作家小林多喜二(1903-33年)の代表作「蟹工船」が全国で再脚光を浴びているという。
発行元の新潮社のデータでは、毎年約5000部程度の増刷が、今年はすでに46万部を超えているそうだ。

昨年辺りから、大型の本屋さんに行くと「小林多喜二コーナー」のような一角が形成されて漫画版や関連本が目立つようにおかれてはいたが、今年は書店によっては平積みしているから、相当売れているのだろう。

私自身は、中学生の時に文庫本を買って読んだ。
当時は、
・本を乱読していた
・小中学校の恩師の多くが全共闘世代であり、その影響をなんとなく受けていた
・プロレタリア文学の傑作と授業で習った
ことなどが背景にあり、自ら本屋さんに買いに行った記憶がある。

今年になって売れている背景には、
・没後75周年で新聞や雑誌が特集を組んでいる
・格差社会をはじめとした社会構造の歪みを読者が敏感に察知している
・労働問題を考える視点となっている
・自己投影の機会になっている
などがあるのだろう。

私たち労働者が、将来に対して不安感を感じているのには、
・給料が上がらない
・雇用が安定しない
・年金や医療・介護など公的扶助が期待できない
といった悩みである。

もちろんその背景には、キーワードで挙げれば、「少子高齢化」、「価値観の多様化」「大量消費社会の終焉」「年功序列など日本型経営の終焉」「優秀な人材の海外流出」「企業会計ルールの国際化」「時価総額(株価本位)経営」「派遣労働者業務の増大」「成果主義」などが複雑に絡まりあって、頑張っても報われないという閉塞感に陥っている。

ただ、良いか悪いかは別にして、いろいろなことがボーダレスになっていく中では当然の結果かもしれない。
「労働者への富の分配を増やしたい」と思っても会社の時価総額や弱肉強食の時代においては、それは出来ない。また「優秀な人材の確保」や「人件費の抑制」のためには「成果主義」にせざるを得ない。
みんなが「ちょっとだけでも人より良い生活」を求め、企業が生き残るために「みんなで分け合っていた富」の労働者分が減れば、一部の富める人とその他大勢が困窮する格差が増大していくのは構造上仕方がない。

小林多喜二が「蟹工船」を描いた時は「労働者が立ち上がり」そして「労働者の立場に立った法規制を含めた労働環境を整備」すればなんとか成ったが、現状を大所高所で俯瞰すると、社会システムは格差構造に向かわざるを得なくなっている。
つまり「こういう世の中にすれば明るい未来が待っている」という絵が政治家を含めて描けていないと思う。

現状の中で閉塞感を低減するためには、日本人の大多数の人の価値観、生活観を、20数年前のアニメの名作「名犬ジョリー」のED曲の歌詞♪(以下引用)のように「みんなで半分こ精神」にするしかないのかもしれない。
しかし、「セレブ」がメディアなどで持てはやされ、個人主義が強くなっている現代社会でそれが困難であることはいうまでもない。

(名犬ジョリーのエンディング曲の歌詞の引用ここから)
ビスケット一枚 あったらあったら ジョリィとボクとで 半分こ
ちょっぴり悲しく なったらなったら 涙もふたりで 半分こ
見知らぬ街で 迷子になって ドキドキするのも 半分こ
冷たい粉雪 降ったら降ったら 毛布も 半分こ
ふたりで続ける 旅の道は ホラ 何でも仲良く 半分ずつ
チーズがひときれ あったらあったら ジョリィとボクとで 半分こ
疲れてさびしく なったらなったら 荷物もふたりで 半分こ
何か良いこと 明日は起こる ワクワクするのも 半分こ
優しい春風 吹いたら吹いたら 希望も 半分こ
(ここまで)

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