2021年10月28日付で時事通信社が、

「トンネル崩落「肌落ち」発生か リニア新幹線、工事中断 JR東海」

という見出し記事を報じていました。

 

記事によれば、(※筆者が一部編集)

◆トンネル工事の崩落事故は10月27日午後7時20分ごろ発生した

◆発生場所は、作業員が出入りする非常口用トンネルを約70メートル掘り進めた所

◆爆薬を使った発破作業の後、岩石がはがれ落ち、死亡した作業員の足が巻き込まれた

◆別の作業員が救出に向かったところ、周囲で再び崩落が起きた

◆このトンネルは、リニア中央新幹線の瀬戸トンネル(岐阜県中津川市)

◆リニア中央新幹線の工事で死者が出たのは初めて

ということだそうです。

 

厚生労働省のWebサイトによれば、

「山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に係るガイドライン」

が、平成28年12月に公表され、平成30年1月に、その後の肌落ち災害の発生状況を踏まえ、ガイドラインが改正されているそうです。

このガイドラインの背景として、

・山岳トンネル工事では、労働災害がたびたび発生している

・岩石の落下等(肌落ち)の災害では、6%が死亡し、42%が休業1ヶ月以上

という現状があったからだそうです。

 

このガイドラインでは、「事業者が講ずることが望ましい事項」が定められており、

・切羽への立ち入りを原則禁止

 →切羽での作業は可能な限り機械化

・肌落ち防止計画の策定、実施、変更

 →肌落ち防止対策、切羽の監視、切羽からの退避

・切羽監視責任者の選任

 →常時監視する切羽責任者の選任等

・具体的な肌落ち防止対策

 →切羽変位計測、設備的防護対策、湧水の状態、施工等を勘案した肌落ち防止対策

などを事業者は、策定することになっています。

 

ちなみに、この瀬戸トンネル(瀬戸工区)の概要は、以下の通りです。

・事業体:JR東海

・工事名称:中央新幹線瀬戸トンネル新設工事

・工事概要:トンネル工事(本線トンネル約4.4km、非常口(斜坑)等含む)

・工期:2018年8月8日~2026年6月(着工:2019年1月~)

・中央新幹線瀬戸トンネル新設工事共同企業体

((株)奥村組、(株)淺沼組、TSUCHIYA(株)JV)

 

詳しくはわかりませんが、「施主」と「施工会社」の関係は、前者が「JR東海」、後者が「中央新幹線瀬戸トンネル新設工事共同企業体(JV)」ということになると思います。

つまり、この厚生労働省のガイドラインが指す「事業者」は、施工会社であるJVになります。

報道では、JR東海の幹部が記者会見で頭を下げる映像がクローズアップされていますが、「肌落ち防止対策」に関する直接的な責任は、JVでしょう。

したがって、JVは、このガイドラインに則った施工計画書を作成していたことと、その手順が順守されていたかどうか、及び手順の有効性の検証と施工計画書の見直しや今後のトンネル工事における再発防止をしっかりとやってもらう必要があります。

 

個人的に気になるのは、「崩落事故の時間帯」です。

この現場の作業体制が交代制(シフト制)という可能性はありますが、事故発生時刻が19時を過ぎており、「そんなに遅い時間まで工事をやっていたの?」と疑問に思いました。

発注者であるJR東海の施工会社への工期要求が適切だったのか、プレッシャーを掛けるようなことはなかったのか、についても事故調査においては、検証が必要でしょう。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ774号より)

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