2022年1月8日付の福島民友新聞が、
「いわき工場事故「粉じん爆発」と結論 火花着火、連鎖し拡大」
という見出しの記事を報じていました。
記事によれば、(※筆者が一部編集)
◆堺化学工業湯本工場の亜鉛製造工場建屋で2021年5月11日に爆発事故が発生した
◆この爆発事故で、協力会社の男性従業員4人が重軽傷を負った
◆堺化学工業は、この事故を受け、亜鉛粉末事業から撤退した
◆いわき中央署が業務上過失傷害、いわき労働基準監督署は労安法違反で立件検討している
◆調査委員長の中村昌允東京工大特任教授らは1月7日にいわき市で記者会見した
◆「異常振動時に自動停止するシステム導入や点検回数の増加、監査の徹底が必要だ」と指摘
◆堺化学工業の管理本部長は「調査内容を重く受け止め再発防止策に動いていきたい」と話した
◆工場内では、防さび塗料の材料に使われる亜鉛の粉末などを製造していた
◆「分級ファン」の羽根に亜鉛の固まりが固着し、装置起動時にはがれ落ちた
◆その影響でファンの回転軸がずれ、部品の金属同士の接触による振動や火花が発生した
◆「マルチサイクロン」に残った粉末が配管を通じて装置全体に拡散して粉じん濃度が上昇
◆粉末がファン内で高温の火花に着火し、集じん機や分級機セパレーター、マルチサイクロンで連鎖的に爆発を起こし、被害の拡大につながった
◆マルチサイクロンの一部には詰まりがあり、当時は710キロの粉末が残っていた
◆残った亜鉛粉末は、作業工程に影響がないとして数年前から放置していた
◆分級ファンについては事故の5カ月前の定期点検で異常がなかった
・・・
ということだそうです。
堺化学工業のWebサイトをチェックすると、トップページの最新情報として「湯本工場の爆発・火災事故に関するお知らせ」として、「湯本工場の爆発・火災事故に関するお知らせ(第九報)
事故調査委員会の報告書について」という書面が掲載されていました。
記事に掲載されていた内容と調査委員会の再発防止策から、簡単に爆発の状況を類推すると、
・分級ファンの回転軸が、ファンに付着して固まった亜鉛がはがれ落ちてずれた
・ファンの回転軸のずれにより金属部品同士が接触し、火花が発生した
・装置内に残った亜鉛粉末がたまり、装置内に拡散し粉塵濃度が上昇した
・装置内の各機器(集塵機、分級機セパレーター、マルチサイクロン)が爆発し被害が拡大した
ということでしょう。
素人見解ですが、
・原料や装置の特性上、分級ファンに亜鉛が付着するのは、現状仕方がない
・分級ファンに付着した亜鉛がはがれ、回転軸がずれた際に、検知できる仕組みが必要
・装置内にたまった亜鉛粉末を定期的に除去(清掃)する仕組みが必要
・分級ファンの定期点検頻度と点検項目・内容の見直しが必要
といえるでしょう。
責任問題という点では、
「装置内に残った亜鉛粉末は、作業工程に影響がないとして数年前から放置した」
ことを承認したのは、組織に誰なのかという点になるでしょう。
法律的には、おそらく、一義的な、「業務上過失傷害」や「労働安全衛生法違反」の責任は、「この装置内の亜鉛粉末除去を放置することになった決定者」が負うことになると思います。
しかし、その「決定者」も組織上層部からのプレッシャーがもしあったとするならば、刑事責任は問えなくとも、道義的には、組織の経営層にも問題はあると言えるのかもしれません。
また、ふつうに考えれば、組織は、「作業者の安全」、「事故の発生」、「近隣住民に対する環境影響」などよりも「装置のメンテナンスや点検よりも作業効率や生産納期を重視した」わけで、今の時代は「コンプライアンス経営」が求められているので、こうした認識や判断が甘かった、ということになるでしょう。
それにしても、気になるのは、記事に、「堺化学工業は、この事故を受け、亜鉛粉末事業から撤退した」と報道されていることです。
堺化学工業は、品質マネジメントシステム規格(ISO9001)の認証を全社的に取得(認証機関は、日本化学キューエイ株式会社(JCQA))していて、認証範囲には、
(※JABのWebサイトより引用)
[小名浜事業所 湯本工場]
福島県いわき市常磐岩ケ岡町沢目1番地の1
(1)酸化亜鉛、亜鉛末の製造
(引用ここまで)
と「亜鉛末の製造」が認証範囲として残っています。
登録証の有効期限(2023年4月11日)から類推すると、2021年の審査は、定期審査で、爆発事故の発生前に実施されたものと思います。
しかし、組織が、亜鉛粉末事業を表明しているのであれば、爆発事故そのものや社会的な影響度を考えて、なんらかの対応を取るべきではないものか、と思います。
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