組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。
このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。
今回のテーマは、「OHSMS認証審査における組織の有効要員数」について。
OHSMS認証審査(ISO45001)の場合、これまでのOHSAS18001との違いで、組織から「なんとかなりませんか」といった質問が多く寄せられるものに「認証組織の有効要員数」があります。
端的に言えば、QMSやEMSと比較して、「有効要員数」が、相当、増えてしまうのです。
以下に、有効要員数に関する認定基準(IAF MD5)を引用します。
(以下、MD5より引用)
1.9 有効要員数
有効要員数は、各シフトの要員を含む、認証範囲内に関係するすべての要員(常勤、臨時及び非常勤)からなる。認証範囲内に含まれる場合、これには非常傭の者(例:請負者)も含まなければならない。 OH&SMSについて、有効要員数には、組織の管理下又は影響下にあり、組織のOH&SMSパフォーマンスに影響を与え得る、労働又は労働に関わる活動を行う請負者及び下請負者の要員も含まなければならない。
(引用、ここまで)
有効要員数は、基本的に、審査工数に大きな影響を与えます。
すなわち、組織の立場で捉えれば、「認証費用がQMSやEMSと比較して相当高くなる」可能性が高いのです。
なぜ、有効要員数が、他のMSと比較して、多くなるのかと言えば、「組織の管理下又は影響下にあり、組織のOHSMSのパフォーマンスに影響を与え得る、労働又は労働に関わる活動を行う請負者及び下請負者の要員も含まなければならない」ためです。
わかりやすい事例を挙げれば、建設現場です。
大規模な橋やトンネルを建設する、超高層ビルを建てる、といった建設現場の場合、その現場の組織要員は数十人であっても、一次下請け、二次下請け・・・と「組織の管理下、影響下にある要員」は、数千人規模になります。
現状、日本の法律で考えると、元請の場合、孫請け、被孫請けなど末端の工事業者まで、労働災害が発生した場合、責任が生じます。
もちろん、「有効要員数としてカウントする請負者の算出」について、製造業における工場内の構内外注者と違って建設業の場合は、「工事の進捗状況によって管理対象の人員が異なる」ので、「工期全体の平均でカウントする」、「訪問時に入構している請負者でカウントする」など、認証機関は、有効要員数のカウントを工夫していますが、それでも、相当な人数になります。
(以前のコラム(2021年7月20日付): http://blog.logcom.jp/?day=20210720 )
正直な所、私見ですが、労働安全衛生の場合、規格が要求するように、「組織の管理下、影響下にある要員」は、審査対象とすることは必要であっても、審査工数は、QMSやEMSと同等レベルになるよう、審査工数基準を設定するべきだと思います。
感覚的には、建設業の場合、前記したような「超巨大プロジェクトの構造物建設」で考えると、いたずらに審査工数が増えるだけだと思います。
OHSMSに関しては、この「有効要員数」が、ネックになり、認証サービス開始や取得に二の足を踏む認証機関や組織が多いように思います。
つまり、OHSAS18001時代と比較して、労働安全衛生マネジメントシステムに取り組む組織が減り、増えていないのです。
話題は少し逸れますが、OHSMSについては、一部の外資系機関が、「有効要員数」の算出がアバウトで、ちゃんと算出している機関との審査費用が倍近く差が出ているという話も良く耳にします。
また、OHSMSについては、発注者(特に自治体)が、「認定された認証でなくても良いです」という方針を打ち出しているケースも多くなっています。
要は、「認定の価値が低下」しているのです。
認定機関は、各国の認定機関ともっと連携を取り、「認定された認証の価値」が地盤沈下しないような活動をしなければ、早晩、認定認証制度はなくなってしまうのではないかと思います。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ810号より)
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