少し前のことですが、環境関連のシンポジウムで「生物多様性」に関する専門家によるお話を聞く機会がありました。

この時の「専門家」は、昆虫学が専門の農学博士で、国立環境研究所に勤務する五箇公一先生。

五箇先生は、研究者でありながら、公の場にもロックファッションで登場するギャップが注目され、近年は、フジテレビの「全力!脱力タイムズ」などバラエティ番組にもよく出演されています。

 

生物多様性の知識に明るい方なら常識的な話ですが、五箇先生によると、生物多様性には「種の多様性」、「遺伝子の多様性」、「生態系の多様性」があるそうです。

また、生物多様性の問題は、環境問題の中でも、地球温暖化問題と比較すると、一般的にはわかりづらい。

それは、生物多様性が、日常生活とすぐには直結しないため危機感を感じにくいからです。

例えば、昔に比べて、生物の種類は相当数減っていますが、私たちの日常には目立った影響はありません。

 

例えば、一時は、絶滅危惧種と言われてたトキや雷鳥が絶滅しても、「絶滅しちゃってもう見られないのは寂しいな」と感じる程度ですし、レッドリスト入りしている二ホンウナギが絶滅したラ、「あの美味しいウナギのかば焼きはもう食べられないんだ」と悲しくなりますが、その程度です。

 

つまり、生物多様性の問題は、進行性で潜伏期間の長い問題です。

そのため危機が見つけにくく、私たちは認知しにくい。

いつのまにか影響が出ていて、気づいた時には、手遅れというような問題が生物多様性の問題なのでしょう。

 

五箇先生曰く、生物多様性は、積み木で作った塔のようなものだそうです。

塔を構成する小さな積み木をひとつ除いても、積み木は維持されるので、はた目には「危機を認知しにくい」ですが、取り除く小さな積み木の数が増えると、一気に、ガラガラと積み木の塔は崩壊します。

でも、どこまで無くなってしまうと影響が出るのかわからないし、現状は、一度絶滅した生物は、それを復活させることは不可能なので、「あの生物がいなくなったのが大きな問題だった」と後々気づいても、手遅れなので現状を維持することが、重要なのだそうです。

 

生物多様性の話で、よく事例に出されるのが、「毒蛇のハブ対策で導入されたマングース」の話題です。

鹿児島県の奄美大島では、10万匹以上のハブが生息し、人間や家畜が受ける被害が多発していました。

そこで、1979年頃に、ハブ対策として30頭のマングースが島に放たれました。

その結果、マングースは、自然繁殖を繰り返し、現在では定生息数1万頭となり、島の生態系を壊そうとしています。

 

奄美大島は「東洋のガラパゴス」と呼ばれるほど、古くから生き続けている珍しい動物が多いのですが、人間以外では、ハブを頂点とした生態系が確立されており、希少動物で天然記念物のアミノクロウサギやトゲネズミ、ケナガネズミ、ルスリカは、「ハブからの攻撃だけをかわすために行動や形態を進化させてきた」のです。

そんなところに、マングースが入ってきたら、ひとたまりもなく、減少・絶滅へと追い込む皮肉な結果になってしまったのです。

マングースからしたら、わざわざ自分の身も危険にさらされるハブを捕獲せずとも、容易に捕獲できる他の動物がたくさんいるのですから、まさにパラダイスです。

 

生物学的には、人間の進化は止まっているそうです。

確かに、文明や文化に守られているのが人間で、自然界に放り出されたら、殆どの人が数日で死んでしまうのでしょう。

環境破壊は、人類の危機を人間自体が作り出しているという自覚が、もっと私たちには必要なのかもしれません。

(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ654号より)

 

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