もちろん「資金洗浄」を指す「マネーロンダリング」をもじったものであるが、「事故米」がいくつもの流通ルートを経ていくうちに「正規の食用」となってしまうこのカラクリ構造のそもそもの原因は「新食糧法」なのだという。
新食糧法は2004年に「国内のコメ作り農家の競争力をつける」という名目で「コメの販売・流通を自由化する」よう大幅な改正を行った。
もちろん、食糧法改正の背景には、輸入米の関税引き下げを求める外圧があったことは言うまでもない。
その結果、「うまいコメを安く売れ」とコメ作り農家や卸売業者に競争を促した。
つまり、コメの価格を政府かコントロールしていた以前と比べ、競争が激化して利幅が薄くなった。(※記事によると利幅が売上の2%しかなくなったという)
すると「悪事に手を染めてでも儲けようする輩(ヤカラ)が出てくるのは必然」というのだ。
「怪しい輩の増殖」に拍車を掛けたのは、この法改正による規制緩和もあるという。
つまり、コメ販売業者がそれまでの「登録制」から「届け出制」になり、「年間20トン未満の業者であれば届け出も必要なし」となった。
すると「コメ販売と無縁だった仲介業者やペーパーカンパニーのブローカー」が続々と参入できるようになり、事故米転売ルートに多数の会社が関与できるようになった。
テレビ報道を見ていると「なんでこんなにも複雑な転売ルートになっているんだろう」と「利益は各社に出るんだろうか?」と常々感じてしまっていたが、「事故米を食用とする錬金術の手段」だったわけなのだ。
コメの価格を政府にコントロールされ、競争力がなかった業界に「価格の自由化」や「異業種の参入」を促す法改正により「いい意味での競争」が生じるのは、消費者にとってありがたいし、コメの生産者や卸売業者が健全に組織として成長する上でいいことだ。
しかし、政府(農水省)は「法改正によるリスク」を想定・考慮し、その対策をしたのだろうか?
「仕入れ価格が果てしなく安価なコメ(例:事故米)の流通は危ない」→「事故米の流通に関しては徹底したトレーサビリティなどの制度が必要」→「立ち入り調査の方法も従来の方法でセキュリティホールとなっている部分を強化せねば」などの対策は十分だったのだろうか?
もし、リスクを想定・考慮していなかったとしたら、なんのための規制緩和なのか。
また対策をしていたならば、その対策は「効果的ではなかった」のだろう。
現役の農水大臣(太田誠一農水相)も農水事務次官(白須敏朗事務次官)も「我々はだまされた、責任があるとは思えない」という趣旨の発言をしているが、とても「法改正に伴うリスクが考慮された対策をしてきた」とは思えない。
そうでなければ農政事務次官が何十回も立ち入り調査で訪問しているのに、問題が露見しないはずがない。
「規制緩和により想定されるリスク」(例:狡い(こすい)業者の参入、コメ価格の下落により狡い(こすい)業者の登場、不正な加工、転売など)を考慮し「事故米購入業者への立ち入り調査方法」や「転売先が県境を超えた場合の調査方法」「転売ルートのトレーサビリティ」などリスクに対する備えが十分だったのだろうか。
「仕組みを変える時」は「いいことばかり」ではない。
リスクやデメリットに対する備えが必要なのか、十分なのか、常に検証していく思考やシステムが必要不可欠なのである。
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