ビジネスにおいて「後発」組織は、これまでと違った特色を出すしかないでしょう。

また、もうひとつ重要なのは、知名度です。

同業他社と比較して、特色が出ても、知名度がなければ、たまたま、組織と関わった人は「へぇ~、それはすごい!」と理解しても、世間一般からは、スルーされるだけです。

 

大学経営ビジネスの場合、私の学生時代から、「今後の日本は、少子化が進むので、学校経営は冬の時代になる」といわれていました。

しかし、四年制大学の数は、どんどん増えています。

 

文部科学省のデータによれば、「大学数」と「学生数」、「学生数に占める男性比率」は、

1950年:201校、22万人、92%

1960年:245校、63万人、86%

1970年:382校、141万人、82%

1980年:446校、184万人、78%

1990年:507校、213万人、73%

2000年:649校、274万人、64%

2010年:778校、289万人、59%

2020年:795校、292万人、56%

となっています。

 

予備校や大学受験誌は、早慶上理、GMARCH、関関同立、日東駒専、大東亜帝国などと大学を序列化するので、なかなか、新興勢力は目立つことができません。

ノーベル賞は、文学賞や平和賞、経済学賞以外は、理工系学者に与えられる賞ですが、受賞までに何年も掛かるし、優秀な学者や研究機材に掛かる投資と比較してリターンは、宝くじレベルです。

 

そうなると、卒業生の上場企業就職率、国家資格取得数や取得率、公務員試験合格者数や合格率、教員採用試験合格者数や合格率・・・といった点で、突出した実績を上げて行くのが、王道です。

例えば、1993年開学の会津大学コンピュータ理工学部は、全世界から教員を募集し、開学当初は、教員82人のうち、48人が外国人教員で占められ、現在も、全ての学位論文において、英語での執筆および学内での発表が義務付けられており、それが特色となって、就職内定率はほぼ100%と企業から高い信頼を得ています。

 

それ以外の方法で知名度を上げる「定番」は、スポーツ。

日本人は、大学スポーツとして、大学野球や大学サッカー、ラグビー、駅伝などは、伝統的に関心が高いため、これらの競技で活躍すれば、メディアが必然的に取り上げてくれるので、知名度は上がります。

 

話は少し逸れますが、コンビニエンスストアのファミリーマートに入ると、定期的に「帝京平成大学のCM」が流れています。

「帝京大学のここがすごい・・・」というフレーズは、多くの人が、一度は聞いたことがあると思います。

 

私は、自動車の運転免許を合宿で取得し、同期生に、帝京平成大学(当時は、帝京技術科学大学)の学生がいたので、開学時から大学名は知っていましたが、ファミリーマートで流れているCMを初めて耳にしたときは「何かの企画、キャンペーン?それともギャグ?」と少し「イロモノ」的に捉えていました。

しかし、冷静に考えると、斬新な「知名度アップ戦略」です。

 

調べてみると、帝京平成大学は、現在、5学部18学科を有する医療系を中心とした実学に特化しています。

しかし、帝京平成大学は、「帝京大学グループのいち大学」なので、どうしても、「帝京」=「帝京高校の野球やサッカー」、「帝京大学のラグビー」の陰に隠れて目立ちません。

 

したがって、スポーツで実績を上げる戦略よりも、「国家資格取得」に力を入れる経営方針なのでしょう。

例えば、国家試験の合格者数は全国屈指で、例えば、2020年の実績は、柔道整復師、はり師、きゅう師が全国1位、そして作業療法士と理学療法士が全国2位という実績を残しています。

 

ただ、司法試験や医師国家試験は、メディアも大々的に取り上げますが、その他の国家資格は、自ら宣伝するしかありません。

そこで、若者をはじめ、現代社会においては、年齢層を問わず利用する「コンビニ」を宣伝の場に選んだのでしょう。

現在では、ショート動画のTikTokに、帝京平成大学のCMのナレーションを真似する人などがあふれ、メディアでも、今回のナレーションは声優の○○さん、というように、時事ネタとして報道されるようになっています。

こうした点を捉えると、この広報戦略は成功でしょう。

今後は、「国家資格を取得し、手に職を付けて、手堅く人生を歩みたい」と考える学生層に支持され、進学を目指す人が増えれば、少子化の時代の大学経営としては、万々歳でしょう。

 

ちなみに、帝京平成大学学長の冲永寛子氏は、東京大学医学部卒の才女で、学長に就任した当時は、33歳(現在は、48歳)で、大学野球では、2021年に千葉県大学野球連盟から東都大学野球連盟に移籍し、東都大学野球連盟としては、63年ぶりの新規加盟校として話題になるなど、やり手の経営者のイメージがあります。

今後の帝京平成大学の経営動向に注目です。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ832号より)

 

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