「ISO9001 活用モデル工事」という国土交通省の制度があります。

国土交通省の「通達」(「ISO9001 活用モデル工事の試行について」(令和元年8月27日

付 国官技第175号))に基づいて、作成された「ISO9001活用モデル工事試行マニュアル(案)」によれば、この制度の目的は、

『ISO9001 認証取得を活用した監督業務等の取扱いの対象工事(ISO9001 活用モデル工事)において、受発注者双方の業務を対象として実施する監督業務の方法及び受注者の品質マネジメントシステム運用状況を把握するための方法を示すこと』

だそうです。

 

・・・国土交通省が出している文章がわかりにくいので、このマニュアル(ISO9001活用モデル工事試行マニュアル(案))を読んでも、正直、よくわかりません。

おそらく、目的は、

・発注者(国や自治体)の監督業務とISO認証機関の監査業務の所掌を明確にする

・所掌を明確にすることで2重チェックや2重の文書類作成をなくし効率化を図る

ことが狙いでしょう。

自分の頭の整理も兼ねて、下記に「ISO9001活用モデル工事試行マニュアル(案)」の要点をまとめてみます。

 

《注意点》

国土交通省によれば、

『「ISO9001 活用モデル工事」とは「ISO9001 活用モデル工事の試行について」(平成 29 年11月15日)により試行をしているもので、「工事における ISO9001 認証取得を活用した監督業務等の取扱について」(平成16年 9月1日)により運用している制度とは異なることに留意する』

と明記されています。

 

《対象工事と適用工事》

対象工事は、「一般土木工事」、「アスファルト舗装工事」、適用工事は、令和3年4月1日以降に契約手続きを開始する工事及び、既に契約済みの工事から、施工状況等を勘案して選定するそうです。

※低入札による重点監督対象工事は適用しない

※「施工プロセスを通じた検査の試行について(平成22年3月29日付け)」及び「施工者と契約した第三者による品質証明の試行について(平成25年2月28日付け)」は適用しない

 

《ISO9001 活用モデル工事の試行の目的と概要》

・公共工事の品質確保と効率化について、QMSを積極的に活用する

・運用にあたっては、第三者機関(ISO 認証審査登録機関)の監査を取り入れる

・受注者のQMSに基づく検査記録等を活用して監督業務の確認等に置き換える

→筆者注:工事の品質確保と受発注者双方の業務の効率化を図ることが狙いのようです

 

《モデル工事の試行にあたり第三者機関との協議》

・選定された適用工事については、受注者と第三者機関との間で契約する

・受注者は、第三者機関との間において発注者側と同等の監査体制を確保する

・受注者と第三者機関相互に確認のうえ、契約書の写しを発注者に提出する

・発注者が確認する項目、第三者機関が監査する項目を予め確認しておく

・受注者は、第三者機関が作成する報告書の内容を確認しておく

 

《ISO9001 活用モデル工事の内容》

◆発注者による受注者の品質マネジメントシステムの把握 ・品質マネジメントシステムの把握

→筆者注:発注者は、工事着手前に施工計画書に記載された品質計画を把握する

・品質計画書の提出

→筆者注:受注者は、当該工事に係る品質計画書を作成し工事の着手前に提出する

マニュアルでは、品質計画書は、施工計画書と統合して作成することができるなど、「文書類の二重の作成」をしないことが明記されている

・品質計画書に記載する内容

→筆者注:「品質方針及び品質目標」、「検査計画及び確認・立会(指定工種のみ)計画」、「各監視・測定(検査)の担当者及び承認者、資格」、「当該工事における内部監査計画」、「監視機器及び測定機器管理計画」、「トレーサビリティ管理計画」、「不適合管理計画」、「外部委託(協力会社)に対する管理計画」を記載することが明記されている

・受発注者間の協議

→筆者注:発注者は、記録の提出について受注者に過度の負担とならないことが明記されている

・監査の実施範囲

→筆者注:受発注者及び第三者機関の役割分担を明確にするため、受発注者間の協議で

監督職員が確認する事項として定められた項目については、第三者機関による監査対象とはしないことが明記されている

 

◆第三者機関による監査の実施

・第三者機関による品質マネジメントシステムの監査

・第三者機関による監査の頻度

→筆者注:受注者は、当該工事のQMSについて、工事着手の当初段階及び工事施工中において、書類監査及び施工中監査を受けることが明記されている

工期が複数年度にわたる場合は、施工中の監査の間隔が概ね1年以上とならないように、計画的に実施することが明記されている

・品質マネジメントシステムの運用状況の監査

(以上が、マニュアル案の要点)

 

この制度について、整理して気になった点は、

「第三者機関(ISO認証機関)が組織と契約を締結し、受注工事に関する監査を実施した場合、その結果がコンサルティングの提供とみなされる内容になっていないかどうか」です。要は、ISO/IEC17021-1:2015の公平性に懸念が出ると思います。

認証機関は、

・審査員に対する公平性のリスク分析の実施状況(公平性に問題がないこと)

・該当工事に関する監査結果にコンサルティング内容が含まれていないこと

を認定機関に示せるようにしておく必要があるでしょう。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ820号より)

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