組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。

 

このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。

 

今回のテーマは、「審査報告書のコピペ」について。

 

またまた、回顧録になってしまいますが、私がマネジメントシステム審査を始めた1994年頃の現地審査で検出した指摘(不適合や観察事項など)や審査報告書は、「手書き」でした。

しかも、指摘は、今なら「指摘リスト」と「是正処置要求書」が分かれている機関が多いですが、当時は「1件1葉」で指摘を起票です。

したがって、当時の認証審査は、現地審査における指摘が多かったので、不適合報告書(兼是正処置要求書)は、10枚以上になっていました。

 

当時の現地審査最終日に組織に報告する審査報告書は、手書きだったので、私の手元には当時の資料が一切なく、記憶の限りですが、確か、2ページ程度の本文に、現地で検出した指摘を添付とした審査報告書を組織に渡していた記憶があります。

今の時代なら「2ページ程度の本文って楽だな」と思うかもしれませんが、「手書きの2ページ」は、結構、大変なのです。

・組織名

・認証範囲

・認証基準

などは予めワープロ(当時、私が在職していた機関はワープロソフトの一太郎でした)でタイピングしておきますが、現地審査を通じて変更があれば、修正液で修正していましたし、その他、全体所見やトップインタビュー、部門審査概要は手書きなので、なかなか大変です。

今振り返ると、審査をしながら、頭の中で「こういう風にまとめよう」とイメージしながら審査していたので、手書きの場合は、「頭の中のイメージを一気に吐き出し書き上げる作業」だったように思います。

 

その後(1990年代後半)、審査現場に持ち運びできるノートパソコンが普及し、現地審査指摘や審査報告書は、ノートパソコンで作成し、USBメモリーで組織に受け渡しする時代がしばらくあり、その後情報セキュリティの問題で、メール形式での受け渡しに変遷していきました。

 

さて、話の本題が「審査報告書のコピペ」に移りますが、以前は多くの認証機関で「審査報告書作成費用」をしっかり組織に請求していました。

しかし、2000年代の認証機関の熾烈な顧客獲得合戦で、認証審査費用が徐々にディスカウントされていきました。「審査報告書作成費用」を請求科目から削除すると、そのしわ寄せは、契約審査員にも響いてきて、本来、競合他社との価格競争で値引きした費用なのに、その値引き分を契約審査員報酬でまかなう機関が出てきました。

そうなると、審査員も「できるだけ審査報告書作成時間」を省いて作成したくなるのが本音です。

するとどうなるかと言えば、「別の認証審査で作成した審査報告書を流用しての報告書作成」です。

 

一時期、どこの認証機関でも「別の認証審査報告書の流用が原因の誤記」がはやりました。

その結果、多くの機関は、「別の報告書の流用禁止」や「審査報告書作成対価をしっかり払う」という対応をしました。

しかし、組織名や審査固有の識別番号、その組織固有の所見は、ちゃんと最初から書かれていますが、「現地に訪問して審査した人間でなければわからない事項」は、意外と別の審査報告書がコピペされているケースが、まだ、たまにあるな、と思います。

 

定型的な文面のコピペは、悪いことではないのですが、例えば、アウトソースの管理、設備管理、薬剤の管理・・・といったところは、同様の業種の審査報告書をコピペしても、訪問していないレビューアーが、審査報告書の内容をチェックしてもなかなか気づきません。

このような話は、審査員の検証審査などで、認証審査に参加しない機関の人が同行するか、認定機関の審査で、組織の状況と審査報告書を検証することでしか気づけない問題ですね。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ726号より)

 

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