組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。

 

このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。

 

今回のテーマは、「変化の捉え方とマネジメントシステムへの影響」について。

 

ISOマネジメントシステム認証審査では、毎回の審査で必ず確認するべき事項があります。

一般論ですが、ISOマネジメントシステム認証は、有効期間が「3年サイクル」なので、初回審査(登録審査)の審査工数を1としたら、サーベイランスは「1/3」、再認証(更新)審査は「2/3」の工数となります。

したがって、基準上は、フルスペックで審査するのは、「3年に1度」ですが、例えば、認証範囲、対象要員数、シフトの状況、システム変更、ロゴマークの使用状況や認証の引用、審査報告書の利用・・・などは、「毎回必須の審査項目」なのです。

 

これらの確認方法は、認証機関や担当審査員によって様々ですが、一般的には、管理責任者、あるいはISO事務局に対する審査の中で「前回審査以降に変化した点はありますか?」と聞き取りしていることが多いと思います。

 

認証機関の審査が基準に「適合しているか、不適合か」の「二分法」で評価するなら、

・認証機関:前回以降、変化(変更)した点はありますか?

・組織:特に変更した点はありません

といったやり取りがあれば、「適合」と判断せざるを得ません。

 

しかし、「果たして、このような審査員と組織のやり取りだけで、有効な審査と言えるかどうか」という点で考察すると、「懸念される点がたくさんあって、諸手を上げて適合とは言い難い」と言えるのではないでしょうか。

 

例えば、現在のマネジメントシステム審査(共通要素を採用したマネジメントシステム)では「適用範囲や認証範囲内ありき」の審査ではなく「組織が置かれた状況を把握・理解し、その企業の事業全体の状況から適用範囲を決めて、組織の適合性を評価する」という審査です。

したがって、例えば、経営者インタビューで「東京五輪が終わり、新型コロナの影響もあり、インフラ需要が落ちているので、新規顧客開拓や新規の製品開発提案を今年はしている」といった話題があったとします。

この時に、審査員が考えることは、

・新規の受注はあったのか

・新規製品は、これまでの認証範囲をカバーするのか

・新規顧客開拓に伴い各担当者に新たな力量は生じていないか

・新規製品の製造に伴い新たな設備や製造手順書の追加はあったのか

・増産しているとしたら、スタッフの新規採用やシフト体制に変更はあったのか

・・・

といった点に目を向ける必要があります。

 

結果的には、「これまでの認証範囲(表記内容)に包含されるもので、技術的にも新たな力量や手順の必要性は生じていない」という結果(※マネジメントシステムの変更の必要性はなかった)かもしれませんが、それを確認するのが、毎回の審査で審査員がするべきことなのです。

 

よく、この手の話をすると「システム変更を申請するのは組織の責任だから」(システム変更届が提出されていないから変更点はないという理屈)と反論される認証機関や審査員がいますが、これは、明らかな認識の誤りです。

繰り返しになりますが、「組織が置かれた状況を把握・理解し、その企業の事業全体の状況から適用範囲を決めて、組織の適合性を評価する」のが現在のマネジメントシステム審査なので、組織の状況に変化があり、現在の適用範囲が適切ではない(可能性がある)、あるいは、そしてシステム変更に相当する事象が生じている(可能性がある)のなら、認証機関は少なくともそれを組織に確認し、どのように判断したのか、明確に示す必要があるのです。

 

共通要素を採用したマネジメントシステム認証が、おおよそ2015年以降の標準になりました。

しかし、以前からの審査スタイルが抜けず、どうも、このあたりの共通要素規格の建て付けを理解していない方が一部に、まだまだ多く存在するな、と思います。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ779号より)
 

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