)を改ざんしていました。
ほとんどの出荷されたエンジンがこの不正に関与しており、出荷前の試験で顧客の要求に応じた燃料消費率を実現させるために、実際とは異なるデータを表示する装置を使用していました。
この問題を重く見た国土交通省は、日立造船とその子会社二社に対して、海洋汚染防止法に基づき、不正の詳細な解明と再発防止策の策定を命じました。
これらの報告は2024年8月末までに提出される予定です。さらに、7月8日以降、日立造船の工場に対して立ち入り調査を行い、船舶用エンジンに関連する証書の交付を停止することにしました。
この措置は、窒素酸化物(NOx)の規制順守が確認されるまで継続され、それまでエンジンの出荷はできなくなります。
また、この事件を受けて、国交省は他の船舶用エンジンメーカー19社に対しても、不正が行われていないかどうかの社内調査を行うよう指示しています。
これらの企業は2024年9月末までにその結果を報告する必要があります。
日立造船は現在、主力事業としてごみ焼却施設の建設および運営を行っており、かつての造船事業は手放しています。
この事件が、企業の信頼性にどのような影響を及ぼすかが注目されています。
《筆者の考察》
日立造船による船舶用エンジンの燃費性能データ改ざん問題は、1999年以降に出荷された1,364台のエンジンに影響を及ぼしていることが明らかになりました。
この長期にわたる不正行為は、日立造船とその子会社の2社によって行われ、顧客に提供される性能データを実際よりも高く見せるために改ざんされました。
これにより、国土交通省は不正の全容解明と再発防止策の策定を求め、日立造船は厳しい監視と調査の対象となっています。
〈問題の原因〉
1)技術的なプレッシャーと市場の競争:
日立造船とその子会社は、船舶用エンジンの市場において高い性能を求める顧客の期待に応えるため、性能データを改ざんするという不正行為に走った可能性があります。
この行動は、市場での競争が激しく、顧客を確保するためには、技術的な優位性が求められるためです。
2)内部監査と規制の不足:
不正が発覚するまでに25年間もの間、問題が見過ごされたことから、日立造船内部の監査体制に問題があったと考えられます。
また、国土交通省の監督機能にも問題がある可能性が示唆されており、定期的かつ効果的な監査が欠如していたことが不正を見逃す一因となっている。
3)文化と倫理規範の欠如:
長期間にわたるデータ改ざんは、企業文化と倫理規範の問題を浮き彫りにしています。企業が倫理的な行動を取ることを促す文化が確立されていなかった可能性があります。
〈再発防止策〉
1)内部監査体制の強化:
日立造船は内部監査体制を見直し、独立した監査部門を設けることで、不正行為を早期に発見し、防ぐ体制を整える必要があります。
また、エンジンの性能評価に関しては、第三者機関による定期的なチェックを導入することも有効です。
2)透明性の向上:
顧客との信頼関係を回復するためには、製造プロセスの透明性を高めることが求められます。
これには、性能データの公開や、不正が発覚した際の迅速な情報開示が含まれます。
3)教育と倫理規範の浸透:
従業員に対する倫理教育を徹底し、正直さと透明性を企業文化として根付かせることが重要です。
不正を行わないことの重要性を強調し、倫理的な判断ができる環境を整えることが必要です。
4)規制機関との連携強化:
国土交通省との連携を強化し、定期的な報告や監査を行うことで、規制機関としての監督機能を効果的に果たせるようにする必要があります。
このような再発防止策を講じることで、日立造船は再び信頼を築き、長期的な企業価値を保持することができるでしょう。
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