組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。

 

このISOマネジメントシステムについて、最近、個人的に気になっている点を備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。

 

今回のテーマは、「ISOマネジメント審査回顧録(文書と実態)」について。

 

ISOマネジメントシステムの審査(内部監査、二者監査、第三者審査)に関わったことがある方なら「常識」ですが、審査において、審査証拠を収集し、ISO規格に対する適合性を評価する場合、いくつかの原則があります。

例えば、

◆審査証拠は、適切なサンプリングによって入手し、検証しなければならない

◆情報の入手方法には、「面談」、「プロセス及び活動の観察」、「文書類のレビュー」がある

といった点です。

 

日本において、1990年代前半は、ISOマネジメントシステム審査の「黎明期」ともいえますが、当時の審査は、「情報の入手」に関しては、断然「文書類のレビュー」の比率が高かったと私は認識しています。

 

私自身の「懺悔」も含めて振り返れば、審査対象の組織に訪問する前に、品質マニュアルや各種規定、手順書を事前に取り寄せて、文書間の不整合箇所をあらかじめ、チェックしておき、実際に組織に訪問すると、不整合箇所を追求するような審査手法をとっていました。

当然、「会議室での審査時間」が長くなり、製造業における2日間の審査だった、結果的に、「半日程度しか製造工程を訪問しなかった」ということもざらでした。

 

その後、コンサルティングファームに転職したのですが、「業務改善コンサルタント」の基本は「現場主義」です。

しかし、私は「文書を基本にチェックする習慣」が抜けず、先輩コンサルタントから「まずは、製造現場そのものをみなければ、改善のタネは見つからないよ」といわれて、ハッとした次第でした。

 

私だけでなく、おそらく、1990年代の認証機関の審査員の多くは「文書類のレビューによる規格適合性の評価」を主体にしていたのではないかと思います。

こうしたことで、組織は「審査をパスするためには、文書間の整合性や規格要求事項にマッチした規定や記録作り」をしっかりやることが「ISO審査対策」と自然と認識されるようになっていきました。

その結果、「ISO審査用に準備した文書や記録」と「実際の業務管理上の管理手順や記録」とのずれが生じる、いわゆる「二重帳簿状態」になっていった気がします。

 

ISO9001(品質マネジメントシステム)の2000年版規格が発行されたあたりから、プロセスアプローチという概念がようやく、多くの審査員に浸透しだしました。

したがって、文書類だけでなく、製造現場を始め業務プロセスが実際に実施されている現場を訪問し、インタビューしながら、業務自体を観察して、実際に現場で使用されている検査基準・記録や設備点検記録、ホワイトボードに書かれた朝礼時の周知記録などを確認/評価するスタイルに審査方法が変わっていったのです。

 

ISOが組織に導入されて、20年以上経過している組織の30代前半の方にインタビューすると、「ISOの審査に対するイメージ」が昔と違っていることに気づきます。

つまり、「ISO審査は、審査のための準備を事前にすることになって面倒だ」という意識がまったくありません。

それは、審査員が、日常の業務プロセスをインタビューや作業の確認をする中で、適合性を評価しているから、審査されている側からすれば「自分の仕事を説明するだけ」なので、審査だからといって、特別、面倒な点はほとんどないからでしょう。

 

けれども、その反面、第三者審査はもちろん、内部監査においても、「文書化された手順と業務実態の整合性」や「上位文書と下位文書の整合性」という検証・評価は、あまりされていないように思います。

具体的には、最上位文書のマニュアルや記録はインタビューとともに確認していても、二次文書の規定類は、ほとんど参照することなく審査を終えているシーンをよく見かけます。

あくまでも、マネジメントシステムの適合性、有効性の評価は、「面談」、「プロセスの観察」、「文書類のレビュー」といった総合的に情報を入手しなければ適切でない、ということをあらためて肝に銘じたいと思います。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ720号より)

 

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