組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。
このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。
今回のテーマは、「ISO22003-1:2022について」について。
国際連合世界食品安全の日(2022年6月7日)のイベントに併せてISO 22003-1 / ISO 22003-2 が発行されました。
以下に、ISO22003-1及びISO22000関連の現時点の動向を整理しておきます。
《ISO22000:2018の動向》
・2021年5月の「ISO 22000:2018 実践ガイド」発行(翻訳版は2021年10月)以降、ISO 22000 に関する動きは確認されていません
・2023年は、ISO22000の発行から 5年目の定期見直しの時期ですが、現状、ISO / TC 34/ SC 17専門分科会内で見直しの話題は挙がっていないそうです
・2022年11月3日に約3年ぶりに対面開催されるISO/TC 34/SC 17 年次会合で動きがあるか注目です
《ISO22003-1への移行について》
・ISO/TS 22003:2013 からの移行及びIAF MD16 改定について、現時点で、IAFからの発表はありません
・認定機関(JAB)は、MD文書発行後に、ISO22003-1の移行要領を発行するようです
《ISO22003-1の改訂概要について》
・2019年10月に実施されたTomorrow ISO22003シリーズの概念が踏襲され、前文にISO/IEC 17065 と併せて使用するISO 22003-2 と連携して作成されたことが明記された
・第9.1.5.2項で定められている「Multi-site」適用の条件が厳しくなった
・(旧)TS 22003:2013 では3つの要件のみ示されていたMulti-site を適用する場合の要件が10の要件に増加した
⇒ 食品製造は要員・資材の相違に影響を受けやすいことから同事業者でも事業所ごとの認証取得を求める流れと同じ
・マルチサイトサンプリングの適用についても項番が減少した
・カテゴリAとカテゴリB(一次産業)につては(旧)TS 22003 で適用されていた「20サイト未満は全事業所を毎回審査する」から「全ての事業所数から√x 数(切り上げ)サンプリングで抽出する」に変更になった
・カテゴリE/F/G については(旧)TS 22003 同様「20サイト未満は全事業所を毎回審査する」
・25%はランダムサンプリングでのサイト指定が求められている
・最低審査工数(Table B)が概ね微増となった
・基本のサイト審査最低審査工数に(旧)TS 22003 で要件の一つとしていた「認証された関連するマネジメントシステムがない場合の審査日数(TMS)」=0.25 が項目としては削除され,代わりに工数が「基本現地審査工数」に付加されたようにも読み取れる
◆主要変更点のまとめ
・規格が、TS(Technical Specification)からIS(International Standard) に変更した
・ 製品認証への適用は(旧)22003 付属書Eから分化してFSS(Food Safety System:食品安全システム)となり、FSMSの2規格構成(ISO 22003-1 / 22003-2)として共に初版として発行
・複数サイト組織が定義され、中央機能を持ち同じシステムで管理されることが要求された
・これまでの複数サイト(マルチサイト)よりも厳しく定義している
⇒ サイト毎の認証登録を示唆
・複数サイトサンプリング数の見直しが行われた
・Category A / B(一次産品)はTS:2013 時より減少
・食品製造,新設Category( C / D,H / I / J / K )はサンプリング未適用(旧版と同様)
・Category E / F / G のサンプリングはTS:2013 と同様(20以下は全サイトを審査)
・Food Chain Category (付属書A.)がFood Chain Category, GFSI BRs 2020.1 Part 1 に寄せて更新(Category H / I / J / K :ペスト管理・包装材製造・施設製造・添加物製造;追加など)
・審査最低工数の設定(付属書B.)が見直され,基本現地審査工数が概ね微増
・要員の力量要求事項(付属書C)数が増加(10 ⇒ 23)
私見ですが、「事業所毎の認証」というのが、どうも一部、しっくりきません。
その理由は、ISO22000:2018以降、規格の構造上、組織の状況(内部・外部の課題)やリスクと機会、利害関係者のニーズ及び期待や食品安全文化・・・といったことが経営者インタビューで確認されるようになりました。
しかし、「認証は事業所毎」なので、結果的に、経営者インタビューは「事業所の経営層=工場長など」へのインタビューなので、迫力がないのです。
要は、工場長では、上が決めた予算内で事業を運営する責任が与えられているのみなので、組織そのものを取り巻く事業環境を考慮した経営計画についてインタビューしても、得られる回答は、ごくわずかです。
「事業所毎の認証」という考えは理解できますが、事業所単位のFSMS(食品安全マネジメントシステム)では、「認証範囲外の上層部から与えられた資源の中で、できる限り安全な食品づくりを頑張ります」としか見えてこないので、このあたりがどうもモヤモヤする次第です。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ816号より)
【好評発売中!】
『事例で学ぶコンプライアンスⅠ』
(トータルEメディア出版)
事例で学ぶコンプライアンス Ⅰ | TEM出版書店 (total-e-media.jp)
事例で学ぶコンプライアンス | 有賀正彦 |本 | 通販 | Amazon
『できるビジネスマンのマネジメント本』
(玄武書房)
https://www.amazon.co.jp/dp/4909566066/
【よかったらメルマガ読者登録お願いします♪】↓
(パソコンでアクセスしている方)
http://www.mag2.com/m/0000218071.html
(携帯でアクセスしている方)
http://mobile.mag2.com/mm/0000218071.html
Twitter:https://twitter.com/ariga9001