仕事の仕組みがうまく改善されて、スタッフの力量がほどよく向上されるためには、変な話ですが、トラブルがあったほうがいいといわれています。

例えば、製造業で、作業手順が確立している場合、トラブルが発生しないと、作業手順通りに仕事を進めることが当たり前になります。

管理者としては、問題が出なければ、ひとまずある意味「安心」ではあります。

しかし、「もし、トラブルが発生したら、スタッフは対処できるのだろうか?」と逆に心配になるのです。

 

現場管理者のみなさまと話していると、ニュースになってしまうような大事故や重大な品質トラブルは、発生して欲しくないが、そこまでの問題にはならないトラブルは、少しは発生して欲しいんですよね、と言われます。

装置産業の業務では、各種の製造パラメーターを監視していますが、異常値が発生すれば、機器の不具合なのか、投入原料の問題なのか、人為的な作業ミスなのか・・・といったことを担当者は考え、問題の原因を調査して、事態を復旧させなければなりません。

ただ、こうした活動をすることで、この手の問題が起きたときは、このあたりがおかしいはずだ、という経験値が積み上げられ、ノウハウとなり、力量は向上し、作業手順書の見直しにつながるわけです。

 

少し話はそれますが、火災訓練など緊急事態の想定訓練を組織は定期的に実施します。

この目的は、

・想定した緊急事態に対する手順が実行できることを確認する

・緊急事態の手順の妥当性があることを検証する

ことにあります。

 

いわずもがなですが、日常的な業務手順は、通常の仕事を日々実施していく中で「手順の実行訓練」と「手順の妥当性」が「自然と確認できる」わけです。

しかし、緊急事態は、滅多に起きないし、起きたことがないから、「発生した場合を想定して手順が決められている」のですが、そのため「手順を実行する機会がない」から「その手順が周知されていて、本当に実行できるか、また手順に問題がないか」がちゃんと確かめられていないのです。

だから、定期的に、緊急事態を模擬的に発生させるか、発生したと仮定して、訓練を実施するのです。

例えは、悪いですが、自衛隊の軍事訓練も、常日頃から税金を使って実施していなければ「いざというとき」に有事に対して何も対処できないことになってしまいます。

 

そのようなわけで、マネジメントシステム監査で、いろいろな組織に訪問しますが、事故事例や品質異常事例、設備・機器のトラブル事例が「この1年間、ほとんど発生していません」という組織があったとすると、それを鵜呑みにすれば、監査は表面的には楽ちんです(笑)

ただ、そのようなときは、

「問題発生時の解決能力(手順や力量の妥当性)があるのか」

「問題検出能力がちゃんとあるのか」

「問題が現場レベルで処理されていて表に出ないようになっていないか」

といったことをちゃんと調べる必要があります。

 

組織は生き物です。

つまり、働く人も常に同じメンバーで仕事が回っているわけではありません。

「問題が発生していない」場合、それ自体は、よいことではありますが、スタッフの力量向上という観点では、プチトラブルが発生していないと、いざというときに余計に問題が大きくなってしまう可能性がある、ということを管理者はよく理解し、認識して業務マネジメントをしていく必要があるのです。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ567号より)
 

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