組織の仕事の仕組み(マネジメントシステム)が国際規格に適合し、有効に機能しているかを第三者が審査し、世間に公表するISOマネジメントシステム認証制度がある。
このISOマネジメントシステムについて、クライアントや知り合いの経営者からよく質問されるテーマについて、備忘録代わりに、何回かに分けて少しまとめておきたい。
今回のお悩みテーマは、「内部監査員の客観性、公平性の確保」について。
品質マネジメントシステムの国際規格であるISO9001:2015では、内部監査について、
・組織自体が規定した要求事項に適合しているか否か
・ISO9001規格の要求事項に適合しているか否か
・マネジメントシステムが有効に実施され、維持されているか否か
について、あらかじめ定めた間隔で内部監査を実施しなさい、と規定しています。
言わずもがなですが、内部監査の依頼者は、「経営者」です。
したがって、経営者は、繰り返しになりますが、
「組織が自ら決めた決め事に適合しているか」
「規格要求事項に適合しているか」
「有効に実施され、維持されているか」
について現状の情報を知るために、内部監査員に、自社の状況を調べて、報告させるわけです。
一般的に、経営者は、組織を健全に良くしていきたいと考えているはずです。
したがって、普段、直接的に自らの目が届かないプロセスについての現況を知りたいのは、当たり前で、内部監査員からネガティブな状況を報告されれば、修正や是正処置を指示するのは当然だし、逆に有効に機能しているプロセスがあれば、その要因を知って、他のプロセスにも展開したいでしょうし、好影響に部門や個人の働きが大きいことが分かれば、業績評価としても考慮するでしょう。
つまり、経営者に、組織の現状を正しく報告するために、内部監査員には、客観性や公平性が求められるわけです。
自分にキビシイ、他人にキビシイ、自分には甘い、他人には甘い、といった個人特性もあるので「絶対」とは言い切れませんが、「自分のことには甘くなる」でしょうし、「自分のしていることの悪い点やいい点に、自分では気づかない」のが一般的でしょう。
そのようなわけで、内部監査員は、「自部門を監査できない」、「自分が直接責任を有するプロセスは監査できない」という縛りを各組織は設けているのが通常です。
さて、冒頭のテーマになりますが、クライアントや知り合いの経営者から質問されることに、
・当社は20人程度の組織だが、部署はあってないようなもの
・要は、仕事を「全員野球」でやっているから責任が絡まない仕事はない
・管理スタッフ数人と現場作業員という組織構造で、内部監査をする能力は現場作業員にはない
・管理スタッフ数人は、主担当は決まっているが、基本、全員がオールラウンドプレーヤー
という組織である。
したがって、
・ISOの要求事項で、客観性・公平性を担保しろ、と言われても難しい
・ISOのために仕事をしているわけではない
・ISOのために要員を増員するとしたら利益が出なくなりそれは本末転倒
だと考えるが、どうすればよいのか?
という「お悩み」相談を受けます。
このような場合、一般論として、
・業務プロセスを分解して、関りが薄いプロセスを監査するよう監査員の配置を工夫したらどうか
・(グループ会社があれば)他のグループ会社の人を内部監査員として選定するのかどうか
・コンサルタントと契約して、内部監査員に選定して実施してもらったらどうか
・御社の事情に比較的詳しい取引先に協力要請し、内部監査員になってもらったらどうか
といったことを提案してみます。
たいていは、「コンサルタントや関連会社の人を内部監査員にしてもよいのですか、それならできそうです」といわれ、「お悩み相談終了」となるケースが多いです。
しかし、中には、「ご提案いただいた方法は、全て、当社では難しいです」とおっしゃられるケースもあります。
中には、「経営者であるオレが各プロセスの現状を一番、把握している。下手に内部監査員を選定して内部監査を実施したところで、自分が把握している以上の情報は出てこない、時間の無駄だ」と言い切る経営者もいます。
このように言われた場合は、
・ISO認証組織としての信頼性確保の為には、何らかの方法で内部監査員の客観性・公平性を担保する必要がある
・「自分のことは自分がよく知っている」といっても、顧客や市場からはそれでは信頼されない
・そもそもなんのためにISOを取得するの?
といったことを逆に質問します。
「客観性・公平性を担保する内部監査のため、そして現状を正しく把握するための内部監査にはある程度の仕組みの工夫と資源の投入が必要である」
ということが、理解できないし、意味もない、と考える経営者がいるとしたら、ISO認証は難しい(やらない方がよい)と思った方がよいでしょう。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ661号より)
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